今年のベスト3に入る一冊。
若き動物生態学者夫婦が、カラハリ砂漠の動物たちを追って過ごした7年にも亘る日々の記録。分厚い本だが、動物が好きなら夢中で読めるだろう。
日中50℃にもなる荒野で熱中症と闘いながら、アナログな機器と身体を使って動物を探し、書いて記録し、来るかわからない補助金を待つ。でも好き
...続きを読むなことをやる人たちってなんでこんなに幸せそうなんだろう。
そしてまた、野生の動物が垣間見せてくれる、自然のバランスの凄さ。王者ライオンとの絆、悪者イメージの強いハイエナの驚くべき社会的行動、妻になつく小鳥たち。飢えの最中にあってもコロニーの幼獣に餌を運ぶ雄ハイエナの行為を「運ぶ者が自分の血を絶やさないためにおこなう投資にすぎない」と説明しているが、利他的な愛情によるものと著者が見ていることは明らかで、胸を打つ。
共著であり、夫側のダイナミックな筆致も楽しいが、妻側の丁寧な描写は、この人がのちに『ザリガニの鳴くところ』をものすディーリア・オーエンズであることを考えると超納得だ。
すでにこのとき、旱魃と乱開発でふたりが守ってきたキャンプの地はだんだんズタズタになっていく。冒頭の、獲物を追って疾走するチーターが人の作った柵に激突死する場面から心を裂かれる思いだが、これは70年代の記録であり、すでに描かれた自然も動物も失われて久しいのだろうが、今からでもできることがあるならば、何かしなくてはと強く考えたのでした。