感情タグBEST3
ちょいとちょいと
独特の絵のタッチで戦時中の玉ノ井周辺に生きる人達を描く傑作。少年きよしの目が大人たちの世界をまっすぐに見つめ、淡い恋やはかない出会いが黄昏とともに消えていく。キョーレツな母親がドブネズミを捕らえる絵があまりに印象的で最初読んだときは恐怖を感じた。空襲で一夜にして消えていった幻の街。飼い猫のタマがどこかで生きていたらいいな。
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この漫画はガロに連載されていた頃から生意気な当時9歳の小学生の私は読んでいた。
路地の入り組んだ寺島町には『ぬけられます」とか『ちかみち』の看板がところどころにある。未だによくわからない看板だが、袋小路があるからこんな看板があるのだと最近理解した。
似たような漫画に『三丁目の夕日』があるのだか、こちらはほのぼのとした戦後の昭和で高度経済成長で景気も上向いてきた頃だが、『寺島町奇譚』の昭和は戦前から戦中であり、これから日本はどうなるのだろうという暗い世相が漂っている。
この寺島町界隈は東京大空襲で焼け野原になりこの漫画は完結する反戦漫画なのだ。
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荷風とは違った玉の井の風景。スクリーントーンなんて使わずに描きこまれた線の繊細さが叙情をさそう。そっと寄り添ってきたものにしか描けないやさしさと懐かしさと、もう取り戻せない思い出への愛情が深く心にしみる。実際には悲しい女たちの記憶なのだろうが、少年の目を通すことで、こんなにも温かみが感じられるのか。
せりふにならない呟きをたった一つのモノで代言する表現力も秀逸。たぶん、今の歳でないと理解できない一冊。
最後に、「タマ、やすらかに・・・・」
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滝田ゆう氏が少年時代を過ごした戦前の東京都向島辺りの話。
描写がすごくリアルでタイムトリップしたみたいに
この時代の玉の井の土地柄を楽しめました。
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先日買った山本高樹さんのジオラマ作品集で紹介されていたので読みました。
与えられる説明が少なくて、その分読もうと思えば深く深く推察できるようなできないような、そんな作品です。すごく難しい。
あとわたし、滝田ゆうと小山ゆうを勘違いしてました。恥ずかしい!
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今をときめく東京スカイツリーの下には、ほんの50年くらい前までこんな街があったのだ。
今、日本の社会から闇が消えようとしている。
何でもかんでも綺麗にすれば良いのか、人間が不完全である以上、社会も不完全であることが実は健康なのではないか?
現代は社会を綺麗にしすぎた反面、人間が不健康になってしまった。
社会に闇があった時代の方が人間は健康だったんじゃないか。
そんなノスタルジーは記憶の中でバーチャルなものであればいいのだろうか?
そんな闇を明るく書いている漫画だと思う。
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戦前の色町“玉ノ井遊郭”での少年キヨシの身の回りを描いた漫画。
どこかのブログで作品評を読み、「ほう、東京大空襲のおはなしなんだ」と軽い気持ちで購入。
作品の舞台、玉ノ井が現・墨田区東向島あたりである事をまったく知らなかったので読んでびっくりした。
本書の内容や価値とはまったく関係ないところで、もっと早く読んでいれば・・・と悔やまれるばかりだった。
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滝田ゆうの代表作。寺島町というのは現在の東向島のあたりを指し、つまりは永井荷風の「墨東奇譚」でおなじみの「玉ノ井」のあった地域。この私娼窟に住む少年キヨシを主人公として、玉ノ井で生きる人々の姿を戦前・戦中の雰囲気とともに活写する。実際に玉ノ井で幼少期を過ごした作者の姿が、キヨシに反映されている。
もちろん、私娼窟であるから、多くの娼婦、それを買いにくる男たちも登場する。さらにはキヨシの両親は娼婦の仲介(一種の女衒?)をしていたりと、単にノスタルジーだけどの美しさを描くだけではない、私娼窟に必ずある醜さ悲しさも描き出す。
やがて戦争は激化し東京大空襲によって玉ノ井が焼け野原になるところで物語は終わる。玉ノ井は戦後も赤線地帯として残り、1958年の売春防止法施行まで私娼窟として栄えるわけだが、作者にとっての玉ノ井=寺島町はこの空襲をもって終わりを告げたのだろう。