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江戸を舞台に孤児たちが水戸光圀の隠密組織「拾人衆」として活躍する歴史小説風のエンタメ作品。
主人公は、父親を旗本奴に殺され、育ての親も明暦の大火で喪った挙句、件を教えてくれた恩人もなくしてしまう、六維了助。
拾人衆の仲間である鶴や禅問答を通じて少しずつ心を開いていく様子が温かい。また、いっぺんいっぺんに起承転結があり面白かった。
時代背景はもちろんのこと、史実の出来事や登場人物もたくさん登場しており、歴史を知っているとさらに楽しめる作品になっている。
私はそんなに知らなかったので、その感動に共感できず、残念だった。
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地獄と極楽は地続きなのかもしれない。大火事からの復興の最中で起こる事件とセリフから人物それぞれの人間味が感じられて、時代小説としてもさながらヒューマンドラマとしても面白い話だった。
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江戸時代と言っても風俗は初期から末期の間に変遷がある。よくある時代物は、割と後期の雰囲気が強い。
この作品は、水戸の徳川光圀が世子の時代が舞台。将軍もやっと4代。わりと初期に近い。
父親を理不尽に殺されて、芥集めなどで露命を繋ぎながら身を守るために強くなった了助。
拾人組、という隠密チームの予備軍的なところに拾われて、剣や禅などを教わり、そこに関わる出会いを通して、だんだんと人らしくなる了助の成長も楽しみ。
江戸を焼いた大火、その原因に陰謀が?といった謎の追求も面白い。
光圀と了助の関係性ついて、つい緊張感をもって読んでしまう。
了助は、光圀の隠す事実を知ったら、どう感じ、どう行動するのだろう。楽しみな反面、とても怖くもある。
続きが楽しみ。
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やっぱり、冲方丁は上手い。
この作家の作品を読むと、息が詰まり、鼻の奥がつんとし、目頭が熱くなり、心は踊る。
連作短編で、この一冊で終わらない。次の作品が単行本で出版されている。
早く文庫化して欲しい。でも二冊目でも物語は完結しないようだ。
困ったな~
面白かった。
光圀伝につながる要素が読んでてとても楽しかった。
まだ続きそうで、楽しみ。この時代での大きなシリーズになるなら、追っていきたい。
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本作は『光圀伝』とリンクする場面が多く、光圀伝ファンには大変興味深い作品。拾人衆という子供の特殊技能集団を使って江戸の事件を解決していくという設定も良い。一方で1話毎の事件がやや複雑すぎて渋滞を起こしている印象。「丹前風呂」がまさにそうで、人物も多く展開も裏の裏までひっくり返り、推理物としては良いと思うが、本作は設定が良いだけにもっと子供らと光圀に焦点を当ててほしかった。
光圀の過去の過ちへの「贖罪」というテーマが本作全体を貫いており、その点で作品に深みをもたらしている。次作で打ち明けることになるのであろうが互いにどう和解して折り合うのか非常に楽しみだ。
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光圀伝とは違う角度で水戸光圀とその周辺を描いている。戦乱が無い故に働き場所を無くした武士たちが鬱憤を晴らすために悪事に手を染めるという矛盾、武士としての存在価値が戦闘員から治安維持に移行する時代の難しさが、この時代を象徴しているのだろう。
孤独と復讐心に捉われ続ける了助の姿が愛おしく、また泰姫や左近さんと再び会えたことが嬉しいです。
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久々に侍劇らしい時代小説に出会う。
剣と心と、チャンバラと。光圀と了助の関係性も危険含みで、これからどうなるか、ハラハラする。敵役の設定も面白く、この時代の幕府が直面していただろう文治へのパラダイムシフトという課題、うねりを背景としている。続編も楽しみだ。
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光圀の冒険劇でありながら、実在の人物や史実を絡めていて物語に深みがあり、読み応え最高だった。
ラスボスと最後決着ついてないし、ヒロイン?お鳩との今後も気になるところなので続編に期待してしまう。
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表紙は緋色の地色に了助その人。
毬栗頭の少年 年は十三、四か。
真っ黒い羽織に、分厚い草鞋、
妙に迫力があった。
好い顔立ちをしていた。浮世絵の若衆じみている。
不(うてな)と刻まれた黒の木剣を肩にかけてる立姿。
別丁扉に蘇芳色で、人間三人を串刺しにした剣樹。
装画 井筒啓之 装丁 城井文平
天地明察・光國伝・剣樹抄 光國三部作?
私は、この本の光國が一番好き。
……黙る了助の前で、光國が屈み込んだ。
「逃げなくともよい。お前は手柄を立てたのだ。胸を張れ。立派な働きであったぞ」と
了助が、二度も父親を失ったので、またいなくなるのが嫌だ、一人でいい、と
頭を下げた。寺で習った礼儀作法以上に、育ててくれた者達から学んだ心構えが現れている。
「……だって、ここにいたら……」
急に込み上げてくるものがあり、
「おれ、一人じゃ生きてけなくなっちゃう」
「人を頼ったっていいんだぞ、了助」
この子は、不幸にも一人ぼっちになってしまったが、孤独じゃなかったと思いたい。
NHKで始まるのが、楽しみです。
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やっぱり冲方丁さんの作品は読ませる。特に序盤の物語に引き込む力の強さが半端ない。
主人公の了助を突き落としていく序盤が特に引き込まれました。父を理不尽に殺され、恩人を大火で喪う。了助を襲う運命の過酷さ、そして大事な人を喪っていく彼の悲しさの描写や場面に思わず感情が入ってしまいます。
そんな中で身体能力や独学で身につけた棒術を買われ、了助は幕府の隠密組織に誘われることに。ここで登場するのが水戸光圀。同著者の『光圀伝』を読んでいたので、ここでまた出会うとは意外な喜びでした。豪胆でしきたりに縛られない『光圀伝』の光圀らしさも健在。
こうして信頼できる大人や心の師、同年代の友人とも出会い徐々に運命が好転していくように見えた了助。しかし物語は平和に進まず、了助に再び起こる悲劇。ここの落差がまた心に響く。そして物語は江戸すべてを巻き込む陰謀につながっていきます。
了助のキャラクターであったり、心や技術が成長していく過程がよく描けていたと思います。また了助の敵役となる敵もキャラクターが濃くて物語として非常に映える。成長ものとしても、エンタメとしてもいい作品だったと思います。
ただ物語が一本の長編ではなく、途中から連作短編のような形式になったため、序盤から中盤にかけての話の盛り上がりが落ち着いてしまったことが少し残念でした。
また敵役との決着や、陰謀の決着がつかないまま次巻へ持ち越しとなってしまったのも少し拍子抜けしてしまいました。
最初からそういう作品だと思って読んでいたらまた違ったのだろうけど、個人的には了助が絶望、希望、また絶望へとたたき落とされ、その物語のテンションを保ったまま、敵と決着をつけるまで走り抜けてほしかったなあ、とも思ってしまいました。
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冲方さんのエンタメ色強めな時代小説とあって、俄然期待は高まります。キャラクター色の強さといい、話の派手さや見せ場の多さといい、確かに映像化をはっきり意識したお話ですね。
しかし、続きものとは知らなんだ……や、終盤辺りで、「あとこれだけのページで話がまとまるのか……?」と心配になり、最後の最後に「終わっ……た……?」と唖然としたので、すでに第二作が出版されていると知って安心しましたが(笑)
解説にもありましたが、江戸初期という時代の背景について非常に丹念に調べ込まれていて、お国事情から庶民の暮らしに至るまでが大変にリアルに描かれており、知らないことばかりで感心させられることしきりです。しかし、人死にや拷問といった凄絶なシーンや遺体や怪我の描写までリアルなのは……時々「うぐっ;」となりますが;
了助の確実な成長(というかスキル習得)が頼もしい一方、その純粋さ故に、シリーズが進めば避けては通れないだろう、光國の罪を知ってしまう展開が、想像するだけで今からつらい……。