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昔、子供の成長に影響を与えるのは、環境と遺伝の両方と聞いたことがあるが、育つ環境がモロ影響を与えるのだろうと思った。
こういう子供が少なくなることを祈る。
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優真は本来は小学生であるが、学校に通わせてもらえない。優真と父親の異なる弟は、母親の亜紀が男のところに転がり込むのに連れられて男のアパートに住んでいるが、母親と男は2人の面倒を見ずに遊び歩く毎日を過ごしている。ネグレクトと虐待、食事も満足にとらせてもらえない優真はコンビニ店長の目加田に売れ残った弁当をもらったりしながら生き延びている。
その後、優真は施設に引き取られるが、中学生の年齢になった後、目加田夫婦の好意により、里子として目加田夫婦に引き取られる。しかし、それまで「普通の暮らし」をしたことのない優真は、中学校の同級生とも目加田夫婦ともにうまくいかず、徐々に溝が広がっていく。
虐待やネグレクトにあった子供達は、例えば、この小説の優真のように里子として引き取られ、一見、苦労のない暮らしが出来るようになっても、周囲と溶け込めない。虐待やネグレクトにあった子供達は、虐待にあっている間、苦しんでいるだけではなく、子供の頃に普通の躾をされておらず、また、常識を身につけていないために、なかなかうまく暮らしていけないのだという小説の筋書きであるが、そうなのだろうな、と思う。それが、周囲と溝をつくっていく原因の一つにもなる。
お風呂に入ったり、歯を磨く習慣が身についていない。クリスマスを家庭で祝うことを知らない。年越しそばを知らないし、お年玉が何かも分からない。そういった小説の中の一つ一つのエピソードによって、この小説はリアリティを増していく。
また、優真の母親の亜紀も、亜紀自身の母親から、虐待・ネグレクトを受け、同じような育ち方をしていることが小説の中で明らかにされていく。だから、亜紀自身も、普通の躾を受けていないし、常識が身についていない。だから、優真にそれを教えることも出来ない。貧困と虐待は連鎖するのだ。
読み進めるのがつらく感じるくらい、救いようのない小説だった。
小説の最後の場面、感情を爆発させた優真は、泣きながら「どうしたらいいのか、わからないよ」と叫ぶ。それに対して、里親の目加田も「ごめん、お父さんもわからない」と泣きながら答える。
貧困、虐待の連鎖は社会問題だ。おそらく、それで苦しんでいる子供達は数多くいるはずだ。そして、この小説にも登場する児童相談所の係官のように、あるいは、里親になろうとする目加田夫婦のように、現場でそれを食い止めたり、子供達を救おうとしている人たちも多いはずだ。しかし、それがうまくいっているとは限らないし、そもそも、貧困と虐待の連鎖の根本を絶つにはどうすれば良いのか。そういったことに対して、「わからないよ」と筆者も言っているのかもしれない。
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500ページ近い本ですが一気に読むことができました。このような本を読む層は、常識の範囲内で暮らしている人だと思います。学校に行くべき。友達は作るべき。お風呂には毎日入るべき。色んな「べき」の中で生きてる人が大半。そこから外れたところで育った子どもたちを救いたいと思っても、そんな美談だけでは済まされないことを思い知らされます。その後の優真君が少しでも救われることを願わずにはいられません。
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虐待による子供の歪みとねじ曲がった成長を生々しく、綺麗事抜きで描いた作品。
恵まれている人が当たり前に享受する家族の温かさや枠組みからあぶれ、世間を憎まないと生きていけない子供、そして親。
そして、その人たちを家族の枠組みに当てはめようと奔走する人たち。
住む世界が違うのだ、と思わされるほど、両者の思考は相容れない。
それでも、最後は希望の見えるラスト。
かってないほど胸糞悪くヒリヒリした気持ちで500ページ近く読んだが、最後の優真と目加田のやりとりで、じんわりと涙が溢れた。
胸糞悪かったのは、虐待を受けている子どもってこうだよな、思春期ってこんな毒々しさだよな、という生々しい描きかた。子供ってなにか天使的に、無垢な存在として描かれることが多いので免疫もなく。聞き分けの良さも素直さもない、欲望に正直でずる賢く、感情コントロールの効かない篤人の幼さ。冷静な観察眼に酔っているようで、思春期らしい暴走性も秘めている優真の危うさ。自分の思春期も思い出して、二重で嫌な気持ちになった。
柚月裕子の「蟻の菜園」では姉妹が虐待により人生を狂わされていたが(そういえばこの妹はギャンブルに狂っていた)、こちらは兄弟ということで、勝手に対比させたり。
優真がスマホやゲーム機を欲する理由が「現実を見なくてもいいから」というのは、もう酒ギャンブルにハマる思考そのままのような気がする。 この歳の子供の言うことではない。成長してもスマホの中の世界が自分の居場所になると信じ込んでおり、現実への諦めと無関心さが増幅していることがむなしい。
恵まれた家庭の子は性格が良くなるというが、本当にそうだと思う。
この兄弟の家庭環境で、この余裕のなさで、どのように人に愛を与えられるのか。ストレス発散の場所も、心の拠り所もない彼らが歪んでいくのは必然だろう。ゲームに夢中になることは必然だと思う。
優真は母親の存在に多大に影響を受けている。もっとも自分と近しい女性が、男性の言いなりで男の庇護下に置かれていないと生きていけない人物だったから、無意識のうちに男性優位の考えに染まっている。女性を自分の思いどおりに動かせると本気で信じているその思考が、彼の生い立ちゆえであることが、虐待の罪深さを際立たせている。
虐待の連鎖は続く。
優真と母親の思考は同じ。
一度は置かれた環境に辟易として飛び出すが、世間のルールも困難を乗り越える悦びも知らないので挫折し、また元の環境に焦がれる。
元の世界に舞い戻った母親とは違う世界を、優真が見れることを願う。
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一気読み
子どもの虐待、ネグレクト、、、
中学時代にそいうひといたなと思い出した。
人間としての社会成果を営む上での義務教育が軸になるのかと痛感。
スッキリしない結末だけど面白かったです。
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分厚い本でしたが、あっという間でした。
決して明るい話ではなく、リアリティあふれる虐待の描写や、ネグレクトによって社会性を身につけられず歪に育った主人公の混乱と葛藤は迫力があります。
彼を虐げていた母親やその彼氏、周囲の大人への怒りとともに、主人公が救われるよつに祈る気持ちと、自ら破滅へと進んでゆく主人公の「思い」がどのように成就するのかを見届けたいという気持ちの間で揺さぶられながらページをめくりました。
凄絶な体験をして育った彼の心は、想像もできないですし、大人の反応を見て「怒られないように」と行動する彼を導くことは困難も多いです。
本当に「救われる」日が果たして来るかどうかもわかりません。
それでも、人を救うのは打算のない「愛」と「信頼」なのだと思います。
ラストシーンでひとつ殻を破ることができたように見えるのが救いです。
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ネグレクトされた子供と、その親、保護された子供の里親の視点で展開。
痛ましいニュースを見て、親が親なら子も子というような結論づけに納得してしまっていたけれど、この本を読んで、じゃあその考えに当事者の子供はどう感じるのか?ということに思い至り、やるせない気持ちになりました。
ネグレクトされる優馬はかわいそうで、里親に引き取られる場面では読んでいてすごく嬉しくなるけれど、その後の展開は、どうしてそうなっちゃうの…すぎました。
問題のある家庭で生まれたとしても、後にそのつらい境遇を発信して、繰り返させまいとする人もいるので、なんて強い人なんだろうと思います。
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かなり分厚い本ですが、流石、桐野夏生さん。一気に読まされました。貧困、虐待、ネグレクト。この様は現実の事件を彷彿とさせました。先月読んだ「路上のX」以上に凄い。
そんな状況から救い出してくれたコンビニ店主ですが、それからも試練は続きます。
最後 砂に埋もれる犬にならずに済みそうな優真に希望を感じさせてくれたハッピーエンドに少しホッとしました。★5
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中高校生だった時代にチャレンジして挫折した桐野夏生さんの本をまた読んでみたいと思いこの本を手に取りました。
桐野夏生さんの描く世界はリアリティがすごく、特にこの本は読むのは辛いが止めることができないという感覚になりました。
主人公は幼い頃から虐待を受け続け、親からの愛情のないままに育った兄弟の兄で、ある時空腹から頼ったコンビニ店主によって兄のみが児童相談所に保護され、その後施設や里親と暮らし、中学校での生活を送っていきます。
虐待によって親からの愛情の欠落と、女性へのゆがんだ支配的な感情がある主人公ですが、中学校生活は自分の欲望の通りにはならず、感情が爆発し犯罪ととられる行動を当然のように行なっていき、里親とも衝突していきます。
主人公の言動は許されるものではないですが、本人ではどうにもならない血縁者の影響によるものも大きく、生まれた環境によって植え付けられる生き方について考えさせられる小説でした。
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重く苦しい話しながらも引き込まれるように一気に読んでしまった
虐待そしてネグレクト…劣悪な環境で幼少期を過ごした優真
生きるために必要なもので満たされても、ずっと飢え続けているのが悲しい
ここまでしたらいけない、という何となく暮らしていたら身に着くであろう日常生活のボーダーが全く分からないところにリアルを感じる
あまりに優真や弟の篤人の人生が残酷で読むのが少し辛い描写もあった
目加田夫婦は穴の開いたバケツに水を注ぎ続けているようなものだったけど、ラストで少し希望がみえるような終わり方だった
これ以上はきっと悪くならない、花梨にも危害は加えない気がする
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文章は読みやすいけど、内容は残酷過ぎる。優真君や亜紀は人の気持ちを想像することはできないんだなぁと思いながら読んでいた。他者の痛みや喜びを想像する力のはミラーニューロンによるものの他にやはり愛情を注がれることで育まれるのだろうか。なぜタイトルが「砂に埋もれる犬」なのか読み終えてもわからなかったが、ゴヤの絵の解説をみて腑に落ちた。篤人君はどうなってしまったのか気になった。日本は制度上の問題以外に独特の村社会、世間文化というのがあるので、優真君が友達を作っていくのは大変だと思うが、続編があるなら是非読みたい。
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環境って本当に大事なんだ…読んでいて切なくなる内容だった。優馬がどんどんエスカレートしていくのに恐怖を感じた。ラストの後はどうなるのか…気になる。希望が有るのか無いのか…モヤモヤの残る、しかし衝撃の結末。
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桐野夏生先生にしては珍しく最後の最後に(本当に)わずかに希望が見える終わり方であった。
日常に潜む闇やマイノリティに対する冷徹なまでの目線は先生の得意とするところであり、本作でも徹底されている。
大変読みやすく一気に読めるが、心はずっとざわついたまま、どの様なエンディングを迎えるのか予想もつかず、、
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実の母に虐待され、壮絶な育ち方をした少年優真。虐待される様子を垣間見ていたコンビニ店の夫婦が里親になってくれたが、彼は本当に幸せになれるのか?「育ちの悪い」人間の本性は?
母親もその親からの虐待を受けており、いわゆる負のスパイラルに陥った人間に救いはあるのか?
ハラハラと見守る様に読まされました。
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ネグレクトを描いた社会問題小説。
メインの視点は虐待児の優真、里親となるコンビニ店長の目加田それに毒親の亜紀と同級生の花梨が加わることで、いわゆる常識と非常識、普通と異常の考え方についてうまく描けていると思います。
桐野作品なので毒気に当たらないように気を付けつつも、どっぷり負の思考に嵌っていく自分がいて、自分も環境次第でどうなっていたかわからないと怖気てしまいました。
今の状態から抜け出せない、むしろどんどん埋まっていく感じは、本作のタイトルにもなったゴヤの絵と通じるものがあります。
ラストは救いが見えたようではあるが、目加田の言葉はそのまま作者の言葉のように思えました。
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自堕落で男を頼りに生きる母亜紀。その長男である優真は、飢えに苦しみコンビニに向かう。もう何日も母と彼氏は帰って来ず食事を口にしていない。
子供時代のもがきや自分ではどうにもならない環境や解決策が思い出され、苦しい。
飢えに苦しまなかったとしても、他者との比較で自分に感じる劣等感。思春期の辛さがまざまざと表現されていた。
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分厚い本だけど一気読みだった。
ネグレクトによる心の歪みが、思春期特有の衝動や鬱屈と相まり、闇深い危うさを持つ優真と、そんな優真に戸惑いながらも、家族の愛情を教え諭そうとする里親の目加田夫妻。
相容れない互いの葛藤に、綺麗事ではないリアリティさを感じた。
負の連鎖とはいえ、亜紀の子供に対する情の無さは悲しくなる。
えっ、ここで終わり⁈という唐突なラスト。何とか光が見えるのかな。
Posted by ブクログ
子どもは親を選べない。無責任に子どもを持った親が、虐待やネグレクトを繰り返す。かつて虐待を受けた人間は、何よりそれが嫌な事だとわかっていても同じことを自分もしてしまうと聞く。
主人公優真もそんな1人だが、優しい里親に出会えて、道を踏み外そうになりながらも、今後更生してくれるんじゃないかと期待したい。
負の連鎖は、仕方ないじゃなく、どこかで断ち切って欲しい。
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父親の違う弟と、母親の新しい男の家に転がり込んで住んでいる優真。引越してから小学校にも通っていない。風呂も入れず、食べ物もなくなり、コンビニへフラフラと行ってしまう。ネグレクト。
母に棄てられ、児童養護施設へ行き、コンビニで優しくしてもらった店長の家で暮らせるようになる。が……。他人との付き合い、コミュニケーション、距離のつめ方、がわからない。中学生思春期真っ只中になり、ますます自分の衝動を抑えられなくなる。
4歳と2歳の里親をしていた友人が「最近、ようやく我儘言うようになって、2人で喧嘩するようになって安心した。」と、言っていたことを思い出した。
喜怒哀楽、特に泣くことは大事だわ。号泣するとストレス発散できるしね。(関係ないか)
いつも、辛いけど読み応えありグサグサとくるストーリー。桐野夏生さま、書いていて辛くならないのでしょうか。
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桐野夏生の砂に埋もれる犬を読みました。
母親が男に捨てられまた別の男の所に転がり込んでいき、ネグレクトの環境で育てられた主人公が、小学生から中学生になり、思春期を迎え、葛藤していく姿が描かれています。
実際にこういう子供たちがいるのかと思うと切ないですね。
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重いストーリーで、ダークな気分になりながらも先が気になって一気読み。ネグレクトと暴力の中で生きていた優真が保護されて、穏やかに成長していけると思ったら…。優真の理解し難い思考に、普通の生活習慣も大切にされることも知らないということは、こういうことなのかと辛くなった。
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ネグレクト…よく耳にするこの言葉の意味するもの、人間の心が作られ、ねじれていく過程を痛烈に感じながら読んだ。
分厚い本だったけど、とにかく先が気になって仕方ない。気がついたら読み終わっていた。
ネグレクトされた少年、優真の信じられない境遇。そしてその後の彼が辿る、切なさと危うさに満ちた心の中。
親の存在というものは、こうまで深く長く、重たく子どもに影響を与えてしまうものなのか。
現実に起きている理解不能な犯罪も、作者の描く人間心理を当てはめたら、スッと納得してしまうような気さえした。だからと言って、犯罪を許してはいけないのだが。
物語は、本当に最後の一行まで目が離せない展開。
うわ、最悪の事態!とハラハラさせる中にも一瞬の光が見えたりして、読みごたえ満点。
受け入れる深さ、大きさ、優しさ…ここから新たな物語が始まるのだと感じさせるラストだった。
感涙。
Posted by ブクログ
切ない。
『砂に埋もれる犬』はスペインの画家・フランシスコ・デ・ゴヤが製作した絵画で、苦境における犬の孤独と無力さを表現している。
空を見上げ奇跡を待つ犬の姿が、ネグレクトや虐待を受けて育った主人公の少年と重なり胸が痛くなる。
登場人物は揃いも揃ってクズばかり。
少年の母も、またその母も皆、親としての自覚がない。
里親に愛情を向けられても、愛情の返し方が解らず、心の中にマグマを抱え、いつそれが爆発してもおかしくない危うさを秘めている少年が哀れだ。
彼の持つ悍ましさも歪みも全ては無責任に子を産み育児放棄した親の責任だ。
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桐野さん本は、分厚くてもあっという間に読み終わってします。今回も重めのストーリー。人間一人を育て上げるという事はとても責任のある仕事。親になるための国家資格をパスした人だけが子供を産んで育てることが出来るという未来が来ないとも限らない。今の日本にとって子は宝。優真も初めから目加田夫妻のような人たちに育てられていたら・・・全く違った人生を送っていたのは確か。生まれて10年かそこらで、一生を左右してしまう人格を形成するとしたら、負の連鎖を断ち切るためにも、子供を産んで育てることは誰にでもできる事としてはいけないのかもしれない。
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終始ヒリヒリしながらも読むのをやめられず、500頁をあっという間に読んでしまった。
虐待がもたらす影響は、一般的な常識では図り知れない。「母親だったら」「親子だったら」「兄弟だったら」「せっかく親切にしてもらったら」等の一般的な通説は一切通用しない世界があるということを突きつけられた。常識的と言われる感覚は人間の先天的なものではなく、そのように育つから身につくものなのだろう。
もし自分の近くに優真や優真の母のような人がいたら、どのような対応をするだろうか。きっと常識的な事を言いたくなり、彼らの姿にイラつくだろう。しかしそれは、自分の思考力や想像力の欠如を物語っていることに他ならない。自分の常識などは、多くの感じ方、考え方があるうちのほんの一つに過ぎないのだ。
虐待されて育つ子供の苦しみと想像し難い厳しい生活、それらがもたらす影響などを見事にあぶり出す作家の筆力に圧倒された。
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親から育児を放棄された少年を取り上げた内容だ。 桐野女史の取り上げる題材は、社会の隙間に隠れた問題を、登場人物の心理描写を巧みに綴って厳しく描く作風が目立つように思う。 今回も、主人公の少年の深層心理を的確に表現し、周りの人々の心の複雑な葛藤の微妙な変遷をも綴られていた。
一気に読んでしまった
ラストの章は展開が気になって一気に読み進めてしまった。親子とは、学校とは、人間社会のヒエラルキーとは、考えさせられる内容だった。今まで存在だけ知っていた存在がこの本のおかげで立体的に感じられたような気がする。最後の展開が急に動き出して、終わり方も唐突だったので★4。続編が出て欲しい。
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ものすごいリアリズム。一気に読み終えた。
虐待の連鎖、終わらない貧困、暴力。毒親、虐待系の小説は色々読んだけど、だからこうなるんだなという部分がえぐいほど仔細に、描かれている。
この子に必要だったのはただ、まっとうな親。
愛情と安心できる環境。絶対的な安心感。自己肯定感。人間としての尊厳。
衣食住、清潔さ、躾、他人との付き合い方、娯楽の消費の仕方、自己抑制力、我慢の心、義務教育…
産むべきでない親が存在し、不幸な子どもがまた不幸を生み出すという悲劇。いつも思うがこれ、誰か止められないの?性行為の果ての未来を想像できない人間ってなんなんだ?出産の制限を真剣に検討すべきでは?他害の危険がある人間が野放しになり再犯を繰り返す国って全然安全じゃなくないか?
凶悪犯罪者たちの生い立ち。
どうやったらそこまで堕落できるんだ、おかしな人間になるんだ、という疑問に対してはやはり親が原因、と言わざるを得ない。
本当に恐ろしい。
最後に里親の刺したところが腕で、そこにだけは救いがあった、、あと、粘着された級友の女の子に実害が及ばなくて(泥棒、覗き、侵入、泥棒未遂)まだよかった、もう憎しみや恨みを増幅させないでほしい、こうなるんじゃないかとは思ってたけど身を持って止めた義母が、自分もそうなると分かっていた感がある、でもそうなる前に、ナイフを買う前に打つ手がもう少しあったのでは、さすがに養子に甘すぎだろう、と思うなど
あとこういうケースではもっと根本的なメンタル面のケアや専門家のカウンセリングが必要なのでは、、
日本の福祉は表面的に整えられているだけで問題解決の視点がすっぽり抜け落ちていて、保育も介護も年金も絶望的になる 民間の人々の善意や自己犠牲で保てているようなもの
Posted by ブクログ
貧困やネグレクトを受けている子どもが描かれている。そんな子が、優しい里親に巡り会えて幸せな家庭を知り健やかに育っていく物語、、、なのかな思っていた自分。全く違った。でも、これがリアルなのかなとも思う。
最初はボリュームがあるなと思っていた本だけど、どんどん読み進められ、気づいた時にはもう数ページしか残っておらず、あ、コレハッピーエンドにならんなと察しました。
子どもはかわいい、と思いがちなのですが、実は子どものなかにある残虐性が垣間見えて背筋が冷たくなる。
Posted by ブクログ
育てられない親、虐待、苦しむ子ども、里親の葛藤、、、。読んでいて辛くて、何度も中断したけれど、引き戻されて最後まで読んだ。
フィクションとわかりつつも、あまりにも身近な感じがして、苦しかった。最後も含みを持たせた終わり方。やはり桐野夏生さんがすごいと思う。