創作に関する世界最古のハウツー本。本書はアリストテレスが、古代ギリシア悲劇を定義したうえで、ホメロスやギリシア悲劇を分析して、そこから詩作においてポイントとなる要素を抽出する。特に第6章「悲劇とは、真面目の行為の、それも一定の大きさを持ちながら完結した行為の模倣であり、作品の部分ごとに別々の種類の
...続きを読む快く響く言葉を用いて、叙述して伝えるのではなく演じる仕方により、憐れみと怖れを通じ、そうした諸感情からカタルシス(浄化)をなし遂げるものである」(p50)は、詩学に限らず、あらゆるストーリーに当てはまる普遍的な要素ではないだろうか。人間とは生まれた時代に関わらず、感情を持つ生き物であり、それを揺さぶる出来事に出くわすと、良い意味でも悪い意味でも影響を受ける。そのため、心を動かすための要素を、所々散りばめないといけない。このように、本書は人間の本質的な要素を突いたものだといえる。また解説では、プラトンとアリストテレスでは、人間の感情に対して意見の相違があることも興味深い。プラトンは喜劇や悲劇が、人間を理性で物事を捉えられないというのに対して、アリストテレスは感情によって理性を滅ぼすことはないという。