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薔薇は萎れたのか?
誤配達された手紙を巡り、男女の物語は展開される。舞台は南海沿線で高師浜、萩の茶屋を幾度も往還しながら、淀屋橋に中之島、難波、梅田とイキイキしたモダンな大阪描写で、昭和三十年代が彩られている。潔癖な倫理観はもどかしさを感じるが、こんな時代を通り越して、現在があるのだと思うと、作家が美しい薔薇の蘇りに託した象徴は、すっかり萎れてしまったのではないかと考えてしまう。藤澤桓夫が求められた時代とは、どのような時代だったのか、一考する値打ちはあるように思える。