香月夕花のレビュー一覧

  • あの光
    読みごたえがあった1冊だった。開運とお掃除と聞いたら、私もはまるかもと思った。脚光を浴びてやめられなくなる様子や、自己啓発セミナーに、はまっていく感じが巧みに描かれていた。高岡紅が
    本当に求めていたものが手に入ったときに、後戻りができなくなっていたのは、なんとも言えない気持ちになった。全てを失くして...続きを読む
  • あの光
    現代人は、日常的に生存そのものを脅かされることがおよそなくなった。一方で、自身の生に意味を与えようと「承認欲求」を日々増殖させている。

    本作は、この厄介な「承認欲求」を鍵に、信じる側、信じさせる側双方の思いの相乗効果が作り上げた小さな虚構の王国の盛衰記である。

    ハウスクリーニング会社から独立をは...続きを読む
  • やわらかな足で人魚は
    5つの短編から構成された本。
    どの話も良かったが、自分は特に4話目の水に立つ人がお気に入り。
    来るはずのない人を、全国各地の聖堂を巡りながら待つという、一見めちゃくちゃな女性教師の心境に強く共感した。
    香月夕花さんの本は、時に社会が抱える闇に鋭く切り込み、時に人間の心情を深く考察し、時に心を揺さぶる...続きを読む
  • 昨日壊れはじめた世界で
    凄くいい。優しくて悲しくて切なくてあったかくて。少しずつ溶けていく。人は色んな面がある多面体なんだなぁ
  • やわらかな足で人魚は
    主人公の絶望に勝手にフタをしない書き手。つづられた物語は容赦がない。血の温もりで、硬直した心を溶かすように。

    「傷つけられたことへの補償はないのだ。たぶん、永遠に。悲しみは悲しみのまま残り、それでも人は生きていく。」
  • 昨日壊れはじめた世界で
    この現実でしかありえなかった5人の現実。それは耐え忍ぶには痛すぎて、忘れるには近すぎた。

    どちらも、どれも道なのだ。

    最後の一文は、あまりに痛切。
  • やわらかな足で人魚は
    初読みの香月さん♬とても良かった〜!
    5編の短編集です。
    なんとなく柔らかくて優しいイメージを勝手に抱いてたけど、描いてたイメージとはちょっと違ってわりとビターな印象でした。
    それぞれの主人公の「悲しみ」を描いた作品。
    香月さんの描く文章が凄く好きでした。
    直接的に感情に訴えかけてくる様な感じではな...続きを読む
  • 見えない星に耳を澄ませて
    セラピーに来た人々の隠した感情に共鳴してしまう主人公が、感情に引っ張られすぎてしまうのでは?という危うさが感じられてしまった。
    陰のある三上先生よりカフェの七海さんのほうがセラピストっぽい。
  • 昨日壊れはじめた世界で
    マンションの最上階での小さな冒険の過去を共有するクラスメート5人の生きざまを、5つの短編の中で、美しい情景描写を交えて、繊細な筆致で色鮮やかに描き出している。
    ロスジェネ世代の彼・彼女らの人生は、決して平坦な道のりではなく、今も、離婚、子供との別居、離職、依存症、介護など様々な問題に直面し、自分との...続きを読む
  • 昨日壊れはじめた世界で
    5人それぞれの人物の思いや考えの描写が鋭い。
    5人の子供達はそれぞれが,辛い経験をしながら大人になっていく。その1つ1つが重く,性格もみんな違うのだけど,その5人の経験のどこかしらが自分の経験の断片に重なる部分があり,とても考えさせられた。
    誰かにとって最良の人が、他の誰かにとっては最悪の人であるこ...続きを読む
  • あの光
    風水をベースに掃除をする事により開運を期待するサロンを運営していく物語。

    序盤は、自己啓発本の様な感じでストーリーが進む。
    この小説では、根拠が無いが掃除すると良い事が訪れる事をネタとして起業する。
    でも、少しは根拠となるものがある様な気がしている。
    掃除に集中する事でネガティブな思考を抑制し、考...続きを読む
  • 昨日壊れはじめた世界で
    美しい言葉に綴られた
    切なさ、後悔、喜びといった
    幾多の感情が心にすっと収まる感覚。

    本や小説は登場人物や物語を通して
    非日常を体験し、自らとは異なる世界に
    連れていってくれる。

    一方で、この小説は
    これまで表現できなかった
    感情の機微を捉え、
    「自分の想いを言葉にしてくれている」
    という安心感...続きを読む
  • 昨日壊れはじめた世界で
    ジャケ買いしたと言っていた夫の積読が妙に気になり、本によばれて読みはじめました。

    半歩くらい不思議な雰囲気が漂う世界。
    回収されなく、正直残念な部分もありますが、
    それをも感じさせない程の
    美しい言葉たちが散りばめられています。


    【細工箱の奥に隠した宝石を取り出すような】
    思いをよせる相手のこ...続きを読む
  • あの光
    「開運お掃除サービスの栄光と転落」というきな臭さに惹かれて一気読み。ハウスクリーニング業者で地道に働いていた女性が独立を決意。掃除すればもれなく開運すると銘打ちオンラインサロンも開設。徐々に話題になりやがてカリスマ化するものの栄光は長く続かなかった。案の定、という展開だが面白かった。詭弁だらけだが掃...続きを読む
  • あの光
    お掃除の達人としてオンラインセミナーを開き、会員の共感と承認欲求を煽る啓発活動を行い徐々に強大化してく組織。
    いつしか教祖様的なポジションとなり、運気があがると噂される様々なメソッドという名の屁理屈のジャングルジムを構築。
    その先に待っているものは・・・。膨れ上がる組織が暴走したら後はもう滅びる一方...続きを読む
  • あの光
    掃除をする事が開運につながるというサロンとセミナーの栄枯盛衰物語。

    人が何かを祈り縋る事は、簡単にバカにできることではない。周りから見て胡散臭くとも、救われている本人にとっては大切な居場所だと思う。認められたい、何かと繋がっていたいと誰しもが思う。
    しかし、嘘が大きくなり、その事を詐欺に近い商売に...続きを読む
  • あの光
    自業自得とも思える転落劇に終始胸がざわついた。

    主人公はハウスクリーニング会社を辞め「開運お掃除サービス」を立ち上げた高岡紅。
    母親からの愛情欠乏を埋めるかのように居場所を求め、承認欲求はエスカレートしていく。

    事業が成功していくに連れ、当初抱いていた「誰かの為に」という志は消え去り、縋って来る...続きを読む
  • やわらかな足で人魚は
    切ない短編集。

    人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあったー「やわらかな足で人魚は」

    文章・言葉使いが好き。
  • 昨日壊れはじめた世界で
    “世界が壊れる”と言うとなんだかんだ大掛かりなことに聞こえるけど、実際は些細な行動や言動で簡単に自分の世界が壊れてしまったり、元々壊れていたりするんだな……って思ったよ。
    ちなみに私は律子が好きですね。
  • やわらかな足で人魚は
    "はじめまして"の香月夕花さんは、とても印象深かった。 この文章、好みです。

    離婚・貧困・不登校・犯罪など、愛不在の悲しい子どもたち・大人たち。心やすらげる居場所がない。
    そんな哀しみをまとった人々の物語。

    でも、哀しいだけの物語ではない。温かさがある。
    だが、物語は、憐れみなどいらないとばかり...続きを読む