【感想・ネタバレ】憲法とは何かのレビュー

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Posted by ブクログ

高名な憲法学者が憲法の役割や立憲主義における立ち位置などを初学者にも分かりやすく解説した本である。初版は2006年とだいぶ古いがその当時より、憲法改正の機運が徐々に高まっていたのを記憶している。

本書の主な主張は憲法の硬性性を訴え、無闇な憲法改正の危険性を指摘しているという所だろうか?本書では法学者らしく精緻で論理的な議論が展開されていて、読者にも著者の主張の正当性を確認することができるだろう。

しかし物事は表裏一体である。浅学ながら偉そうなことを言うと私は法学の特徴はその対象の解釈がある程度自由にできるということにあると思う。例えば集団的自衛権を日本国憲法から容認することからも私の主張に援用することが出来ると思う。

そのある程度、自由な世界を規律づけるのは一体何であろうかと言うと、司法であったり大学の権威であると思う。本書においても自らの主張を肉づけるために高名な学者の説を引用している。確かに説得力を感じるし私も支持するものであるが前述の通り理論的な反論も可能であると感じた。

ここで僭越ながら私の憲法改正に対して持論を述べたいと思う。専門の方からしたら噴飯物だろうが素人ならではの考えもあるかと思う。

憲法改正は特に保守派が主張しリベラルは護憲的立場から反対を表明している。しかし、私はリベラル派も積極的に憲法改正の議論に立つ方がいいのではないかと思う。

その根拠が、日本国憲法のそもそもの正当性である。厳密なことはしんどいので間違っているのが前提だが、日本国憲法の前の憲法である大日本国憲法は天皇主権が謳われており、それが基本的原理であった。その憲法から国民主権を基本的原理とする日本国憲法への改正というのは本来ならば出来ないらしい。

そのため日本国憲法の正当性を付与する通説として八月革命説が導かれた。八月革命説の詳細については芦部信喜の憲法を参照して頂きたいが、要するにポツダム宣言の受諾によって一種の法的な革命が起こり政治体制が根本的に変化したとみなす説である。

この通説は法学者の間では受け入れられてるのだろうが一般的な革命という用語からイメージするものと、実際の事象とは違うのではと素人は思ってしまうのではないだろうか。革命とは非支配階級が支配階級の体制を転覆するイメージがあり、そのような定義であろう。実際には、その当時の国民は竹槍をもって本土決戦に備えていて反体制派が何かやり遂げたという歴史的事実は無いし、そもそもポツダム宣言を受諾したのは昭和天皇の聖断からである。

以上から八月革命説を支持しない私にとっては日本国憲法というのはそもそも法規範として弱いものであると思うし、改正派にも攻撃を与える余地があると思うのである。

戦後、日本国憲法は押付け憲法であるとして、保守派が改正の取り組みをしたり大日本国憲法への復権運動も展開された。それは復古的でもあるが同盟国のアメリカにとっても都合がいいものであろう。一方、憲法学者を始めとする護憲派は守勢に回らざるを得ない状況が続いていた。このままいくとこの弱い憲法が死文化してしまうか、危機を煽り改正派にとって都合のいい憲法が生まれる可能性もある。

そこで発想を転換して護憲派は積極的に憲法改正の議論に加わることによって、反戦、人権を重視する日本国憲法の理念を守ることができるかもしれない。

改憲議論を盛んにすることはむしろ護憲派にとってもメリットがあるだろう。

例えば我々一般市民に、立憲主義とは何か、人権とはなにか、日本国憲法にこめられた反戦のメッセージ?を再考することが出来るだろう。

憲法改正に向けての議論は盛んになり極端な議論も散見されるだろうが私はあまり悲観していない。それは私が大学時代に憲法学の講義を受けた経験による。彼ら彼女らは、厳しい訓練を受け、厳格な論理性を育んだプロであり、説得力のある提言を市民に提供してくれるだろう。

また日本国憲法の基本的理念は国民主権でありそれは改正不可能であるが憲法9条も成立経緯を踏まえると極めて改正困難であると私は思う。それはマッカーサーが憲法改正に要求したマッカーサー三原則に戦争放棄が示されておりこの基本原則を変えることは日本国憲法の主旨に反していると言えるからだ。

ここまでの議論は稚拙であり反論の余地はあろう。しかし私は日本国憲法をあえて過去の遺産とすることでその憲法の正当性を与えることになり国民主権、戦争放棄の理念がより強固になるのだろうと思う。

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2024年03月18日

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岩波新書愛好会】#感想歌 憲法を創ると守ると改訂の力関係根源は何 民主主義だけではなくて人類の幸せ確保模索方法

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2017年09月30日

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安保法案を与党推薦人ながら違憲証言した注目の方をなぜ自民党は見誤ったのかを知りたかった。タイトルどおり、憲法の本質を哲学的、政治学的に追究していく内容の濃いコンパクトな一冊!。ホッブス、ルソー、カント、モンテスキュー、ロールズ・・・。昔、教科書で学んだ名前が次々に登場、正に根源から考えさせられた。「憲法9条による軍備の制限も、通常の政治のプロセスが適正に働くための規定」(P12)「従来の政府解釈で設けられている制約-たとえば集団的自衛権の否定-を吹っ飛ばそうというのであれば、その後、どう軍の規模や行動を制約していくつもりなのかという肝心な点を明らかにすべき。その見通しもなく、どこの国とどんな軍事行動について連携するつもりなのか-米が台湾を実力で防衛するとき、日本は米と組んで中国と戦争するつもりはあるのか-さしたる定見もないままに、とにかく政治を信頼してくれでは、そんな危ない話にはおいそれと乗れませんとしかいいようがない。そこまで政治が信頼できるという前提に立つのであれば、憲法などもともと無用の長物。」(P20)あまりにも的確な予言ぶりに驚き、快笑!成立を急いだ杜撰な国会の裏面を見た。「憲法改正」そのものの哲学的意味について論じる。2度の大戦も、冷戦も憲法の掲げる国の基本秩序を巡る戦いだった!日本は立憲主義の理念を持つ国。まずは日本をどういう国にしたいのかを基本的に決定することの重要性が力説される。(P59)著者は議院内閣制が優れ、大統領制が例外的に真に巧く機能している国は、独特の政治文化が存在する米国だけだとする。従って改憲による日本の首相公選制を否定する。また憲法改正の特別多数決の護持も主張する。憲法改正、或いは解釈の変更が必要だとの主張は全く見えてこない!確かに解釈で変更の余地があるような記載もあるが、少なくとも9条等の基本理念に関わる部分ではない。最後に、世界唯一国家の誕生は果たして理想か!この点も「魂なき専制」が齎され、無政府状態への堕落が予測されるとの著者の論理は明快。

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2015年10月12日

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メモ
憲法が国家の、属する人々の在り方そのものである。故に戦争とは相手国の憲法の否定である。

立憲主義が「公」と「私」の区別によって、価値観・文化の違いを内包させつつ国家を成立させている。故に本来的に、人間としては受け入れ難い。

憲法典を変えたからといって憲法が変わるとはかぎらない。

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2011年01月25日

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とても分かりやすく憲法や政治制度について書かれている。
主に憲法改正論議の矛盾を突く内容。
日本の統治構造、という中公新書の本を読んだ後だったので議院内閣制がなぜ大統領制より優れているかと言った問題については非常に興味深かった。

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2010年12月21日

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憲法については、左右どちらかの立場から感情的に論じられることが多く、左の立場からは、憲法改正は絶対に認めない、まして9条改正などもっての他、右の立場からは、アメリカが短期間で書き殴った憲法など改正するのが当然、軍隊の存在を認めない9条など真っ先に改正すべき、という論議になりがちです。

この本は、左右どちらの立場にも偏らず、きわめて冷静に、論理的に憲法改正の無意味さ、大統領制よりも、議院内閣制がいかに優れている制度か、を論じています。

9条に関しては、「たしかに自衛のための実力の保持を認めていないかに見えるが、同様に、「一切の表現の自由」を保障する21条も表現活動に対する制約は全く認められていないかに見える。それでも、わいせつ表現や名誉毀損を禁止することが許されないとする非常識な議論は存在しない。 21条は特定の問題に対する答えを一義的に決める「準則(rule)ではなく、答えを一定の方向に導こうとする「原理(principle)」にすぎないからである。9条が「原理」ではなく「準則」であるとする解釈は、立憲主義とは相容れない解釈である。」との一文に目を開かれる思いがしました。

単なる感情で改憲を主張する人達(実を言うとこの本を読むまでは、私もその一員でした)に是非一読してもらいたい本です。

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2010年02月27日

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憲法とは、同質の価値観が維持されていた中世の宗教世界が崩れた近代において、多様な価値観・世界観を抱く人々の公平な共存を図るための枠組みであり、国家の構成原理である。

憲法は国家の構成原理であり、近代における多くの戦争は異なる憲法を攻撃目標とする敵対であるという点、国家の憲法と憲法典が違うという点は新しい視点だった。

長谷部先生の本は初めて読んだのだが、結構保守的な立場から書いてあるように感じた。
憲法典を変えても憲法が変わるわけではないし、変更の必要がある場合でも、解釈や一般法の制定で対処できるといった改憲についての議論は納得できる部分もあるが、九条については明らかに無理のある解釈をしていると感じるし、解釈の幅が広すぎると憲法典が有名無実化してしまうおそれがあると感じる。
また、憲法典についても同じことが言えるかは難しいところだが、国際化・多様化が進む現代においては、同質性を前提とした曖昧なローコンテクストコミュニケーションは通用せず、明記が必要な部分は明記していくべきなのではないかと思う。
憲法典を変えることを自己目的としてはいけないという点については大賛成なので、憲法つまり国のあり方について、国民の間で議論がされるような土壌を作られていくといいなと思った。

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2023年04月29日

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ネタバレ

憲法改正論議を理解する参考文献として読んだ。
憲法学者の重鎮ということで、この著者の本をとりあえず読まねばという義務感で選書。

全然期待してなかったけど、表題どおり、憲法とは何か を知るために良い教科書的な本で、読んで良かった。

「憲法とは」基本的なことを知ってから改正論議をしないとダメだとわかった。ダイジェストでこの内容を国民みんなに知らせないで改正の是非を投票させるのは、ものすごく問題があると思う。

憲法典とは原理を示すもので、そこに書いてあることは法令で定めないと実行されない。改正して書き込んだことが必ず実行されるものではない。
例:アメリカ南北戦争後、黒人の人権を認めることを憲法に書き込んだ。しかし、実際は公民権運動後に法令ができるまでしっかり実行されなかった。

また、憲法典に書いてあることは、現実に即しておかしいのであれば、実行されていないのが普通である。
例:イギリス議会はオーストラリアの憲法を無効にできる。→実際はどう考えてもできない

日本国憲法も多大なエネルギーを使って変えることのメリットは多くないだろう。憲法に書き込んでも法令を作らないと実行できない。逆に、書き込まなくても法令を作ればできることは、憲法改正してまで書き込む必要がない。

この著者をこき下ろす内容を含む本を先日読んだのだが、憲法9条を改正しなくても軍備に支障はないという点では、その著者とこの本の意見は同じということのようだ。

「解釈改憲」という用語があって、私はこれを「ズルをする」というか、ホンネと建前が違っていて歪なこと、などと思っていたが、解釈で憲法が変わるのは当然のことなのだと理解した。

○本書の内容について
・まず、憲法が絶対王制の権力に制限を加えるために作られたことなど、歴史的な話。
・現代の政治の形(民主主義・共産主義・ファシズム)は憲法の違いであり、それが国のあり方の違いである。
・現代の政治のあり方の違いを簡単に解説。大統領制の弊害など。
・憲法と法令の違い 憲法はおおまかな原理にすぎず、実行は法令による。
・執筆当時2005年における憲法改正問題について。憲法改正に多大なエネルギーを消費しなくても、必要な法令を作れば良い。憲法は解釈で変わる。解釈は社会の変化で変わる。
・裁判所は判決によって解釈の変化を定着させていくものだが、日本の最高裁は政治に対して弱腰?

前半は多分にロマンチックというか文学的な著者の嗜好が盛り込まれていて読みにくかった。さすが岩波の赤、教養本なのである。
しかし、基本的なことを押さえるには必要な本だった。

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2021年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・近代立憲主義
立憲主義は国家の権力を制限しようとする古くからある考え方。近代立憲主義は多元的な近代を制御するために生まれた考え方で、公私を区別し、国家は私的な領域に踏み込まず、私的信条は公共に持ち込まれない体制。これは人間の自然的欲求に反する。人は自らの信じることが社会全体に行き渡って欲しいと思うものであり、また唯一の明確な正義に従っていたいと思うものだから。近代人は異なる価値観の選択に常に悩む宿命にある。近代立憲主義の前提として、異なる価値観の比較不可能性がある。価値観の比較不可能性を認める論者は、マキャヴェリ、バーリン、ロールズら。認めないのは、レオ・シュトラウス、カール・シュミット、マルクス。

・憲法改正を論じるに当たっては、その改正によって日本が国家の基盤としての思想的にどの陣営に属することになるのか、そしてそれが他国との関係にどういう影響を与えるかを熟慮すべきである。

・立憲主義的憲法は、多元主義を前提とするので、唯一の正しい生き方を国民に強制するものとはなり得ない。即ち、憲法の条文は、強制的なルールではなく誘導的なプリンシプルである。9条を文字通り読んで自衛隊の存在を全く認めないのは、憲法をルールと捉えるものであり誤りである。21条も文字通り読めば表現の制限を全く認めないように見えるが、わいせつ表現の制限は認められるではないか。

・共和制
世襲による君主制に対し,主権が複数者にある政治形態。国家元首や人民の代表者を間接・直接に選出し,主権が人民にある民主的共和制と,少数特権階級にのみ主権がある貴族的共和制・寡頭的共和制などがある。古代ギリシャでは、民主制はネガティブな言葉だったが、共和制はポジティブな言葉だった。

・プレコミットメント
憲法によって国家の権力を制限するのは権力者自身が望むことである。なぜなら権力の一部を自発的に他者に委ねた方が、自分のミスを防いだり、権力の信頼を高めたりするなど、権力の長期維持に資するからである。即ち、無制限の権力よりは制限された権力の方が強い権力である。という考え方。

・大統領制
行政の長である大統領と立法府である議会の議員の両方を選挙で選ぶ。

・議員内閣制
議会の議員のみを選挙で選び、行政の長は議会が選ぶ。

・二元的民主主義
利害調整の通常政治と、身近な利害を超えて国の基本的あり方を議論する憲法政治。憲法政治は必ずしも憲法典の改正のことではない。

・国境を決める明確な原理は存在しない。故に、現状の国境から後退した場合、踏みとどまるべきラインも決定できないので、国家は現状の国境の維持にこだわらざるを得ない。

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2017年05月20日

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長谷部恭男氏(1956年~)は、憲法学・公法学を専門とし、日本公法学会常務理事、国際憲法学会(IACL)副会長を務める、現東京大学名誉教授。
本書は憲法改正の議論が盛んになった2006年の出版であるが、立憲主義における憲法とは如何なるもので、如何に運用されるべきなのか、そして、それを踏まえて憲法改正についてどう考えるべきなのかを論じている。
本書の主な主張、印象に残った点は以下である。
◆立憲主義とは、この世には、生き方や世界の意味について根底的に異なる価値観を持つ人々がいることを認め、それにもかかわらず、社会生活の便宜とコストを公平に分かち合う枠組みを構築することで、個人の自由な生き方と、社会全体の利益に向けた理性的な決定のプロセスとを実現することを目指す立場である。そのために、公と私の分離、硬性の憲法典、権力の分立、違憲審査、軍事力の限定などの制度がある。
◆立憲主義の考え方に立つ憲法は、政治のプロセスが本来の領域を越えて個々人の良心に任されるべき領域に入り込んだり、政治のプロセスの働き自体を損ねかねない危険な選択をしないよう、予め選択の幅を制限するというのが主な役割である。昨今の憲法改正論議では、この理解が十分でないという懸念を抱く。
◆憲法とは国家の基本となる構成原理で、近代においては、(リベラルな)議会制民主主義、全体主義、共産主義の3つが憲法を決定するモデルとなったが、全体主義は第二次世界大戦において、共産主義は冷戦の終結において、それぞれ消滅した。
◆日本が憲法典を変更しようとするのであれば、①日本の基本秩序たる憲法は何なのかを見定める、②冷戦後の世界において、日本がどのような憲法原理に立つ国家になろうとしているのかを決定する、③国民の生命と財産の安全の確保という国家としての最低限の任務を果たすために、また、立憲主義という基本的な社会基盤を守るために、日本は外交・防衛の面で何をし、何をすべきではないかを改めて確認する、必要がある。そしてこれらは、憲法典の改正云々に関わらず、検討されるべきものである。
◆リベラル・デモクラシーには、大統領制、イギリス型議院内閣制、制約された議院内閣制(ドイツや日本)の3つがあるが、国の根本原理を変革する政治過程・「憲法政治」と、日常的な利害調整に関わる政治過程・「通常政治」の二つの政治過程を区別し、的確に運営するためには「制約された議院内閣制」が最適である。
◆成熟した国家にとっては、「憲法」とは「憲法典」のテクストのみを表すのではなく、テクストを素材に法律専門家集団が紡ぎだす慣行の集まりこそが「憲法」である。即ち、重要なことは、シンボリックにテクストを改廃することではなく、「憲法」を如何に変えるかである。
◆憲法改正の国民投票制度については、①国会による改正発議から国民投票まで最低2年以上の期間を置くこと、②国民投票までの期間に、賛成意見と反対意見とに平等かつ広く開かれた発言・討議の機会を与えること、③投票は、複数の論点に亘る改正案について一括して行うのではなく、個別の論点ごとに行うことにより、有権者が十分な情報と熟慮に基づいて投票が行われるようにするべきである。
憲法改正については様々なスタンスからの意見があるが、改憲の実現を公言する安倍首相の自民党総裁3選が決まった今、自分の立ち位置を確立するために、改めて読んでおく意味のある一冊と思う。
(2007年5月了)

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2016年11月06日

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新書なので、優しい憲法の入門書かな、久しぶりに憲法について勉強してみようかな、などと思って買って読み始めてみたら、意外に難しい!しかし、読み応えのある本だなあと思いました。
昨今の憲法改正議論のおかしさがわかった気がします。憲法上、新しい人権を位置付けても、具体的な法律がなければ意味がないし、逆に現行憲法で法律を定めるならあえて憲法改正は必要ないのではないか・・・なるほど。
なぜ憲法の改正が、法律の改正よりも難しいようにできているのか(いわゆる硬性憲法)についての議論も興味深かった。
来年あたり、もう一度、読み返してみたいです。

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2016年09月11日

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第1章 立憲主義の成立
第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
第3章 立憲主義と民主主義
第4章 新しい権力分立?
第5章 憲法典の変化と憲法の変化
第6章 憲法改正の手続き
終章 国境はなぜあるのか 

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2014年07月29日

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近代立憲主義・公私区分・硬性憲法・憲法改正・現代までの国家の形態の変遷・国境の意義などについて書かれていた。

上記のことについて学ぶには良書だが、新書で文字数が多くない。
内容に物足りなさを感じる人もいるはず。
また、近代立憲主義などの前提知識が無いと多少読みにくいと感じるかもしれません。

ただ、非常に分かりやすく面白い本です。

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2013年07月25日

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筆者は、立憲主義は人間の本性にそぐわないと考えている。誰もが共通の真理や正義を信じ、それにしたがって生きることができる、「正義の味方」が悪を斬る時代劇のような分かりやすい世界に比べ、自分の思うように考えたり行動したりできる「私的空間」と、異なる考え方や利害を異にする立場の者と生活を共にしなければならない「公共空間」を区別し、法によって利害を調整しつつ生きることを選ぶ立憲主義に基づく近代以降の世界は、たしかに中途半端で、すっきりしないかもしれない。

しかし、二度の大戦とそれに続く冷戦の時代を経て、世界の多くの国がリベラル・デモクラシーの世界を選択していることはまちがいのないところだ。憲法が明記されている日本のような国も、明記されていないイギリスのような国も、立憲主義に基づくリベラル・デモクラシーを維持し続けようとしている。特定団体間の利害調整に明け暮れる現代の議会制民主主義は、本来のデモクラシーから見れば頽落した体制であると考えるカール・シュミットのような人もいるが、ファシズムや共産主義のその後の運命を考えれば、現実問題として、今の世界に立憲主義に替わるものを提示することは難しかろう。

しかし、憲法は、ただ我々の生活や安全を保証する有り難いものではない。憲法さえ変えればすべてうまくいくというような風潮が今の日本にはあるようだが、立憲主義の世界で、守るべき「国」というのは、現実に我々が暮らす土地や自分たちの生命を意味していない。「国」とは、その憲法に基づく法秩序の体制である。その意味では、先の戦争は旧憲法下の「国体」を護持するために戦われ、人々の暮らしそのものが成り立たなくなった時点で、旧憲法に代わって新しい憲法を得たのである。

憲法改正問題で最も大きな問題と考えられるのが、九条をどうするか、という点である。日本国憲法の中心とは、言うまでもなく立憲主義と平和主義である。それを大事だと思うなら、憲法はいたずらにいじらない方がいい、というのが筆者の考えだ。法学者らしく、論理的に導き出された結論が、日本国憲法は「準則」ではなく、「原理」であるというものだ。長くなるが大事なところなので原文を引用する。

自衛のための実力の保持を全面的に禁止する主張は、特定の価値観・世界観で公共空間を占拠しようとするものであり、日本国憲法を支えているはずの立憲主義と両立しない。したがって、立憲主義と両立するように日本国憲法を理解しようとすれば、九条は、この問題について、特定の答えを一義的に与えようとする「準則(rule)」としてではなく、特定の方向に答えを方向づけようとする「原理(principle)」にとどまるものとして受け取る必要がある。こうした方向づけは、「軍」の存在から正当性を剥奪し、立憲主義が確立を目指す公共空間が、「軍」によって脅かされないようにするという憲法制定権者の意図を示している。

憲法が主権者の暴走に歯止めをかける役割を果たしているという点から考える時、もし、九条を字義通りにとらえ、自衛権も認めないとするなら、国家に帰属することによって自己の生命や財産を保全しようと考える多くの国民にとって、その解釈はデモクラシーの原則を踏みにじった決定を押しつけるものととらえられるだろう。その一方で、「軍」を明文化し、その存在を明確化しようとする提案は、公共空間の保全を目指す憲法の機能を揺るがしかねないものとなろう。

目下のところ、教育基本法「改正」が国会論議の中心であるが、それが成った暁には改憲論議が高まるに相違ない。思ったよりも過激ではなく見える政府自民党案だが、改正手続きの段階で国会議員の「三分の二の賛成」が必要というところを単純過半数に改訂しようという動きがある。国民投票のあり方も含め、現実に論議されるべき問題は多い。

改憲派にも護憲派にも、自分たちの考え方こそが正しいのだから、という「分かりやすい世界」観の上に立った物言いが目立つ。価値観を共有できない者たちが共に暮らす社会なのだからこそ、難しい問題を易しく解説してくれる、このような本が多くの目にふれることを望む。あまり手にすることのない新書版だが、このような重要な問題であるからこそ、誰にでも気軽に手にとることのできる新書という形態が望ましいのかもしれない。

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2013年03月08日

Posted by ブクログ

 もうすぐ選挙ですが、首相公選制と憲法改正ところが参考になりました。
制定されて何十年もたつ憲法を改正しても意味がない。あとは、解釈の問題だ。環境権やプライバシー権は、法律で十分守れる。改正のハードルが高いのは、政治家が改憲論議に労力を使って通常の仕事をしなくなるからだ。みたいな事が書いてあったと思います。
 そりゃそうだ。

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2012年12月08日

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立憲主義とは何か。それから導かれる憲法の役割とは。憲法の具体的内容でなく憲法そのものについて記した良書

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2012年08月21日

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国家権力を制限することで個々人の人権を護ろうという理念として語られるのが通例である立憲主義を、異なる(筆者の言葉を借りれば「比較不能な」)価値観を持つ人々が公平に共存すための枠組みと捉えられている点に目を惹かれる。

特に注目させられたのは、筆者が立憲主義、特にその公と私の弁別について「人の本性に反する」(p15)と言い切っている点である。人々が「人間らしい生活を送るため」(p9)の共存の枠組みが、人間の本性に反したものであるとは。価値観・世界観が異なる人々の共存とは何と困難なものであることか。

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2012年04月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
憲法は何のためにあるのか。
立憲主義とはどういう考えなのか。
憲法はわれわれに明るい未来を保障するどころか、ときに人々の生活や生命をも左右する「危険」な存在になりうる。
改憲論議が高まりつつある現在、憲法にまつわる様々な誤解や幻想を指摘しながら、その本質についての冷静な考察をうながす「憲法再入門」。

[ 目次 ]
第1章 立憲主義の成立
第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
第3章 立憲主義と民主主義
第4章 新しい権力分立?
第5章 憲法典の変化と憲法の変化
第6章 憲法改正の手続
終章 国境はなぜあるのか

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月24日

Posted by ブクログ

憲法は危険物です。取扱い要注意!
って岩波新書も思い切った帯付けますね。
内容も凄く読みやすい。

憲法9条の解釈論はともかくだけど。

最近の憲法改正論議って、何か怪しいとは感じつつ、まあ変わるのが世の流れか、新しい人権とか書き加えるくらいは、と思っていた自分のアホさを痛感。

最近発表された自民党案は、なぜ思ったほど復古調ではなかったのか?という疑問にも納得いく答えがあたえられました(わかって無かったのは私だけ?)。

成る程、憲法は取扱い要注意です。

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2014年11月04日

Posted by ブクログ

長谷部先生の本です。

とても読みやすく内容もしっかりしていると思います。
立憲主義の成立から冷戦の終結、民主主義の台頭と順を追って述べてあります。

章ごとに著者の書きたい内容や目的などが明確にまとめられており、読んでいて
流れるように頭に入ってくるような気がします。
ですが、読みやすくても書かれている内容は深く内容も濃いので繰り返し読むのが
一番よいと思われます。

憲法の本の中でも比較的よい本だと思います

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

憲法を護持しようと考えている人にも、改正すべきと思っている人も、日常生活で憲法と自身の関係性を見いだせていない人にも、参考になる指摘の多い本だと思います。憲法学者としてメディアへの登場も昔に比べれば増えてきた感のする著者ですが、その思考や発想の基礎を知る上でも良いと思います。

憲法そのものへの問いかけではなくて、立憲主義という思想を理解してそれを現代の日本国憲法(正確には憲法典)が掲げる主義・思想とのバランスに議論の焦点がさだめられているところが特徴と言えます。立憲主義が前提する「違い」を当然視して受容し、相違を前提とした社会形成が実現するまでの途方もなく長い旅路を想起させる内容にはなっていますが、その長く平坦ではない道を進みだせてもいない、むしろ諦めて背中を向けているともいえる今の憲法論議を学問的視点から理解するきっかけを与えてくれると思います。

さらにこの本が面白いと感じられる点は、各章の末尾に記載されている『文献解題』であると個人的に感じています。大学のゼミ生向けに書かれたことを意識させて、そこからさらに憲法論の古典や現代の世界的な憲法論議への扉を開いている意味でも、この本が出色であると思わせます。また、単なる紹介だけにとどまらず著者自身が推挙する本の重要性や感想、そしてこの『憲法とは何か』という書籍との貢献部分にまで触れられている点も憲法論への招待的位置づけを意識した構成と言えるかもしれません。

変えるのか、変えないのか。「変化」そのものへの視点ばかりが強調される日本の憲法改正論議に足りないものが何かを知らしめてくれます。著者の長谷部氏は、NHKで放送されている『爆笑問題のにっぽんの教養』で最近出演していたのを見ていました。そのときに太田氏とかわしていた長谷部氏の憲法論が勉強になったところもこの本を読む事になったポイントだと思い返しています。

いずれにせよ、これから先も政局において憲法論を展開されていくでしょう。その中で、一人一人が改正論議に声を発し、投票行動を通じて意志を表明する場に直面したとしても、大切な点は著者が本書冒頭で引用しているニーチェの言葉に帰結するのです。読み終わって、また最初にこの文章を読めば、その真たる意味に近づける気になるのです。

「怪物と戦う者は、そのため自身が怪物とならぬよう気をつけるべきである」
フリードリッヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』

『文献解題』から派生して、私は長谷部氏の『憲法と平和を問い直す』を買いました。あと、いまさらながらルソーを読んでいないことに気づき、『社会契約論』にも読み進みたいと思います。だんだん国家と国民の関係性について考える方向に進んでいるような気がしますが、仕事におわれて自分のありようと法的に社会的に定義づけることについて考えを巡らすのも良いでしょう。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

憲法改正論議の前に、そもそも憲法とは何かを考える必要がある。近代国家の権力を制約する、立憲主義という思想について理解しなくてはならない。憲法を改正する根拠に時代が変わったから、古いから、なんて理由は通用せず、ましてや社会のニーズに合っていないから改正しましょうなんて意見は全くもっておかしい。読みやすいからおすすめ。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

1月?
「憲法とは何か」という題名に似合うほど、全体は首尾一貫した内容にはなっていなかったが、各章ごととても面白かった。憲法は、各種試験のために勉強する機会が幾度かあったが、判例中心の学習であったので、本の内容は新鮮な印象がした。
 本書によると、立憲主義とは、多様な考え方を抱く人々の公平な共存を図るために、生活領域を公と私の2つに区分しようとするものである。私的領域では、各自がそれぞれ信奉する価値観・世界観に沿って生きる自由が保障され、一方で公的な領域では、社会のメンバーに共通する利益を発見し、それを実現する方途を冷静に話し合い、決定することが必要になるという。現代憲法にある、思想の自由、信条の自由、政教分離の規定などは私的領域と公的領域とを区分する境界線を定める規定であるという。本書で指摘されているように、この仕組みは、人々に無理を強いる仕組みである。では、なぜこのような仕組みが必要なのであるか。それは、人々の価値観・世界観が近代社会では多元化し、お互いが比較不能である。そのためもし、それら相互が、社会において各自の世界観の実現しようとすると、まさに血みどろの紛争を再現することになってしまうからである。そして、立憲主義に基づき憲法の役目は、政治プロセスが本来の領域を超えて個々人の良心に任されるべき領域に入り込んだり、政治プロセスの働き自体を損ないかねない危険な選択をしないようにあらかじめ選択の幅を制限する役目にあるという。そのような観点から、筆者は昨今、行われている憲法改正議論に対して批判的であるようである。
 全体を通し、憲法にかかわる話題を、法学、時には政治学の観点から考察であったが、立憲主義の考え方、憲法改正議論に関する問題など多く考えるきっかけになった。筆者が主張していたが、憲法改正以前に、その前提をしっかり確認すべきだと私も感じた。戦略と憲法とは密接な相互関係にある。だから、第一に日本の基本秩序たる憲法とは何なのかを見定める必要があり、それに加え第二に、冷戦後の世界において、日本がいかなる目標を持つ、どのような憲法原理に立つ国家になろうとしているのかを決定する必要性などを挙げている。

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2009年10月04日

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そもそも憲法って何のためにあるのか、そして憲法を「変えること」には、どのような意味があるのか。

彼は「価値観・世界観の多様化」という観点から、立憲主義を再定義しようとしているようだ。その点に人間らしさを感じるし、そして今までの憲法議論にはない論点を提示しているように思える。今マイブームの憲法学者の1冊。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

憲法とはなにか、という入門書。のはずが自分の読解力が乏しすぎて所どころわからないところが…
憲法改正という言葉はニュースを見ていれば時々(よく?)出てくるが、いったい憲法の何を改正するのか?誰が改正の是非を決めるのか?という知識は曖昧だったので、そういう意味ではこの本は根本的なことを知るうえで便利だ
憲法改正のプロセスやその手順で重要なことなど、いろいろ考えさせられるような内容だった。憲法はその時の政権にとって都合のいい物として改変されてはいけない。普遍的で、なるべくすべての国民にとって望ましいものでなければいけないから、改憲をする場合は手短に、というわけにはいかない。開かれた場所で改憲賛成派と反対派の討議を行い、それぞれの意見を吟味してから投票をする。事項もまとめてではなく個別で。改憲を果たすためには非常に長く地道な作業を求められるんだなぁ、と感じた。けれどその地道なプロセスが、果たして本当に改憲は必要なのか?と自問する機会を与えてくれる。そしてきっと、その自問をする時間が一番大事なんだと思う。

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2020年01月10日

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立憲主義の発想について解説するとともに、そうした観点から現在の憲法をめぐるさまざまな問題について、著者自身の立場から明快に議論を展開している本です。

立憲主義そのものについては、おなじく新書で刊行されている『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書)のほうが、理論的および歴史的な側面からていねいに論じられているように感じました。本書でも立憲主義そのものの説明は手際よくまとめられていますが、むしろ立憲主義という発想をじっさいに使いこなすためのさまざまな視座が示されているように思います。

また、現在の憲法改正をめぐる議論には、改憲派・護憲派双方に、憲法の改正そのものが日本社会に革命的な変化をもたらすかのような理解が見られますが、著者はそうした議論が過熱する状況から距離をとり、憲法が置かれている具体的状況のなかで憲法の果たしている役割を冷静に見ようとしています。

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2018年03月12日

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憲法はバラ色でもなければ理想でもない。それを巡って戦争は繰り返される。とはいえ社会を形作るのに必要な機構。「国体」という言葉が頭をよぎります。内容は簡単ではないですが読み応えありました。学生時代の授業、独特の雰囲気だったのを思い出すなー

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2012年02月03日

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なるほど、いわゆる「戦後民主主義」を信奉する人達はこういう発想をするのかな、という思いで読んだ。極めてリベラルな理想主義者である。悪く言えばリアリティに欠ける。社会の仕組みというには「人間」が作りだすものである以上、「人間」に関する考察、即ちより社会科学的側面からの考察が必要であるが、その視点が欠けていることが、リアリティを感じられない理由ではないかという気がした。

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2009年10月04日

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立憲主義の考え方を説明し、憲法改正論議を考える本。
立憲主義とは何かに始まり、権力分立のあり方から憲法改正の手続の話など、法律学(政治学?)的なものの見方を勉強中の私にとってとてもためになりました。
でも憲法を学んだことがないとちょっと難しいかも。

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2009年10月04日

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