星3つをつけた読後感は
「野阿 梓ってこういう作風だっけ?」
というもの。
「SFというのはこの場合、トランスセクシュアル(性転換)ネタと超能力か」
と、通読後に納得はするが、すごくエキサイティングという訳でもなかった。
性行為シーンの淫語や行為描写は、官能小説のお手本(BLにしては心理描写少な目
...続きを読む、用語的にはカタカナ語より比喩表現の和語が中心で、男性向け官能小説から参照してきたような感じ)のようなものであるため、ギャップを感じる。
また、公調や各種武器/現実的に使用可能な情報技術がでてくるのはいいが、説明が冗長。読者が皆、ミリタリー趣味がある訳じゃないとしても、『この情報は話の本筋にものすごく意味のある情報』なのかどうか。
『エンタメとして』考えた時、きちんと情報を取捨選択した結果とは言い難い。
『こういう設定を作ってこう動かしました』をト書きで淡々とつづられている印象がぬぐえない。
例を挙げると、33ページ14-16行
「竜也は、最初は気にも留めなかったそのことに、朱雀への気持ちが本気になってきた今、心のすみに、それがじんわりと重いわだかまりとなってゆくのを、どうしようもなかった。」
帝王学を身に着けた十四歳のゴスロリ少女は、油断ならない取引相手。そいう設定、にもかかわらず、テイザーガンで撃たれたら『少女は、すっかり負けこんでしまい、弱々しく応えた。(210ページ16-17行)』
なろう小説にありがちな文で、他の表現方法は無かったのか?という疑問が残る。
「社会の周縁部に生きるタフガイと、誰かの庇護なしには生きられない繊細美少年」のペアで、濃い目のエロと、恐るべき十代は利用できるものを全て利用し、大人たちから自分の欲しいモノを全て手に入れることができました。おわり。
って要約できたら面白くないだろぉーーーー!
BL寄り作品だけどBLじゃねえよおーーーーー!
ぜんっぜんキャラに親しめねえーーーー!
三人称文体で『なんといっても、彼自身が朱雀に惚れていたのだ。(53ページ10-11行)』とか書かれても「はぁそうですか」としか思えないんだってばーーー!!!
評者はBLにはBLの、読者と作者のお約束ともいうべき文体、コンテキストがあると信じているので、本作をBL作品とは評価しない。BLとしてだされたら、
「ほう、草稿としては面白いですね、修正加筆された本番が楽しみです」
としか言いようがないので、星もつけられない。
一般文芸、SFカテゴリなら、読めないレベルではないが、エキサイティングとも思えなかった(何がいけないのかは上記参照)ため、星3としたい。