【感想・ネタバレ】ごりょうの森のレビュー

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Posted by ブクログ

歴史上の人物の怨霊譚にからむ現代の性愛7短編

「首塚」(初出2021「特選小説」)
新聞社の先輩が代議士の秘書になり、議員の不正の責めを負って自殺したが、残された妻を抱いて自殺の真相を聞き出すと、妻は議員の愛人で先輩の行動を議員に伝えていて、先輩に罪を着せる工作もしていた。まるで平将門を裏切っていた愛妾桔梗姫のようで、妻は時々先輩の首だけの亡霊を見るという。

「雷神」(初出2021「webジェイノベル」)
レズビアンの関係になった劇団の後輩が映画の主役に抜擢され、嫉妬から後輩の裸の写真を週刊誌に流出させたため、後輩は役を降ろされ、実家に帰って病死した。雷雨の日には後輩が10階のマンションの窓の外に現れる。

「ごりょうの森」(初出2021「特選小説」)
父親の経営するレストランに勤めると、心惹かれる同僚が父の愛人で妊娠していて、母に告げると辞めて実家に帰ったが流産して死んだ。父の跡を継いでその女とそっくりの娘と出会い、父と同じように離れられない関係になった。

「ぼたん寺」(初出2021「特選小説」)
小料理屋の女将に誘われて女将の家で抱くと、そこには夫がいた。夫は女将の妹の婚約者だったのを略奪したのだが、妹が自死してから夫は不能になってしまった。女将は鏡を見る度に妹の姿を見る。

「われ死なば」(書き下ろし)
いとこ同士の恋人の仲を裂かれ、父親が死んだために、祖父の会社をいとこの親に取られ、いとこが成人した息子に会社を継がせようとするので会いに行くと、なりふり構わず女を武器にしてきたいとこを抱くことになり、自分の死体を曝させた檀林皇后を思う。

「おさかべ姫」(書き下ろし)
離婚されて自分を失った母を連れ、受験を放り出して家を出た私は、母が自分を父だと思い込んで同衾してくるのを止められず、母は出産して自殺した。私は井上内親王と息子の他戸親王との間で生まれ妖怪となった富子(おさかべ姫)の名を付けて育て、老齢になった父の介護に送り込む。

「母の罪」(初出2021「webジェイノベル」)
老舗和菓子店に嫁いだが、無気力な夫ではなく精力的な義父に惹かれて抱かれ、妊娠したのを期に別れて夫の子として産んだが、義父の死後離婚された。息子は成人してから交通事故で死んだが毎日会いに来てくれる。

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2022年07月06日

Posted by ブクログ

2022年、2冊目は花房観音のホラー(?)官能短編集、七編収録。

今回は、各タイトルのみ紹介

首塚
雷神
ごりょうの森
ぼたん寺
われ死なば
おさかべ姫
母の罪

印象はホラー<官能。ホラーと言うか、怨霊にまつわる伝承や寺社縁起等を下敷きにした物語達。

「首塚」「雷神」で下敷きとしているのは、平将門、菅原道真と言ったメジャーどころだが、個人的にはあまり……。一方、三編目以降は、大筋でかなり好み。並びも順も、かなりしっくり。

官能作としても、ヴァリエーションに富んでいるのは好感。しかし、一編30p程度の分量は、やはり、物足りなさを感じるものもあり。まぁ、最近、目の衰えがススんでしまった自分には、助かるが。

「生」と「死」、「生」と「性」、「肉体」と「精神」、それらの事柄より、解説の東 雅夫の「怪談」と「猥談」で勝負あり。

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2022年04月21日

Posted by ブクログ

怨霊をモチーフに描かれている短編集。その怨霊にゆかりのある神社仏閣が出てくる。上御霊神社、乙訓寺、長岡天満宮など…花房さんの本を読むと京都へ行きたくなる。 あんなに熱く燃え上がったのに何故なんだろう。一方だけの気持ちが醒めたときの悲しさ、読んでて心苦しくやるせない。 「母が女であることは罪なのだろうか。男なら、父であることと、男であることを誰も天秤になどかけない。どうして、女だけ、女のままでいようとすると、罪を背負わねばならないのか。」

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2022年10月22日

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