西暦2109年、アマチュア天文学者により発見された天体は、観測の結果、わずか8カ月後に地球に衝突することが判明する。
宇宙船ゴライアスの艦長ロバート・シンは天体の軌道を逸らすため、迫りくる死と破壊の女神-その天体の名はカーリーのもとへ向かうが…
最近では、惑星ニビルが何かと話題にあがってたり、過去
...続きを読むにもツングースカ大爆発やスイフト・タットル彗星など、小惑星の衝突は決して絵空事ではない。事実、地球に衝突する恐れのあるスペースデブリを観測する機構は実在する。その名称は「スペースガード」、当著でも登場し「宇宙のランデヴー」で初出した同名の計画に因んでいるのだ。
隕石衝突というモチーフは、その窮地に立たされた時に人間はどうするのか、その行動と心理に迫り人間の本質を探る作品になりやすいと思う。
もちろん当著でもその傾向は多少なりとも感じられたが、このモチーフを取り扱う他の作品-例えば「アルマゲドン」や「ディープインパクト」、「終末のフール」に比べると圧倒的にドラマ性がない。人間を描こうという気概はさらさら感じられなかった。
そう、これまでの著者の作品を読んできて感じることに、氏が描くのは人間ではなく、ただ宇宙の茫漠さであるということ。
当著では、徹底した第三者視点-まさに神の視点が貫かれている。ただ淡々と物語が進行していく様に、まるで他人事のような印象を受けた。
そしてその描き方でやはり感じられてしまうのは、人間が宇宙の茫漠さに対しては、甚だ無力だということだ。