【感想・ネタバレ】生者のポエトリーのレビュー

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Posted by ブクログ

読書備忘録778号。
★★★★★。

素晴らしい物語でした。
これまで生きてきて、最も遠いところにあった詩というモノの持つ力を感じることが出来ました。

詩の持つ力で前を向いて生きていこうと藻掻く6人の物語から構成され、物語から物語へタスキのように魂の力が伝わっていきます。

顔面緘黙症の青年はコミュニケーションで苦しんできた思いをライブハウスでぶつける。
女子大学生は人を見下すことしか出来ない彼氏との決別をコミュニティFMでぶつける。
犯罪を犯した青年は暴力と犯罪でしか自己表現できなかった地区で育った思いを街頭ライブでぶつける。
妻に先立たれた高齢男性は妻に対する感謝を朗読会でぶつける。
外国にルーツを持つ少女は、日本も故郷もどちらも大切だということを母親にぶつける。

自治体の企画「街角の詩」。非正規公務員の青年は事務的に企画の担当をしているうちに自分の中に変化を感じる。この企画は絶対に成功させる!しかし企画は中止になった。青年は企画を引き取り、詩を世界にネット発信することにした。
ライブハウスで収録、コミュニティFMで収録、朗読会で収録、そして収録会を開催して収録。そして発信。

地球の裏側。内戦が続く街で、ネット越しに外国語で語られる詩を聴いた少女。内容は分からない。でもわかる。絶対に死んでたまるか!

胸をうたれました・・・。

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2023年11月16日

Posted by ブクログ

詩を詠むという事を題材にした連作短編6話。短編だけど、どれもとてもじんわりと心に沁みる。それぞれの話の主人公たちが、日頃から胸に留めていた想いを詩に託して、何らかのキッカケで外に発信する瞬間が清々しくて良かった。老若男女、不器用だったり、愚かだったり、頑張り屋だったり、みんな普通の人たちで、その詩も上手かどうかは分からないけど、その姿にエールを送りたくなった。

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2023年02月08日

Posted by ブクログ

詩を作る、朗読する。普通に生きていると恥ずかしくてそんな事出来ないと思ってしまいます。でも誰でも言葉を連ねる事で作れるのが詩です。巧拙もテクニックも気にせず心の赴くまま言葉を連ねる。それが自分表現になるし、人の心を打ったりします。
そしてなんらかの形で人前で朗読をする、いわゆるポエトリーリーディングです。

本作はそんな世界に飛び込んで自分の世界を広げて行った人々の連作短編集です
心の中に色々な事を抱え込んでそれを吐き出せず苦しい人々が、詩という手段を得てほとばしらせる叫びがとても胸を打ちます。

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2023年01月05日

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ネタバレ

「水よ踊れ」の岩井圭也だから期待しない手はない、そしてやっぱり傑作の連作短編小説。

詩を書き、詩を詠むことで人生を生き抜く人たちの物語。短編6つはそれぞれ薄くつながっていて、その構成は小説で良くあるパターンなのだが、独特なのは詩をつないでいくパタンだということ。小説のつながりには必ず詩を読むOR聞くが絡んでくる。

どの掌編も、この世の中を生きづらかったり重いものを背負っていたりする人が主人公。中には重すぎて読んでいるだけでツラい境遇の人もいる。そんな彼らも人生を歩んでいかねばならないわけで、そんな時大きな力になるのが「詩」なのである。

俺は詩については、まったくもって不熱心な方で、疎いこと限りなし…なんだが、この本を読んで、詩を声に出して読んでみるのもいいかもなぁ、って思えた。
これから先、何かで生きていくのがどうにもツラくなったときは、詩を叫んでみようと思った。

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2022年11月24日

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ネタバレ

小学生から老人までさまざまな境遇、環境で生きる人たちが自分の思いを自分の言葉で自分の声で伝える詩の朗読を通して繋がっていく6編の短編連作。
最初にタイトルの「ポエトリー」って何だろうと思ってググってみたがいまいちピンとこない説明。
でも最後の『街角の詩』で「ポエトリー」の意味もさらに【生者のポエトリー】というタイトルもストンとおさまった。すばらしかった。

どれもしみじみといいお話ばかりだったが、特に気に入ったのは『幻の月』
妻を亡くした無口な老人が路上ライブでパフォーマンスをする青年が発する言葉の力に圧倒され、いつかこの世を去る前に自分の思いを一人娘に伝えたいと自作の詩を朗読する決意をし朗読会に娘を招待するというお話。とても感動的でした。

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2022年10月17日

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 最初はとまどった。この作者の作品は、ちょっと変わった設定が多いことは知っている。詩だって、今度は。
 しかし、まさかこんなに熱くなっていく人間の姿を見せてくれるとは。一人ひとりの登場人物は、とても不器用な人たちばかりなのに。
 言葉は、心なのだ。言葉で表し行動することで、前へ進むことができるのだ。
 

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2022年09月26日

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詩という言葉の力をこの本で知る。詩のよさはよく分からないし、この本の詩を読んでも感動もしなかったけど、この本の中の人たちが感動や考えている事を知って自分も感動を体験できた。言葉の力はナイフにもなるし、包み込む毛布になる。それを気づかせてくれた本。

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2022年08月16日

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いい小説を読んだと思いました。
詩を創り朗読する人たちの連作短編集。
各編ともにその主人公が創った詩が載っています。

「テレパスくそくらえ」
中学生の時場面間黙症で壮絶ないじめに遭っていた悠平25歳。日雇いのバイトで知り合った久太のライブを勇気を出して観に行くと、久太に場つなぎに詩の朗読を頼まれます。

「夜更けのラテ蘭」
大学生の千紗子は遊び人の恋人に書いていた詩を「ポエム」とバカにされます。そして大学祭で千沙子は思い切って自作の詩を朗読します。

「最初から行き止まりだった」
ヒップホップをやっている拓斗25歳は前科がありその時に迷惑をかけた友人がいます。ラジオで詩を朗読する女性(千沙子)を羨ましく思い、路上ライブをします。

「幻の月」
古希を迎えた公伸は妻に4年前先立たれました。妻の杏子が活動していた朗読のサークルの発表会で、公伸は妻との思い出の詩を朗読します。

「あしたになったら」
帰国子女で専業主婦の聡美が教える外国人の学習支援教室にやってきた、ブラジルからきた小学五年生のジュリアは日本の詩がとても好きでした。ある日突然教室に来なくなったジュリアが最後に聡美に母親とケンかをして教室に来られなくなったと詫びに来ます。
母親はジュリアがポルトガル語を忘れるといけないからやめさせたのだといいます。

この話が一番胸に響きました。

私の友人も同じくブラジルで日本語教室とアートスクールの先生をやっています。その様子を毎日のように彼女がFacebookに載せているのを私も見ています。友人の熱い思いが再現されているかのように読みました。

ジュリアが日本語の詩に熱心なのはとてもよくわかり胸を撃たれます。聡美は彼女なりの自由が見つかるといい。その手助けが果たして私にできるだろうかと思っていた矢先の別れでした。
ジュリアの詩を読んで「やっぱりこの子は、言葉で他人に伝えるべきことが何かよく知っている」と聡美が想ったところに深く共感しました。

ジュリアの書いた詩
「あしたになったら」
あしたになったら
となりのまちまで いってみよう
しらないみちを あるいてみよう
あしたになったら
あたらしいともだちを つくろう
ゆうきをだして はなしかけよう
あしたになったら 
おかあさんと ごはんをたべよう
おいしいおかずを かっていこう
あしたになったら
うまれたまちに でんわをしよう
どこにいても わすれないように

「街角の詩」
押本勇也は公務員で詩を書き起こす仕事をしています。
詩で街おこしをする<街角の詩>というプロジェクトのためですが、上司の逮捕によって中止になってしまいます。
勇也は思います。
「地球上のあらゆる街には、詩が溢れている。けれどそのことに気が付いている人はあまりに少ない」


どれだけたくさんの銃口を向けても
思い出は殺せない
触れれば火傷するような炎でも、
歌声は焼き尽くせない
重機で振るうハンマーでも
言葉は潰せない


われわれが生きていくのに
詩を叫ぶ以外の理由があるかい?

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2022年06月01日

Posted by ブクログ

“詩”を主題とした6篇から成る連作短篇集。それぞれの作品には連作と呼んでいいか悩むほどの繋がりしかないが、最終話ですべてのエピソードが1つになる。そして遥かに大きなものへと変わる。
短篇だからさほど複雑なものではない。岩井さんの作品にしては物足りなさを感じるかもしれない。収められた作品の主人公達はそれぞれの事情で声を上げることができず、思いを詩に託す。それは彼らの魂の慟哭なのだ。技巧に走らないことで、その思いがより真摯に伝わった気がする。素晴らしい作品だ。

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2022年04月15日

Posted by ブクログ

表現すること、言葉を語ることは何も特別なことではなく、生きていくことそのもの何だと感じました。
引き込まれて一気に読んでしまいました。
とても良い本でした。

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2023年07月15日

Posted by ブクログ

6つの短編
年齢もさまざまな人達
誰もが自分の置かれた環境に悩んでいる。
悩みもそれぞれ
自分な心を見つめて吐き出す。
まさに吐き出すと言う表現が相応しい。

詩は難しいと思っていた…
思いすぎていたかもしれないと思った。


われわれが生きていくのに
詩を叫ぶ以外の理由があるかい?

「詩」に対する熱い思いが込められた
そんな一冊でした♪

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2023年06月02日

Posted by ブクログ

『詩』をテーマにした6編からなる連作短編集。自分の意思を伝えるのが苦手な人達が、心からあふれる思いを詩という方法で表現する。それは生きた言葉だ。
無性に詩集が読みたくなり、詩を書いてみたくなった。

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2023年01月22日

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言葉の大切さを改めて実感する物語。ある街を舞台に「詩」を紡ぐ人たちを描いた短編集。ラストは1つに収束していくため連作短編とも言える。特に後半以降の「幻の月」「あしたになったら」あたりは「詩」を読むシーンでこらえられない思いがあふれてきた。「詩」というテーマが中々に秀逸で文章よりも短いため伝えたい感情をダイレクトにのせることが出来る。登場人物たちの感情が見事なまでに形成されている、ありがちだけれども良い作品だったと思う。作者の岩井さんは初読みだったが、様々なジャンルを書き分けられるタイプなので別作品も期待。

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2022年12月14日

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「きっとよくあることだと思うんすよね。自分の読んだ詩が誰かの耳に届いて、その人を勇気づけられるってことか。読んでいる本人が気づかないうちに、言葉が駆け巡って、この世界を少しだけ良くしている。そんなことがあると思わないすか」
「あるよ。あるに決まっている」(p125)
まさしくこの会話通りのささやかな奇跡が、見知らぬ人々の間で連鎖していく短編集。自分の内面を詩にしてさらけ出すことで、自身が新しい一歩を踏み出せるだけでなく、偽りのないストレートな言葉が他者の心を揺り動かす。

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2022年05月17日

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カテゴリを「詩」としたが、間違ってはいない...と思う。
詩集は読んだことないし興味もない。だけど、この本を読むと詩も悪くないなぁと思える。一遍一遍は短編だけど、次の一遍に登場する人物と何かしらですれ違い、それを詩が回遊するがごとくつなげていく。本文に出てくる詩の意味は分からないし、それを深読みするスキルもない(つまりは興味はない)んだが、物語として自然で嫌味もなく素直にいいなと思えた。
興味はないと言いながら、自分も若かりし時、ノートに詩のような歌のような心の表現文を書いたことがある。詩はいいものなのかもしれない。そして朗読会なるものに一度は参加してみたいなという気持ちにさせてくれた。

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2023年02月27日

Posted by ブクログ

「テレパスくそくらえ」「夜更けのラテ欄」「最初から行き止まりだった」
「幻の月」「あしたになったら」「街角の詩」
詩をモチーフにした6話収録の連作短編集。

自分自身、言葉の力で幾度も救われて来たけれど、詩というものに対してどこかナルシシズム的なものを感じ苦手意識を持っている。
隠していた恥部を曝け出し、公衆の面前に晒される様な感覚だ。

物語は同じ街で暮らす接点のない老若男女が自身の心の丈を言葉にし紡いでいく。

彼らが哀しみや怒りを真っ直ぐに言葉にし閉じていた心が解放されていく姿に安堵した。

言葉の力を信じたくなる一冊。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

ポエトリー、詩をめぐる連作短編集。

少し乾いた尖った話が多かったものの、詩とはあらゆる感情が表現されているものだから。

そういえば、小学校のときは授業でよく詩を書かされたなぁ。詩の表彰とかもあって、日常的に触れていた気がする。

詩と小説、対極にあるような気もするが、うまく融合されている。

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2022年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

詩をテーマに据えているお話は珍しいのじゃないかと思った。
途中まで普通だなと読み流してたけど、「あしたになったら」が良かった。

学習支援員の主婦が、ブラジルから来た少女に彼女なりのLiberty(自由)が見つかるといいと願い、力になれたらと思うところ。

自分の言葉を紡げるって、自由になることだと思うから。

(あ、でも支援教室の先生としては立ち入りすぎではと思う。少女のお母さんの言うことももっともで、気持ちもとてもよくわかる。)


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2022年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

社会派エンタメ作家。なるほど、周りにはこんな人たちもいるかもしれない。暗い部分に目を向けさせられる。
逆境の中で詩があかりとなって、それが生命力となる人たちの6人の短編。

どれだけたくさんの銃口を向けても
思い出は殺せない
触れれば火傷するような炎でも
歌声は焼き尽くせない
重機で振るうハンマーで
言葉は潰せない

本文より

国外にも届いて欲しいですね

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2022年07月06日

Posted by ブクログ

最終話でひとつにつながる短編集。
詩をテーマに心の叫びや葛藤を描いているが、まぁまぁ突飛な設定の人物が多くってしっくりこない。
岩井氏の作品としては少し物足りなさを感じるし、
エンディングで突然外国の戦地にまで物語がとんだのは無理矢理感が強かった。
結局、1話目の「テレパスくそくらえ」が一番良かったかな。

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2022年05月06日

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