もう着ない、捨てても良いはずなのに捨てられないTシャツ。それは、忘れられない想い出があるから。
Tシャツの写真とその想い出を本人たちがつづったもの。
都築さんは、編者であって、Tシャツにアイロンをかけ写真を撮る係りで。文章はTシャツの持ち主達の書いたものをそのまま。
もともとメールマガジンのもの
...続きを読むだったこともあり、人により文章の長さが異なる。
すっきり2ページの人もいれば、延々と私小説短編のような人も。人それぞれ。
このばらつきが、自分語りについての熱量の違いを表していて面白い。とにかくづっと語りたい人、さらっとTシャツの話だけしたい人。
基本的には皆、人生を語っている。Tシャツはその人生の中の一部に登場する。Tシャツの話が付けたしのような人もいればメインにTシャツの話する人もいる。
誰でも小説は書ける。それは自分の人生を書けばよい。リアルにドラマがあるから。
というのがそのまま当てはまったような本。
皆、都築さんの知り合いなので、なんだかキャラ立ちした人が多い。それぞれの人生にへぇーとグイグイ惹きこまれる。
匿名であるというのも良いのだろう。有名な人も混じっているはずだが、匿名なので、正直に赤裸々に記載できる。
読後、都築さんのまえがきを読み直し、読む前はあまり響かなかったフレーズだったが、読み終わると、この本のねらいを的確に表しているなと思ったフレーズがあるので、それを以下に示す。
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ほとんどすべてのファッションは、製品になったときが完成形だ。どんなデザイナーの、どんな値段の服を着ているかで、ひとは判断される。着る人間によって、服のデザイン自体がかっこよく、かっこわるくなったりすることは、おおむねあり得ない。かっこよかったり、かっこわるかったりするのは、服ではなく人間のほうだから。
Tシャツだけはちがう。居酒屋で飲んでいて、となりに「島人(しまんちゅ)」なんてデカデカと書かれた色褪せTシャツ着用オヤジが座ったとする。あ~めんどくさそうと思うが、そのうち言葉を交わすようになって、オヤジがぼそぼそ語ってくれる人生劇場にすっかり魅せられて、ちょっと涙ぐんだりしているうちに、ダサいはずのTシャツまでかっこよくみえてくる-そういう体験が、君にもないだろうか。
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人生の話はほとんどの人が面白かったが、Tシャツとしていいなーと思えたのは少数。(もともと好きなTシャツという話ではなく、恥ずかしくて、本人たちもほとんど着たことないTシャツが多いので当然なんだけど)
でも、良いな、譲ってほしいなと思ったのは
・TheCars
・勝新太郎
・WWFのパンダ
・シャネルNo5
・乱一世
・タケオキクチ
乱一世のRUNDMCのバッタものは本当にかっこよいと思った。「RUN1ST」って表すのね~と感激。