著者の放送大学での講義をもとにした本です。イギリス経験論と功利主義の倫理学、そしてプラグマティズムと分析哲学のおおまかな流れが解説されており、さらにロールズの正義論やベイズ主義についても簡潔な紹介がおこなわれています。
著者は、「功利主義と分析哲学」というテーマで科目の担当を依頼されたときに戸惑い
...続きを読むを感じながらも、やがて「経験論哲学」という共通の源泉をもつことや、ともに「計量化」を志向していることに気づき、これらの観点を軸に本書のもとになった科目をおこなったと語っています。
著者は「経験的」ということを、「努力し試みることの中において」という意味で理解することができるという見かたを打ち出しています。「経験的に知る」とは、なにかを努力して追求していくことにほかならず、さらにその行為主体である「パーソン」が背景にあるテーマとして浮かびあがってくると論じています。
とりあつかわれている範囲が広いため、個々の哲学者たちの議論についてはそれほど多くの内容が解説されているわけではありませんが、「経験的」というテーマを軸にして現代へとつながっていく哲学上の重要なテーマが示されており、興味深く読むことができました。