日銀で20年勤めた銀行マンが、国際通貨基金の頼みでルワンダの中央銀行総裁になり、国の経済を立て直すノンフィクション
ノンフィクションにもかかわらず、異世界ものの内政チート俺TUEEE小説に思えてくる不思議
大統領との会話とか、特にそう感じる
IMFからはルワンダの通貨の安定化を指示されていたが
...続きを読む、赴任してみると通貨の安定どころか、国家財政の赤字、コーヒーに依存した外貨獲得構造の崩壊、そもそも国に物がない、外国人が優遇されすぎていて国民には重税等々、本来の仕事よりも手を付けなければいけない事が満載
世界的にコーヒーが過剰供給されている中で、産業の中心はコーヒーが主流だが原産続き
内陸国のために輸出には輸送費がかかり、他地域よりも不利という状況
通貨の平価切下げに関して、関係者は自分の利益の事のみ考え、本質的な問題に関しては一切知識がない
二重為替相場制度という宗主国から押し付けられたような歪な制度の是正が必要だが、平価切下げだけで全てうまくいくようなものではない
国内の経済の安定のため、自らの職権をフルに活用して取り組む服部さんの自叙伝
平価切下げの何たるかがわからない大統領
外国人顧問からのアドバイスを聞いても、切り下げが本当にルワンダのためになるか分からない
「それは顧問が間違っています。達成すべき目的、つまり政治は、門番を屋根にのせることです。この方法が技術で、梯子で上がるか、飛び上がるか、ヘリコプターで上げるか、木に登って飛びうつるかは技術なのです。屋根に飛び上がれというのはすでに命令者が不可能な技術をとることを指定していることになるのです」
「通貨は空気みたいなものです。それがなくては人間は生きていられません。空気がよごれておれば人間は衰弱します。しかし空気をきれいにしても、人間の健康が回復するとはかぎりません。空気は人間に必要なものであっても、栄養ではなく、人間が生きるためにはさらに食物をとり水を飲むことが必要なのです。通貨改革をすることは空気をきれいにすることです。財政を均衡させることは生きていくに足る栄養をとることです。しかし健康を回復するためには、栄養の内容が重要になってきます。経済でいえば財政の均衡の内容とその基礎になっている経済条件が、国民の発展に合うようになっていなければならないのです」
経済に明るくない大統領へのわかりやすい説明に、同じく経済について知らない私も納得
まぁ、そんな事で信頼を得たがゆえに、大統領からは「全面的に信頼するし実行するのは自分なので、経済再建計画の立案は任せた」(意訳)と丸投げされるんですけどね
そして後には政治家達も「日本人が作ったから」という理由で納得して帰っていくというね
外国人に話を聞けば、有能な外国人が無能で怠惰なルワンダ人を導いてやっているという感覚
そして、給与で得た資金を二重相場を利用して増やして本国に送金しするというのがまかり通っている
そんな中、服部さんはルワンダの人と直接話をして実態を掴み始める
実際のところ、外国人たちは既存の制度に乗っかってバックにある資本で儲けていて
ルワンダ人も実は合理的な判断力を持っている
しかし、現在の安定しない経済事情がルワンダ人の自給的生活を余儀なくされているだけである事を認識する
ルワンダの恒久的発展には、ルワンダ人の手によるものでなければならないという信念
ルワンダ人商人に対する評価のズレも同様
ルワンダ人には商売はできないと言う外国人達の方が先が見えてなかったというエピソードもよい
インド人商人によるトラフィプロ(スイスの生協のようなもの)との値下げ競争は正になろうでありそうな展開だと思う
商業銀行、市中銀行との交渉も実になろうっぽい
何故、現在こうなっているのか?よりも、今後どうするのか?を重視することで、過去の事は追求しないので今後は協力しろという言葉が見え隠れ
何ならこっちでやってもいいんだぜとハッタリを効かせるあたりもね
服部さんの成果の一部
・二重為替相場制度の廃止
・平価切り下げ
・外国人優遇税制の是正
・市中銀行の誘致
・物価統制の廃止
・輸出用倉庫の建設
・必要な物資のための流通ルールの整備
・ルワンダ人商人の育成
・バス会社の設立援助
中には「はたして中銀行の総裁がすべき仕事なのか?」と疑問に思う事もあるけれども
国内の経済の安定化のためには必要な事だし、その影響力も説明されれば納得できる
困難な状況で、自分の任務をどう果たすかという使命を果たした人なんでしょうね
なので、正論だけではなく清濁併せ呑む側面もある
理論値や理想論を前提とするだけでなく、目的のためには目をつぶったり情報を公表しない必要性もあるのも理解できる
途上国の発展が遅い理由をこう分析している
富を持ったものが富の再生産ではなく消費に使うのと、既得権者による競争の阻害が最大の要因
国内で生産された富は外国人の手によって国外に流出する
昔の日本は貧乏な家の子でも勉強して一流大学に入学でき、一流の大学ほど学費が安い
現代社会において、明確な身分はないけれども、富めるものは次代も富みやすい構造になっているなぁと思い返す
「努力すれば幸福を手に入られれるようにする」ことが政治の正しい役割
現代の日本でも同じことが言えるはずなんですけどね