19世紀前半に出現したこの兵学の書は、その筋ではかなり重要な古典的名著とみなされているようだ。
当時の戦争における戦力は主に歩兵、騎兵、砲兵であり、マキャヴェリの時代より少し進み、「近代戦」になってきていた。
本書でのクラウゼヴィッツの、分析・記述はかなり詳細である。ひとつひとつの概念の規定をも慎重
...続きを読むに行おうと細心の注意が払われており、まるで哲学者の著作のようだ。
とはいえ、「国家とは何か」「国家の戦略のために見知らぬ他者を殺し殺されるとはどういうことか」というようなラジカルな問いにまでは到達しないので、やはり哲学書ではない。
戦争を政治の延長であり、政治の一部でもあるとするクラウゼヴィッツの見方はクールだ。
兵学そのものに関しては私は何も知らない人間なので、今回はクラウゼヴィッツの論の運び方を見て楽しむくらいだったが、地上戦に関しては、ある程度、本書はまだ軍事学上参考とすべき点があるのだろうか?
本書はナポレオンの時代に書かれたが、その後、テクノロジーは急速に発展し、第1・2次世界大戦では爆撃機が飛び、戦車が走り、さらには核兵器の出現と、戦争の様相は明らかに新次元に突入した。
さらにその後の現在は、無人機等のリモート・コントロールや各種のレーダーなどなど、最新のテクノロジーが駆使される場面ではクラウゼヴィッツなど大昔の話でしかないだろう。
ヨーロッパ大陸では国家が互いに近接しあい、繰り返される侵略や戦争を経て国が消滅したり新しく生まれたりという歴史が作られてきた。従って、戦争が「必然的な、回避不能なものである」という認識はヨーロッパの伝統であり、その辺が、日本人だと感覚が異なる。たいして資源も持たないこの島国の歴史には、他国との争闘が近代に至るまで、本格的には出現しないのだからムリもない。
さてクラウゼヴィッツよりも断然新しい、20世紀以降の兵学(軍事学)の古典的名著ってなにかないだろうか。でも最新の情況については、明かされることはないのか。そのへんのミリオタくんが詳しいのだろう。