勉強?のために、小川未明をはじめて読むことになり、選んだ本がこれだった。
大判でムック本のような体裁。
表紙の色がとてもきれいで、ロマンチシズムとほのかな寂しさのある未明の世界を彩っている。
石井ゆかりさんの本で見た柊有花さんのイラストだ。
中にも挿絵がふんだんにあり、全てにルビが付き、オリジナルの
...続きを読む文面の上段に注釈が邪魔にならぬ程度に入る。
有名なものや代表作、転換期にあたるらしい小話などの全12話という構成と、後半には小川未明の紹介、新潟県上越市での子供時代からの写真と各話の解説あり。
とにかく丁寧に作られた本。
原文そのまま、しかし100年前の日本語のままでは子供には読んでもらえない、という事実を前に、可能なかぎり、小川未明の世界をそのまま今の子供に読んでほしいという熱意と工夫が感じられる。
とくに未明に思い入れの無い私にも楽しめる造りだ。
面白かったのは、山の上の木と雲の話、あめチョコ(=キャラメル)の天使。
国境で毎日顔を合わせる敵対国同士の二人の兵士の交流を描く『野薔薇』に似た物語はいろんな場所で見かける気がするが…。
後半の解説で、小川未明が戦争に協力的だったこと、その後の考え方の変遷にも触れてあり、未明を美化しすぎない姿勢に好感がもてた。
同じシリーズで新美南吉、宮沢賢治などもあるらしい。