簡単にいうと本のタイトルに要約される。新自由主義が見えないうちに私たちの生活に入り込んで、民主主義を破壊しているかという本。
それだけだと他にも同様の主張をする本は多そうだけど、この本は、アメリカの現状を具体的に説明するだけではなく、哲学思想のレベルでどうしてそうなっているのかということをフーコー
...続きを読むの「生政治の誕生」を基軸におきながら、解読していくところが面白いところ。
といっても、フーコーの議論は、70年代後半で、サッチャーやレーガンが政権をとる直前の話し。そこからすでに40年くらい経っているわけで、その後の変化を踏まえつつ、フーコーの議論の不十分な部分を補いつつ、現実を踏まえながら、理論的にも乗り越えていくところに著者の哲学者としての力量を感じる。
哲学的な本なので、読みやすいわけではなく、一応、「生政治の誕生」をはじめフーコーの講義録を何冊か読んだわたしもときどき迷路にはいっていく。
が、結論部分は、ほんとそうだよなと納得するものであった。
新自由主義は、もともとファシズム、全体主義に対抗するため、全体に対抗する個人を守るための思想であったのだが、経済だけでなく、政治、家庭、個人の人生が資本主義に飲み込まれて、結果的に個人が「人的資本」としてしか存在しないものになってしまう。そして、そこに皮肉なことに、違う形での全体主義を生み出す土壌ができてしまう。ということなんですね。