【感想・ネタバレ】旅をする木のレビュー

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Posted by ブクログ

6点を付けたいと思える本だった。

星野道夫氏によるアラスカ生活を綴ったエッセイ。日本とは比較にならないスケールの大自然を、繊細に描かれた文章から追体験できた。また、本職は文筆家なのでは、と思わせるような文学的な表現に何度もドキッとした。

星野氏は、二十代のはじめに親友を無くし、それがきっかけで人生の持ち時間が限られていることを知った。我々はカレンダーや時計の針で刻まれた時間に生きているのではなく、もっと漠然として、脆い生命の時間を生きているのだと彼は悟った。人生の有限性についてはエッセイの中で何度も触れられており、日々の生活の中で自分の指針を見失わないように、悔いのないよう毎日を噛み締めて生きているのが手に取るように伝わった。

本当にこのままでいいのか?という思いに囚われたときに、また読み返したいと思える大切な一冊となった。

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2024年05月11日

Posted by ブクログ

星野道夫さんのエッセイです。
アラスカに魅せられ、行くと決めまっしぐらに突き進む。そして、アラスカの地に根を張り暮らし、写真家として活動する。
ゆっくりゆっくり読み進めました。
寝入りの前に読むと日々のことを忘れ、想像の世界が広がり、アラスカの広大な自然や動物たち、そこに住む人々の営みを感じるのが楽しみであり、疲れを癒してくれました。そして、何より星野さんがアラスカの自然や動物たち、出会う人々を通して感じる生きる大切なことや幸せとはが散りばめられています。それも、力強く、素敵な言葉で自然に溶け込むように。
眠れない夜に開きたくなる一冊です。
そして、写真をまた見たくなりました。

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2024年05月03日

Posted by ブクログ

知識としてのアラスカは少しばかり身につけた。
いつかは旅してみたい極北の地、アラスカ。
星野さんと歩調を合わせ、ゆっくりと読み進めた。知らない言葉や地名を調べながら読んだ経験はまるで旅そのもの。仕方がない理由でGWの海外旅行をキャンセルせざるを得なかった自分にとって、焦らず前向きに次の機会に供える気持ちの準備をさせてくれた。
星野氏のいうとおり、苦い記憶も、歳月という万華鏡の中でいつしか懐かしい思い出に変わるのだろう。

旅をする木。
人生とはどのタイミングで切り取るかによって意味合いも変わってくる。
自分の人生を相対化し、もうひとつの時間が流れていることを常に感じられるようにしていたい。
そうでないとそうであるのは、かなり大きい差だ。

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2024年04月29日

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いつかアラスカに渡って星野さんが見てきた景色を見たい。
たった¥700で遠い北アメリカの地アラスカを旅できる最高のエッセイ。

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2024年04月26日

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なんと人間は自然の厳しさのなかで、ちっぽけな存在なんだと思い知らされる。展覧会も行ったことが有るし、心が洗われる写真も何度となく観ている。写真に添えられている短文も心に響くものだったのに、これほどまでも美しくあたたかくて優しい文章を綴られるとは知らなかった。自分が残念すぎた。
迷ったり、意味なく落ち込んだ時に再読したい。
何度も読みたい素敵な本に出会えて嬉しい。

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2024年04月20日

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サン・テグジュペリの本を思い出してもうた…。
人として生きる上で大事なものばかり取り出せる。
どっかにしまって忘れてたお気に入りのおもちゃを見つけた気分だ。

本当に大事なことを大事にし続けてきたんだな。

表題にもある「旅をする木」のトウヒのお話は私も好き。自分の命が終わっても、物語は終わらない。

あと、子供たちがアラスカでオーロラを見たお話もお気に入り。そのときはオーロラに対して何も思わなくてもいい。何かを経験した、という喜びやその人を形作るものは時間をかけて醸成されていくから。

あーーー、私もまだまだ冒険したい!

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2024年04月15日

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お気に入りで度々訪れている喫茶店の店主が愛読書として紹介していたことをきっかけに、読んでみました。結論として、出会えて本当に良かった本でした。自分のことを自然を愛する人とまでは言えなくても、自然に囲まれた場所に行くと気持ちが落ち着くタイプの人なら、きっと刺さる本です。

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2024年04月09日

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今までで一番多くフレーズをメモした本。
自分が小さい頃からぼんやり考えていたことが、言語化されていた。こんなことを考えていたのは自分だけではなかったのかと気づいたし、自分では言語化できなかった感覚を言葉にしてくれていた。

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2024年03月26日

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先に映画を観て本を知り、いずれも惹き込まれました。映像を知りながら読み進むと美しくも厳しい自然の光景を脳裏に浮かべられて時には良かったです。自然をこよなく愛して強い熱意でアラスカに渡った著者の心のこもった文章は同時期に撮影なさった数々の素晴らしい写真と共に、今を一生懸命生きなさい…と言って背中を押してくれるようです。

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2024年03月08日

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私は、アラスカの世界に一瞬のうちにして惹き込まれた。アラスカはこんなにも魅力的な場所であったのかと。
そして、星野さんの人生に魅了された。この人のような人生を歩みたいと強く感じた。
この本は人を惹きつけるような何かがあり、特に若い人に読んで欲しいと思った。

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2024年02月20日

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アラスカの風景を通して、著者の自然への情熱、人間愛を感じることができる。荒んだ心の処方箋になる。好きな文章は、"きれいな風景を誰かに伝えたいと思った時どうするか、写真や言葉ではなく、自分が変わること"。

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2023年12月31日

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アラスカの大地に魅せられて移住を決め、その美しくも厳しい自然と動物たちを写真に撮り続けた、星野道夫さん。
この作品は、そんな星野さんがアラスカをはじめとしたさまざまな土地で体験した、自然との対峙や人々との触れ合いを綴ったエッセイ集。

星野さんの、自然や生きとし生けるものに対する探究心、冒険心、温かさがとても伝わってきたし、今まで知る由もなかった世界が拓けていった。世界の果てない大きさと、自分の生きている世界の小ささを思った。

星野さんの言葉は静かで温かく、自然への愛に溢れている。
このエッセイを書き記してからほどなくして、星野さんはヒグマに襲われ亡くなってしまう。危険と隣り合わせの環境でも、自然に対して謙虚でいたいという理由で、銃を持つことはなかったという星野さん。

自然に魅せられ自然を愛し、それを人々に伝え、そして自然に還っていった、自然からの贈り物のような人だったのだろうと思った。

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2023年11月23日

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星野道夫さんの写真絵本を持っていてこの本はいつか読みたいとずっと思ってた。

アラスカの大自然、生命、土地の人々との関わり、彼を突き動かしたものと心を打ったもの。情景が目に浮かび、アラスカへの想いがヒシヒシと伝わってくる。

心に深く染み入る文章でまた読み返したくなるであろう一冊。

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2023年11月10日

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『ぼくが暮らしているここだけが世界ではない。さまざまな人々が、それぞれの価値観をもち、遠い異国で自分と同じ一生を生きている。つまりその旅は、自分が育ち、今生きている世界を相対化して視る目を初めて与えてくれたのだ。それは大きなことだった』

若い頃に居てもたってもいられずアラスカへ行き、その後根を下ろし暮らしたその数年間に書かれた本。
星野さんの文章は読んでいて心地よく、行ったこともないアラスカの風景をまるで見たような、ツンドラの風が頬を撫でる瞬間をまるで感じられるような素晴らしい表現力。
その星野さんのアラスカでの日々を通じて些細な日常に左右される人の気持ち、人間の風景の面白さ、人の一生の短さ、人生とは、人と人との出会いとは、そのようなことを語られています。

先が気になって止まらず一気に読む種類のものとは違い、好きな時に好きなページを開いて何度でも読みたくなります。

忙しい時、心が落ち着かない時にこそ読みたい本だと思いました。

池澤夏樹さんの解説もとても良かったです。

『ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほどおおきい。』

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2023年10月26日

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大好きな本。
遠いアラスカの自然、人、環境などが、星野道夫さんの文章からその空気を感じられる気がする。
いま、日本の片隅で自分は仕事にあくせくしているけれど、アラスカではクジラが水面から跳ねていたり、熊が歩いていたり、そんなことを考えると、少し気持ちにゆとりができる。

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2023年10月15日

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今まで色々な本を読んだが、この本は特別な不思議な本だと感じる。読んでるだけだが、自然、季節の移り変わりを感じたり、壮大さを感じたり、リラックスできたり。最初は読む箇所によって没入感を得られたり、逆にひどく退屈さを感じたが、やがて自分の心を映していることに気付く、読んでいてリラックスできないときは、私の心がこの本を読む状態になっていないのだと。
通常、通勤の電車内で本を読むが、そぐわないと思い、休日や寝る前に少しずつ読む。好きな本の映像化を望んだ事はないが、これは映像でも見てみたいと思う。

アラスカの地でカリブー追い写真を撮ったり、インディアン達と交流した様子をかく。

アラスカに行きたい、一時期アラスカに住んでいた従姉にアラスカの話を聞きたい。

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2023年09月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私の知らない世界を感じられて、視野が広がる素晴らしい本。日々の生活に追われて忘れてしまう事に気づかせてくれる。広い世界を見て感じたいと思う1冊 。人生のバイブル。
『結果が思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である』
『何も生み出すことのない、ただ流れていく時間を大切にしたい』
『あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れている事を、いつも心のどこかで感じていたい。』

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2023年08月25日

Posted by ブクログ

 この『旅をする木』の著者である星野道夫は、アラスカに住む人々や動植物の写真を撮り続けた写真家です。
 この本は、著者がアラスカでの旅の間に出会った人や生き物、体験した出来事を書いたエッセイです。

 私がこの本と出会ったのは、中学三年の時です。母親の本棚に入っていたこの本の『旅をする木』という少し不思議なタイトルがふと気になり、手に取ってみました。
 優しい文体と彼の自然観に夢中になり、毎晩眠る前に読むのが楽しみになりました。

 極寒の地アラスカ——。北極圏に位置するアラスカは、冬になるとすぐ白夜の季節がやって来る、厳しい土地です。しかし、そこにはクマやカリブーなどの動物や、それらを追うエスキモーやインディアンなどの先住民、そして彼らを取り囲むツンドラや高山の植物など、たくさんの生き物が暮らしています。

 そんなアラスカを描いた彼の数多くのエピソードの中で、私の印象に強く残ったのは「もうひとつの時間」という話です。
 彼は、東京の友人と夏のアラスカの海を旅していました。あるとき、2人はクジラの群れに遭遇します。二人がクジラたちを眺めていると、突然、一頭のクジラが海面から高く飛び上がりました。
 その一瞬、その一頭と二人は時間を共有したのです。
 「私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知った」と、筆者の友人は話します。
「僕たちが、毎日生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。」
 このもうひとつの時間を意識できるということは、とても大きいことだと思います。
 このエピソードを読んだ後に、星野道夫の写真集を見ました。
 写真を眺めているときに考えるのは、たった今自分がこうして寝そべっている間にも、こんな動物が氷の大地を踏みしめ歩いて行くのか、ということや、狩猟民族の人々が獲物を仕留めた喜びと自然への感謝を分かち合っているのか、ということなのです。はたまた、何万年も前から変わらないと言われるアラスカの大地や岩山、氷山が今も眠るようにそこにあるのだな、ということでもあります。
 そしてこのもうひとつの時間は、本を閉じても、写真集をしまいこんでも、心のなかに残るのです。
 歩いているときやバスに乗っているときにも、遠くの行ったこともない土地に流れている見知らぬ時間を意識し、そこに憧れを覚えると同時に、自分が暮らしている世界がなんと小さいものか考えさせられます。

 ただ、このもうひとつの時間は失われつつあります。
 そう遠くない昔、アラスカに入ってきた資本主義と近代の技術は、急速にアラスカの文化を変化させました。
「・・・昔から、インディアンが考えていることは三つしかない。大地、動物、そして人間だ。生き延びてゆくためにな。富、そんなことは誰も考えはしなかった・・・」これは、アラスカの文化が純粋に残っていた頃から生きていたインディアン、デイビットが星野道夫に語った言葉です。
 現在のアラスカでは、こうはゆきません。お金があれば便利な暮らしができますが、逆にいえば、お金がなければ生き延びてゆけないのです。
 この文明化の流れは誰にも止められません。アラスカの人々も、目の前にある豊かさを放っておくことはできませんし、外の人々が変化を妨ぐことも不可能ですから。

 私はせめて、このもうひとつの時間が失われてしまうその前に、この時間を自分の目で、耳で、体感したいと思います。
 そして今残っている時間を失わないためにも、この別の意味で豊かな時間があったのだということを人に伝えられたらと思います。
 では、自分が感じたその時間、景色の美しさ、豊かさをどうやってひとに伝えたらいいのでしょうか。
 星野道夫の友人が彼に語った言葉に、こんなものがあります。
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、そのうつくしさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」
 彼はその問いに対して、言葉で伝えると答えます。すると友人はこう続けます。
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」
 私もそうして、ひとにもうひとつの時間を伝えたいです。

#夏の読書感想文

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2023年08月11日

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不思議な魅力のある本。一気読みするような「面白さ」ではないのに引き込まれ、1ページ1ページを大切に読み進めた。内容は詩のようでもあり、日記のようであり、手紙のようでもあるのだけれど、流れる時間や生きることを考えさせられる。自宅の本を整理する日が来ても、手放したくないなと思える本。アラスカにはこれまで大した関心はなかったけれど、何となく思いを馳せてしまいますね。著者はヒグマに襲われて亡くなったというのを読んでから知ったけど、それすら納得していそうなくらい、自然や命の尊さを理解した人だと感じた。

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2023年07月18日

購入済み

何かにゆとりが出る

星野道夫 この人の作品は何冊か読んだ どれもいい作品だと思う 読んだあと なぜだろう 物の見方がゆっくりになる

#感動する

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2023年06月15日

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静かな文章に幸福が溢れている。大切なことは目には見えない。オブラートに包まれた世界。アラスカに行ったことはないけれど、この世界を想像することができてよかった。
一つ一つの固有名詞は大事じゃないんだと思うけど、地名や鳥、木を調べながら読むと味わいが深くなると思います

2018.2.12


人生は旅だという人生観が好き。どの章からもどれだけ星野さんがアラスカに惹かれていたか魅せられていたかということが伝わってくる。この静かだけど温かい感覚に浸りたくて、毎朝毎晩1章ずつ大事に読んでいる。

2024.3.20

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2024年03月20日

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アラスカに生きた写真家のエッセイ。
16歳でひとりアメリカを旅し22歳でアラスカで生きることを決め26歳で実現。
好奇心と信念の強さに驚嘆する。
人々の暖かさと自然の厳しさが対照的で心打たれる。
リツヤベイの話と黒潮がもたらした漂流者の話は興味深い。

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2024年04月10日

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心が洗われる。
星野さんの感じた世界が、自分も感じることができる。静かな夜や、大自然の中で読みたい一冊

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2024年01月20日

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一章が短く読みやすい。手軽にアラスカの空気を感じることができ、風景が鮮明に浮かび上がる。自然の厳しさの中では人の温かさや生命の温もりが浮き彫りになるのだろうと感じた。

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2024年01月06日

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もうひとつの時間
美しい景色を何で表現するか?
自分が変わること

アラスカとの出会い
関東で過ごす星野さんが北の大地に憧れ、やがてアラスカにたどり着くきっかけとなった写真家と出会う話。

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2023年12月10日

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アラスカの厳しい自然のなかで生きた筆者によるエッセイ。その自然や、自然の中で、自然と関わりながら生きる筆者や人々の息吹。実に魅力的で、惹きつけられるものがある世界が描かれる。良い読書経験ができた。

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2023年12月09日

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雑念を追払い、落ち着いた気持ちで読みたい、めいいっぱい自分でアラスカの自然の映像を浮かべて想像の世界に浸りたい、そんな気持ちにさせてくれる写真家、星野道夫さんのエッセイ

星野さんが、アラスカに興味を持ったきっかけは、たまたま神田の古本屋で目にしたアラスカの集落の写真でした

そこに写っている人達にどうしても会いたくて、「あなたの村の写真を本で見ました。たずねてみたいと思っています。何でもしますので、
誰か僕を世話してくれる人はいないでしょうか」と手紙を出します
半年後に返事が来て、村に住むある家族の家に働きながらお世話してもらうことになったのが、19才の夏

なかなかの度胸だと思いませんか?

人間の世界とは関わりない、それ自身の存在のための自然
アラスカの持つその意味のない広がりに、ずっと惹かれてきた星野さん
アラスカの美しくもあり厳しい自然、動物達の生き様を、豊かな表現力で語ってくれています

星野道夫さんは残念ながら、1996年に43歳の若さでヒグマに襲われて急逝されたそうです

オーロラ、氷河、満天の星空、カリブー、ザトウクジラ、クマ。。。
星野さんの写真、一度見てみたいです



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2023年09月30日

Posted by ブクログ

人生を生きていく上で、自分の目に見えていることだけが世界の動きではないと知っていることはかなり重要だと思った。
私が仕事をして疲弊している時にもザトウクジラはアラスカで飛び上がっていると考えたら確かにこんな疲労感なんてどこかにいってしまいそうだ。

星野さんのエッセイは読み進めていくうちに思い出す自分自身の旅や文章がいくつもあった。
懐かしいような、知らないことのような、不思議な気持ちになりながら読み進めた。

"風がすっぽり体をつつむ時、
それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。
風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ"
このフレーズは谷川雁さんの本からの引用らしいのでそちらにも興味がわいた。

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2023年09月19日

Posted by ブクログ

最近、「自然」という時、どこかで人間とは異なる存在として線を引いている気がする。人工物と人間用に加工された自然とばかり触れているからかもしれない。と思っていた時に読んだ本。

旅をする木を読むと、人間も自然の一部なんだと思い出せる。星野さんの視点からみる世界は、広々としていて永遠で、懐が深く、脆い。描かれる人の営みも自然の一幕という様子で、自分の中の分断された「自然」と「人間」が地続きになるような気になる。
どこから読んでもいいし、1遍だけ読んでもいい作りになっているけれど、どこを読んでも気持ちが落ち着いて、静かな情熱が湧いてくる。満ち足りた時間を言語化する力、それ以前に、そういう時間を認識する力の強い人だったのかな、と思う。自分の過ごしている時間を徒らに消費することが無い人だったのでは。命や自然と本当に誠実に向き合えた人だったのではと思う。

この本が書かれてからほとんど30年経って、地球の環境はだいぶハッキリと変わってしまった。今も星野さんが生きていたら、どんな文章を書いていたんだろう。

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2023年09月07日

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最近、北海道では毎日のようにヒグマの目撃情報が報道されている。
著者はアラスカ在住の写真家だったが、クマに襲われて亡くなった。
なぜ日本から飛びだしてアラスカで暮らすことになったのか、それを知りたいと思った。
けれど、この本に書いてあったのは、「生きること」についてだった。

”とりわけ仔連れのムースはとても危険で絶対に近づいてはなりません。しかし、日々の暮らしのすぐとなりで動物たちが必死に生きている姿に出合うと、やはりじっと見入ってしまいます。少し身が引き締まるというのでしょうか。”

ムース(ヘラジカ)は鹿の中で一番体が大きくて、襲われれば大変危険。
けれども同じ地球に生きる仲間としての敬意をもってその姿に接する著者には、クマの生態も知らず恐れたり、逆にテリトリーに入り込んでしまう私たちが見習わなけれならないものがあると思う。

”そうそう、赤道の落日にはびっくりしました。アラスカでは、太陽は限りなく水平にゆっくりと沈んでゆくのに、ここは水平線にまっすぐに落ち、一瞬のうちに世界は夜になってしまうのです。”

エクアドルの写真集を作るプロジェクトのためにガラパゴス島に行ったときの感想。
実際に体験することは、自分の内部にしっかりと刻み付けられるんだよなあ。

”知識としてではなく、歴史というものが目の前に厳然と存在する風景の中で生活しているというのはすごいことですね。それは人間の考え方にどこかで影響を与えているような気がします。”

写真のイベントでザルツブルクに行ったときの文章。
北海道出身の私には本州でも十分に歴史が厳然と存在している場所はたくさんあると思えますが。
浅草寺の創建が推古天皇の頃と聞いたときにはのけぞりましたもの。

”氷河の上で過ごす夜の静けさ、風の冷たさ、星の輝き……情報が少ないということはある力を秘めている。それは人間に何かを想像する機会を与えてくれるからだ。”

小学生から高校生まで11人の子どもたちが、日本から1週間アラスカで過ごしたとき、彼らの姿を身近で見ていて。
与えられる情報ではなく、自分で見つけに行く情報というのは、ある程度想像力がないと見つけられないのではないか。
そして本当に必要な情報というのは、それほど数多くはないのかもしれない。

”ぼくたちが毎日を生きている同じ時間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。”

東京の編集者が著者のクジラ撮影に同行して。
毎日何かに追い立てられるように生きていると、人生には一本の道しかないように思えるけれども、本当はそのすぐ横に、ゆったりと流れる時間を生きている人・モノがあるということを意識する大切さ。
自分を見失わないためにも。

”結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である。”

43歳の若さで亡くなるのは無念だったのではないか、と思うのは傲慢なのだ、きっと。
だけど、本来なら周囲にエサが豊富にあって、クマに襲われるわけのない場所で、なぜ襲われてしまったのかというと、クマが餌付けされていて、テントに入って人間の食料を食べることに慣れていたから、というのはやりきれない。

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2023年07月06日

Posted by ブクログ


自然の優しさと厳しさをこの上なく感じる作品…
著者星野さんのお人柄も同じなのだろう
あまりにも自然の中に溶け込み、ありのまますべてを受入れ、そして逆らいはしないものの、流されているわけではない
彼の人生は彼の意志であると同時に自然の、宇宙の成り立ちのひとつに感じる

そして彼の生きているアラスカでは、地位も立場も、財産も、着ている服さえも
まったく意味なんかもたないのだ
そう丸裸の人間力だけで人と付き合うのだ
素晴らしいことではあるが、果たして自分にできるのだろうか…
当たり前でありながら、不安を感じてしまう自分にちっぽけさと無力さと一体どんな上っ面の鎧を着けているのだ私は…
そんなことを感じてしまう

星野さんが最初に海外を訪れたのはなんと1986年、16歳の時
しかもブラジルへ向かう移民の船で2週間かけてロサンゼルスへ到着
もちろん一人
当時のアメリカの治安を考えてもご両親もよく承諾されたと感心してしまう
凄いなぁ
ヤマザキマリさんといい、星野さんといい…

そして初めてのアラスカへ行くエピソードも凄い
アラスカの出合いは一冊のアラスカの写真集
北極圏のあるエスキモーの村を空から撮った写真
ここからの行動力が尋常ではない…
「あなたの村の写真を本で見ました。
たずねてみたいと思っています
何でもしますので、誰か僕を世話してくれる人がいないでしょうか」
と手紙を出しちゃうのだ!
そして、とうとう19歳の夏、願いが叶う
滞在期間3ヶ月間、強烈な体験として心の中に沈殿していったという

そして各エピソードがいちいち素敵過ぎた
心暖まるたくさんのエピソード
素敵な人が自然と集まるのは星野さんが真摯に人生に向き合っているからなのだろう
引き寄せの術…ですね
そして、自然の厳しさの中命を落としていった大切な人たち…
何度もこみ上げるものがあった
それでも星野さんは受入れて大地に足をつけ、生きていくのだ

心が洗われます
久しぶりに日常の垢が落ち、浄化された



カリブー=トナカイ

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2023年06月27日

匿名

購入済み

きらめく言葉

読み終わった後も、見たこともないはずのアラスカの大自然の情景が心に焼き付いて、しばらく抜けなかった。星野さんは、自然からも、動物からも、人間からも広く深く愛され、また愛することのできる特別な資質を持つ人だと思う。この本にはたくさんのかけがえのない出会いや奇跡が濃密に書き留められている。三十年近く前の文章なのに、今そこで紡がれたばかりの言葉であるようなみずみずしいきらめきを放っていることに驚かされる。

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2022年11月19日

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