書店で見掛けて興味を覚え、入手して紐解き始めた。本書の各章を実に興味深く読み進めた。出逢って善かったと思える一冊だ。
「国鉄」というモノが「分割民営化」で「JR」になってから既に三十数年なので、「全然知らない…」という人達の世代も広くなっていると思う。が、「国鉄」は日本国内で非常に大きな存在感を示し
...続きを読むていて、後にも先にも「日本最大の企業」であったと考えられる。そしてその「国鉄」には、栄枯盛衰の様々な経過が在った。
本書では実に広範な話題について、非常に興味深く綴られている。
「国鉄」という略称でよく知られる「日本国有鉄道」という“公社”の体制が登場する以前の、昭和10年代の戦時体制下の色々な要因で疲弊した鉄道の様から、草創期の「国鉄」の状況等に関する話題が在った。
東海道新幹線が実現して行った経過、その大きな“達成”と、裏側で生じていた“問題”という話題が在った。
蒸気機関車が退場して行くことになる中でのディーゼル機関車やディーゼルカーの開発に纏わるような話題が在った。
「国鉄」の現場の様子、労使関係、複数在った“労使交渉”の主体になっていた組合、労使の対立ということに留まらず組合間の対立も存在していたというような話題が在った。
貨物輸送に関して、国内の輸送需要の中で圧倒的な部分を占めていた時代の後、ドンドンと占める部分が小さくなってしまって行ったというような話題が在った。
「国鉄」の部内に見受けられた様々な問題と、経営再建の難航、「分割民営化」への経過というような話題が在った。
「分割民営化」の後に登場したJRに関すること、更に昨今のJRの状況やという話題が在って、加えて鉄道の未来に関する提言も在った。
大雑把に振り返って、これだけの豊富な話題で、実に読み応えが在った。
著者は、所謂“キャリア”として国鉄に入社し、技術者として車輌開発に携わり、やがて様々な現場の管理職を務めるようになって行ったという方だ。国鉄の最末期には、首都圏本部長を務めていたが、部内の事情によって九州総局長に異動し、JR九州の準備に携わった。そしてJR九州の初代社長を務めたという。
こういうような著者で、鉄道の歴史に纏わる著作や、鉄道に関連する提言等も多くしている方であるという。本書に関しては「現場での様々な見聞や経験が在る者のみが語り得る…」というような内容も多く交っていて、実に興味深かった。
そして本書では、「国鉄」が「巨大に過ぎる硬直化した機構」であるが故に、色々と不具合が生じ、不具合を修正し悪くなり、現場の荒廃というような情況も見受けられた旨が語られる。こういうことを通じて「1940年代後半から最近までの我が国の社会?」という問題提起もしているかもしれないと思いながら読み進めていた。
鉄道の未来に関する提言ということでは、JR各社の中で“問題”が殊更に大きいように見受けられるJR北海道に関する事柄、北海道での鉄道による物流の可能性に関する話題が興味深かった。
また、鉄道の未来に関して、著者は「新幹線を物流に生かす」ということが必要であると強調していた。
非常に読み応えが在って興味深い一冊なので、広く御薦めしたい。