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Posted by ブクログ
「国民の存在は日々の人民投票である」。
政治学を学んだ者であれば、一度は耳にした言葉ではないだろうか。この言葉は1882年、フランスのソルボンヌ大学で、エルネスト・ルナンが行った講演で発せられたものである。
ルナンは、なぜ「国民」について論じる、このような講演を行ったのか。直接のきっかけは普仏戦争による祖国フランスの敗北、(ドーデ「最後の授業」でも有名な)アルザス・ロレーヌの割譲といった事件であった。
「国民」とは何なのか。ルナンは、人種、言語、宗教、国境などの要因、属性を検討した上で、その結論として、「国民とは魂であり、精神的原理である」とする。そしてそれを端的に表現したのが、冒頭の言葉である。
ナショナリズム論の古典が簡易に読めるよう文庫化されたのはありがたい。ルナンのナショナリズムの問題点や、現代の先端的な学的状況について、詳細な解説が付いているのも、大変勉強になる。
本文だけならば38ページ、解説まで含めても80数ページ、近年稀な薄さの文庫なのが、ちょっと面白い。