日経新聞朝刊1面のコラム「春秋」執筆15年の記者が、自ら書いた「春秋」を引きながら、体験した呻吟やコラムについてのよもやま話を語る。
一般人が知れない話として、下記の事項について、特に新鮮な興味を感じた。
1 時事批評や社会評論としての社説が「大文字」のオピニオンなら、コラムはそこからこぼれ落ちたも
...続きを読むのを拾い上げる「小文字」のオピニオン。
「理」で「説く」のではなく、「情」を入れて「語る」
2 正岡子規、薄田泣菫、藤沢周平など、過去には意外な新聞コラムの名手がいた。
3 途中で▼、▲、◆などの記号を入れることで、接続詞を省略でき、改行なしで文を連ねていける。
4 風刺、アイロニー(反語)、品のよい揶揄といった形での批判精神がコラムの命である。
5 人間の心を揺さぶる「ユーモアとペーソス」を描くことがコラムでいちばん難しい。
6 同じような語尾がないか、漢字、カタカナ用語が使われ過ぎていないかなど、「推敲」することと、時には「捨てる覚悟」が必要。
ただ、期待していた実践的な文章術の本としての記述に関しては、短く伝える、語彙力が勝負、語尾に変化をつける、辞書を引くなど、ありきたりで内容が乏しく感じ、もの足りなかった。
第5章「社会の中のコラム」については、時代情勢の反映や人の心に「刺さる」コラムという視点から書かれており、重みや含蓄があった。