青春時代のほろ苦さなんてものではない、町民のまとわりつくような視線が全編に根付いて、この物語に重くのしかかっている。
“キエワラ”このオーストラリアの小さな田舎町は、干ばつが続き人々はギリギリの生活をしている。
それは、全てが乾ききっていて、何かのきっかけさえあれば燃えてなくなってしまうほど。
...続きを読む小さなコミュニティでは、良くも悪くもみんな知り合いで、人付き合いに何かと気を使うのは、どこの国でも同じ。
過去の出来事がもとで逃げ出すようにして町を出た主人公アーロン・フォークは、古い友人の葬儀のために町に帰って来たが、その死に疑問を持つものから調査を頼まれる。
しかし町の人は、何十年も前のことでいまだにフォークを苦々しい目で見る。
彼の十代の出来事は、苦く、苦しく、セピア色の思い出とはほど遠かった。
デニス・ルヘインやジョン・ハートが描く、アメリカ中・西部のいなか町の物語とよく似ている。
どちらも、イギリス植民地から移民によって成り立った国だからなのか?
もう少し「オーストラリア」であってほしかったと思う。