【感想・ネタバレ】砂の魔法のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

素晴らしい作品でした。

間違いなくロマンス小説のジャンル分けになるのだと思いますが、私的にはむしろ、「僻地医療の大切さ」だとか、「多くの人々に対する無償の愛」といったような―男女の愛を越えた普遍的な大きな人間愛を描いているようにも思えました。

ヒロインの医師ジェンは悲惨な交通事故で夫と妊娠中の子どもを失ったという痛ましい過去があります。もう二度と誰も愛さない、愛した人を失うのは辛いと遠方の砂漠で結核根絶プログラムのために献身的に働いていました。
そんな彼女の前に現れたハンサムな医師の正体は、実は砂漠の王国のシーク。二人がひとめで惹かれ合い愛し合うようになるのに、時間はかかりませんでした。
ここまではロマンス小説の定番なのですが、ジェンの患者のためには自分を犠牲にして厭わない姿は、感動的で、そういう言葉だけでは言い表せないほど心打たれるものがありました。
―人の痛みをそんなに感じてしまうのに、よくこの仕事ができるね?
 カム―シークに訊ねられたジェンの言葉が印象的です。
―この仕事をせずにいられる? 略 人が問題を抱えているのを見たら、どんなに小さいことでも、助けるために何かせずにはいられないでしょう?
 困っている人―患者を見たら、救いの手をさしのべずには居られないという彼女の考え方、性格をよく象徴しているセリフです。
 ジェンは敵対している部族の族長の若い妻が難産で苦しんでいるため、身の危険を承知で助けに赴きます。
 その部族は、これまでお産でたくさんの女性が命を落としました。帝王切開をするだけの設備と技術がないからです。ジェンは族長の妻に手術を行い、無事に子どもは生まれました。
 ここは涙なしはには読めませんでした。私自身も四度の帝王切開経験者なので、「たとえどんな経過や手段を辿ろうとも、子どもに無事に生まれて欲しい」という願いはよく理解できます。
 医療技術がまだ発達していない昔、もしくは未開の地では、現実にまだ帝王切開を受けられず、亡くなる女性や子どもがいるのは哀しいことです。
 社会的な問題についても、色々なことを考えさせられる作品でした。
 ラスト、王位を継承することになったカムのために、子どもを産めないジェンは身を引こうとします。実は、ここで奇跡的にジェンが妊娠して、それが判ってハッピーエンドかなと予想していましたが、見事にハズレました。
―子どもができなくても良い。
 そうジェンにカムが告げたところで、物語りは終わります。確かに、この方が余韻のある終わり方だし、ジェンの妊娠で終わったら、「話ができすぎ」という感が強いかもしれません。
 流石です。脱帽しました。
  

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2017年01月08日

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