【感想・ネタバレ】こうして組織は腐敗する 日本一やさしいガバナンス入門書のレビュー

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Posted by ブクログ

本書は、NPO(非営利企業)のガバナンスの解説書です

組織というものは、ある程度は個人の自由を認めつつも、組織としての方向性をきちんと定め、メンバーがそれに従うための工夫をする必要があります。
NPO について経営学の視点で論ずるに、その基礎となったのは、P・F・ドラッカーの「非営利組織の経営」です。

みんなのものは誰のものでもない
誰でも自分の所有しているものは大切に取り扱う
公共物は私的所有権がないので、大切に扱われない可能性が高い これを、共有地の悲劇といいます
所有者のいないものは、大切に扱われない

情報が不完全なサービス
医師は患者に比べて医学知識が豊富なので、両者が向かいあったとき、情報に対して圧倒的に医師が優位な立場に置かれています これを、情報の非対称性といいます
こうした性質をもつサービスにおいて、患者の契約コストは極めて高いものとなります

JAXAのように契約コストが高い人たちを所有者にすることが難しいケースでは、あえて、所有者を決めないという組織形態がとられます。これこそが、非営利組織(NPO)です

株式会社のガバナンス 所有者には組織の価値を高めるインセンティブがあるので、組織を統治するうえで、もっとも大切な役割を果たすと考えられる

行政がNPOに補助金を出すということは、行政がガバナンス面での責任を負うことを意味します

ケーススタディ1 大相撲
・茶屋がチケットを独占したので、茶屋の廃止を検討 ⇒どうなったというと 国技館内にあった20件の茶屋は、すべて相撲サービス株式会社の傘下におさまるという形で決着した
・ひどい経営状況にもかかわらず、その責任をとった理事は一人もいません。数々の事件がおきたときも、理事長が責任をとって辞任したことはあっても、理事が辞めたというのは聞いたことがない

ケーススタディ2 お寺
・檀家の契約コスト 料金はサービスを購入するかしないか決めるうえできわめて重要な情報です
・仏教界はこれまで喜捨の意味について、檀信徒に伝える努力を怠ってきた
・核家族化が進み、家から、仏壇がきえると仏教の作法に関する次世代への伝承がなされなくなる
・後継者がいなくなったお寺の宗教法人が売りに出されるケースが増えてきました

ケーススタディ3 学校
・教育サービスの特殊性 なぜ教育が苦痛であっても仕方ないとおもわれているのでしょうか。それは、教育には、投資としての性格があるからです
・大学の不認可騒動の原因は、私立学校が通常のサービスを提供する業者のような参入と撤退のしくみをもたないことにあります。その理由とは、①学校教育が持つ特殊性、②政府が私立学校に助成金をだしているから の2点です
・銀行が見捨てるということは、定員が埋まらなくなってきたときなのです。学校経営のコンサルタントの話では、定員が埋まらない状態は、学校法人経営からいえば、すでに末期症状で、競争倍率が2を下回るようになった時点で何らかの手を打っておかないと手遅れになるそうです。
・女子大の経営が困難に陥ているのは、学部構成が文学、宗教、家政などに偏り、経済、ビジネス、理工系などの幅広い分野が学べないというものです。

目次
はじめに
第1章 NPOはこうして誕生した
第2章 NPOはどう運営されるのか
第3章 大相撲はなぜ不祥事が絶えないのか
第4章 お寺は生き残れるか
第5章 学校には何が求められているか
第6章 障害者施設はどこへ行くのか
おわりに
参考文献

ISBN:9784121504579
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:264ページ
定価:820円(本体)
発売日:2013年06月13日

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2023年10月12日

Posted by ブクログ

NPOのガバナンス論。お寺に関するところが特に面白かった。全体を体系的にまとめて、共通問題を総論化するとまた新たなことが浮かび上がるかも。

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2014年02月19日

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