ラディゲのレビュー一覧

  • 肉体の悪魔
    10代で書かれたものとは思えなかった。
    傍からみるとどうかしていると思うくらい強烈な感情を抱いている主人公の様子が淡々と綴られている。コントロールできない強い感情が愛情とは矛盾した行動をとらせるが、それが「僕」の未熟さや利己的な執着心を感じさせた。
    最後、ジャックと子どもの行く末に希望を見つけたよう...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    ストーリーは非道徳的であることは間違い無い。愛情に狂わされていると言うより10代の自分の感情に自分自身が驚きながらも冷静に女性を弄ぶ主人公(作者の実体験でもあるところがエグい)に嫌悪感を抱く人もいるだろう。そんな小説がなぜ古典として読み継がれるのか。文章の切れ味。感情の描写の巧みさ。戦時下という特別...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    人妻に恋をした少年の倒錯的かつ不安定になるほどの情熱に身を焦がしていく心理が見事で、愛しさだったり憎らしかったり、人間味溢れた情動に加えて不倫という禁忌的な関係にスリルさ・破滅しか待っていないであろう未来への不安・2人だけの特別で確かに幸せを感じられた時間など心にダイレクトアタックしてくるのがたまら...続きを読む
  • ドルジェル伯の舞踏会
    でぇえ…本当に20歳(執筆している間は10代)でこれを書いたの、すごいな……自分が20歳の頃なんて思い出したくもないから比較はしたくない(できない)が…「早熟」なんて言葉では括れない才能な気がする…

    解説も読みごたえあって面白かった、何となくコクトーと仲良かったみたいなイメージしかなかったからもう...続きを読む
  • ドルジェル伯の舞踏会
    久しぶりに素敵な小説に出会えました。
    登場人物の心理描写を1人の語り部が優れた洞察力でもって豊かに表している
    中でも三角関係という泥々な恋愛シーンは殆ど少なく、主人公は2人の夫婦を丸ごと愛しているように思える所から思いやりに溢れるシーンがたくさんあり、癒された。
    クライマックスのセリユーズ夫人にマオ...続きを読む
  • 肉体の悪魔

    フランス文学。
    第一次世界大戦の時期にも重なってくる約100年前にラディゲが著した。

    結末にショックを受ける。
    誰にとっても救われない淋しく切ない恋の物語。

    戦争というのは直接的なだけでなく、間接的にこんな不幸の爪痕も残すのか。

  • 肉体の悪魔
    少年の愛と性欲に翻弄され葛藤しながらもがく心理状態がすばらしく描写されている。そのなかに時に恐ろしい冷酷さも入ってきて、人間の底知れぬ怖いものも垣間見える。
    コクトーといいラディゲといいこの時期のフランス文学いいですね。
  • 肉体の悪魔
    お話の内容は単純でした。でも主人公の感情が痛いほど伝わってきて、その単純さをいい意味でぶち壊した。ラディゲが私と同じくらいの歳でこの小説を書いたなんてとても思えない…。深すぎます。

    こんなにすごい小説久しぶりに読んだ気がします。次はもう少し大人になってからまたこの本を手に取りたいです。
  • ドルジェル伯の舞踏会
    この小説において"誤解"は重要なキーワードになるのではないかと思った。
    他者への誤解、または自分自身の心の誤解。
    語り手の焦点が定まっていないため、全登場人物の内面を覗き見ることができるが、皆なんらかの誤解をしながら物語が進んでいく。
    一方で、自分自身の心を素直に読み取れている人物もいる。しかし、そ...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    青い麦と違い、あまりにも自堕落なストーリー。こちらは16歳の少年と19歳の人妻の物語だけど、なかなか16歳少年が狂っている。まさにフランス文学!あまりにも面白くいつもや読まない巻末の解説を読んでしまった。
    少年だけではなく、周りの家族もおかしくそんな馬鹿な!って思ったが、この物語、ほぼほぼラディゲの...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    15歳と19歳の人妻の不倫の話。現代でもそんな話があったらセンセーショナルなのに、第一次世界大戦の時代にはさらにセンセーショナルだっただろう。しかもこの小説は作者が16歳の頃に書き始めたという。私が忘れつつある青春の感情がたくさん詰まった本だなと思ったが、実際に体験している「今」を描いているのなら納...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    本文に描かれる恋愛観が、私のものととても似ていた。
    そのため、「僕」の持つ嫉妬心や残酷さが表出するたびに、私自身の本性を暴かれているような気分になった。
    ラディゲは約100年前のフランス人だというのに、現代の日本にも通じる「人を捉える力」を持っていたのだろう。
    男の内面に向き合える本。
  • 肉体の悪魔
    引用。

    僕はマルトにキスをした自分の大胆さに呆然としていたが、本当は、僕が彼女に顔を寄せたとき、僕の頭を抱いて唇にひき寄せたのはマルトのほうだった。彼女の両手が僕の首に絡みついていた。遭難者の手だってこれほど激しく絡みつくことはないだろう。彼女は僕に救助してもらいたいのか、それとも一緒に溺れてほし...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    フランス文学は読みにくくわかりにくい、という偏見がありました。
    コクトーとか、ちょっと苦手で。
    でも、この本はすごく読みやすく、共感もでき、面白かった。
    若いな、と。
    向こう見ずで、刹那的で、疑い方も愛し方もまっすぐで。
    おなかに子供ができたと知って、男は逃げ出すのかと思った。
    そうでないところに真...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    話の展開はそんなにないものの、独特で美しい比喩表現があちこちにあって言葉選びに感心してしまった。
    第一次世界大戦中で、夫不在の家が多かったとはいえ、不倫に対して双方の家族の対応が甘すぎる気もしたけれど、当時このようなことはよくあったのか。
    早熟だけど未熟な15歳の心理表現がすごい巧みだった。
  • 肉体の悪魔
    【本の内容】
    第一次大戦下のフランス。

    パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。

    二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。

    やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく…。

    [ 目次 ]


    [ P...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    悪魔の姿を忠実に描いている。愛し合っているはずなのに、男性になぜ裏切られたのかわからない人はスウェーデン人の娘のエピソードを読めば腑に落ちるだろう。
    ふと冷静になればマルタについてもまた悪魔を飼って命を投げ出したようなものかもしれない。
    人は無心で悪魔と共に生きる。
  • 肉体の悪魔
    三島が憧れていたと知り、手にとった。
    単純な筋ながら、引き込まれた。
    最後の一節が特に印象深い。

    ただ、新訳だからか、少し言葉が軽い感じがした。
  • 肉体の悪魔
    ラディゲって10代でこの小説を書き上げたんですよね。
    恐るべし…

    ストーリーライン自体は、ありふれたものなのですが。
    作者の深い洞察にかかると、とんでもない傑作に昇華してしまうんですね。

    「悲しいのは、命に別れを告げることではない。命に意味をあたえてくれるものと別れることだ。愛こそが命な...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    ありきたりな内容のはずなのに、結局引きこまれて最期まで読んでしまった。

    それが古典というものが持つ力なのかな、と思わされた。