【感想・ネタバレ】石原慎太郎・大江健三郎のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

石原慎太郎は、昭和の時代における若者のアイコンであった
石原が何をやっても、世間はそれを支持した
江藤淳はそんな石原を評して、「無意識過剰」と呼んだ
にじみ出る石原の無意識が
日本国民のそれと自然に呼応しているというほどの意味である
敗戦後の、新しい日本を作り上げていこうとする若き大衆は
石原のような存在を求めたのだった

そう考えると、「万延元年のフットボール」を契機に
江藤淳と大江健三郎が決裂したのも無理のない話だった
三島由紀夫の死に先駆けて
英雄の死と、その神格化を書いた大江は
それによって
石原の、真に健康な肉体を、冒涜したも同然であったから
今では信じがたいことに
石原、大江と江藤を加えた3人組は
もともと政治的にも近いところにいる同志的存在だったのだ
それが結局、時の流れによって引き裂かれたわけであるが
いずれ避けられない衝突だったにせよ
狂言回しを務めたのが江藤だったことは間違いない

江藤の言うように
「万延元年~」には、反近代的なところがあった
大江健三郎は
三島とは違った形で天皇にこだわり続けた作家である
表現としては反天皇かもしれない
だが、その存在の無力に、価値を見出すようなところもあった
無力であっても生きる資格が人にはある
だが一方、それはもちろん「個人」を否定する思想でもあった
…「共生」とはそういうものである
そう言われると、返す言葉もないんだが
しかしそうであればなおのこと
社会維持のために、強固なシステムが必要となるはずだ
旧来的な意味でのシステムならば
いずれ卵を壊す壁となろう
今更それを認めることはできない
江藤としては
「個人」を突き詰めた先に、新たな共生のシステムが生まれると
そう信じたいのだった
現に、石原と日本国民は無意識で通じ合ってるじゃないか、と

いずれにしてもロマンチックな話である
戦後昭和だから成立した物語である
未来を生きる我々としては
江藤流と大江流、2つの匙加減で味見を繰り返していくしかあるまい
それが泥のスープであったとしても

0
2021年07月23日

「雑学・エンタメ」ランキング