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Posted by ブクログ
ミステリー小説家のアンソロジー。
長編にできそうなネタを惜しげもなく短編に仕上げている作品もあり、とても楽しめた。
特に下記三作品が面白かった。
近藤史恵「未事故物件」
乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」
新津きよみ「女の一生」
●近藤史恵「未事故物件」
引っ越したアパートの上の部屋から午前4時に洗濯機の音が聞こえてくる。しかし部屋は空き家だという。騒音に悩まされた主人公は音の正体を探り始めるが…。
●福田和代「迷い家」
泥酔して他人の家に上がり込んだ主人公。食卓に用意された鍋を食べ、食器を1つ持ち帰る。後日、その屋敷の住人が行方不明になったと耳にする。しかも主人公が迷い込んだ日だとういう。知り合いの警察に相談するが…。
●乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」
離婚する両親のどちらと暮らすか。主人公の女子中学生は冷静に判断するため、父母の状況を調べ始めるが…。
●松村比呂美「置き去り」
一大決心をしてジャングルツアーに参加した主婦。途中のトイレ休憩で置き去りにされてしまう。いったいどうなるのか…。
●篠田真由美「迷い鏡」
●新津きよみ「女の一生」
赤ん坊を事故で亡くした主婦。夫とも離婚することになり実家に戻るが兄嫁と折り合いが悪くなるり、アパートで一人暮らしを始める。そんな時、河原のホームレスと親しくなり、アパートへ招くのだが…。
●柴田よしき「迷蝶」
妻を亡くした定年退職者の主人公。唯一の趣味である蝶の写真撮影で知り合った老人と話すうち、過去の記憶が蘇る…。
●大沢在昌「覆面作家」
評判の覆面作家は誰なのか?小説家の主人公は古い友人のことを思い出す…。
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近藤史恵「未事故物件」
一人暮らし始める前に読まなくてよかった。
ホントに怖いのは生きてる人間。
でも、毎日4時に洗濯機回されたら発狂しそう……
福田和代「迷い家」
舞台は現代日本だけど、導入はほんのり日本昔話テイスト。
優しいお出汁のお鍋食べくなっちゃった。笑
最後のオチはちょっと強引な気もするけど……。おちょこに指紋ついてるくらいなら、他のものにもベタベタついてるでしょって。
乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」
自分の両親も主人公と同年代くらいの頃に離婚しているからか、感情移入がはんばない。しかも4つ下の弟がいるのも一緒!
両親のどっちについていっても良いよって、子供の気持ちを尊重してくれてるのは分かるけど、その実ひどく酷だよね。特に父も母も好きなら。どっちかを選ぶってことは、どっちかを選ばないってことだよね……分かりみが深すぎる。
でも、父母が仲良くない空気の中で過ごす家庭はひどく心がしんどいので(この描写も分かりみ!)離婚してくれて良かったとも思ったなぁ……などと昔のことを色々思い出した。
松村比呂美「置き去り」
オチまでキレイにまとまった作品。
慣れない外国、しかもジャングルになんて置き去りにされたら……考えるだに恐ろしい。時間にルーズな私は団体旅行には行けないな。
登場する女性がみーんなこの「置き去り」経験があるって言うのはなんか笑っちゃった。
篠田真由美「迷い鏡」
すごく少女漫画チックなお話。少女漫画にしたら映えそう。古い洋館とか、樹木の迷路とか。
最後がなんかふんわりで、個人的にはもちょっとアクの強さがほしかった。
新津きよみ「女の一生」
パラレルワールドは存在するかもしれないんだよ。観測されてないだけで、ないとは言いきれない。
とすると、最後の部分は主人公が自殺してしまった世界と、隣に立った男性が自殺したせいで主人公が自殺できなかった世界が、重なったのかも。同じフィルムに2回写真撮ったみたいに。
柴田よしき「迷蝶」
あーん、やられた。
できすぎなくらい偶然が重ならすぎ…って途中まで思ったけど、それは思惑の元に起こったものだったという。こういう展開、大好き。
自分の何の気なしの行動がどこかで重大な事態(そしてそれはとてつもない悲劇かもしれない)を引き起こしている可能性は誰にでも常にあるなぁって。
風が吹けば桶屋が儲かる、の類似のことわざ?バタフライエフェクトから(もともとは物理用語?)、この話の核に蝶を据えたのかしらとか考えたり。
大沢在昌「覆面作家」
大沢先生の作品は学生の頃から好きだったので、この短編ももちろん好きでした。
それぞれ作家とゲームクリエイターになったかつての親友(と呼んでいいのか?となっていましたが)、それぞれが知らないところでそれぞれの作品のファンにひっそりとなっている…っていうエピソードで妙に泣きそうになった。
あとがき/福田和代
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アンソロージーはいろいろな作家の方の作品が読めるので好きです。
今回は近藤史恵さんの『非事故物件』が特に面白かったです。
それぞれに個性が出ていて、面白かったですねぇ。
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迷う、短編集。
不思議な話かと思ったらミステリーだった1話目に
今度こそ! と思ったら2話目もミステリー。
確かに、人生に迷いがある短編でしたが
しっかりと道を決めるのが物語だな、と。
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アンソロジーの中に「アミの会(仮)」というものがあるのを知ったのは、この【迷 まよう】だった。
アミの会(仮)のアンソロジー企画は『捨てる』『毒殺協奏曲』『隠す』
そして、第4弾が『迷』と『惑』
ところで「アミの会(仮)」って何?
と疑問に思ったら、「アミの会」には公式ページ "Facebook" があり、
活動も2015年からだと知って驚いた。
それによると、「アミの会(仮)」は女性作家の集まりで、会の目的はアンソロジーを出すこと。
たまに集まってお茶を飲んだり、ご飯を食べたり(お酒を飲んだり)すること。
2015年、GWの東京で、5人の作家が集まって食事会をしていたとき
柴田よしきさんが「アンソロジーをだそうよ」と提案したのがきっかけだったそう。
”アミの会”メンバー近藤史恵さんによると
現在は、短編を発表しにくい時代で、純粋な短編集はなかなか売れないし、売れっ子作家さんしか出せない。
短編は本にまとまらないとなると、雑誌などでも書きにくく、連作短編という形にしてしまうことになる。
雑誌で書くことができても、1か月で書店から消えてしまう。
でも、短編小説は魅力的な形式で、連作ではない単発の短編でしか描けない世界がある。
短編小説の魅力をもっと多くの読者さんに知ってほしいし、短編が好きな読者の方もたくさんいらっしゃるはず。
アンソロジーは、知らない作家に出会うきっかけにもなる。
いきなり知らない作家の本に手を伸ばすことは冒険でも、
アンソロジーで気に入った作家ならば、他の作品も読んでみたくなるのでは。
本が大好きで、長編はもちろん、短編も大好き!
そんな私がアンソロジーでいいな、と思うのが
まさにこの、”初めましての作家さんとの出会い”
近藤さんがおっしゃるように、
いきなり知らない作家さんの本に手を伸ばすのはちょっとした冒険
そんなとき、アンソロジーはもってこい!
『迷』では新津きよみさんが初めましての作家さん。
アミの会(仮)の『迷』
あれ?
大沢在昌さん、乙一さん…?
と思ったら、お二人の男性作家さんはゲスト参加だそうで
納得。