香月夕花のレビュー一覧
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5つの短編から構成された本。
どの話も良かったが、自分は特に4話目の水に立つ人がお気に入り。
来るはずのない人を、全国各地の聖堂を巡りながら待つという、一見めちゃくちゃな女性教師の心境に強く共感した。
香月夕花さんの本は、時に社会が抱える闇に鋭く切り込み、時に人間の心情を深く考察し、時に心を揺さぶる...続きを読むPosted by ブクログ -
主人公の絶望に勝手にフタをしない書き手。つづられた物語は容赦がない。血の温もりで、硬直した心を溶かすように。
「傷つけられたことへの補償はないのだ。たぶん、永遠に。悲しみは悲しみのまま残り、それでも人は生きていく。」Posted by ブクログ -
この現実でしかありえなかった5人の現実。それは耐え忍ぶには痛すぎて、忘れるには近すぎた。
どちらも、どれも道なのだ。
最後の一文は、あまりに痛切。Posted by ブクログ -
初読みの香月さん♬とても良かった〜!
5編の短編集です。
なんとなく柔らかくて優しいイメージを勝手に抱いてたけど、描いてたイメージとはちょっと違ってわりとビターな印象でした。
それぞれの主人公の「悲しみ」を描いた作品。
香月さんの描く文章が凄く好きでした。
直接的に感情に訴えかけてくる様な感じではな...続きを読むPosted by ブクログ -
セラピーに来た人々の隠した感情に共鳴してしまう主人公が、感情に引っ張られすぎてしまうのでは?という危うさが感じられてしまった。
陰のある三上先生よりカフェの七海さんのほうがセラピストっぽい。Posted by ブクログ -
マンションの最上階での小さな冒険の過去を共有するクラスメート5人の生きざまを、5つの短編の中で、美しい情景描写を交えて、繊細な筆致で色鮮やかに描き出している。
ロスジェネ世代の彼・彼女らの人生は、決して平坦な道のりではなく、今も、離婚、子供との別居、離職、依存症、介護など様々な問題に直面し、自分との...続きを読むPosted by ブクログ -
5人それぞれの人物の思いや考えの描写が鋭い。
5人の子供達はそれぞれが,辛い経験をしながら大人になっていく。その1つ1つが重く,性格もみんな違うのだけど,その5人の経験のどこかしらが自分の経験の断片に重なる部分があり,とても考えさせられた。
誰かにとって最良の人が、他の誰かにとっては最悪の人であるこ...続きを読むPosted by ブクログ -
美しい言葉に綴られた
切なさ、後悔、喜びといった
幾多の感情が心にすっと収まる感覚。
本や小説は登場人物や物語を通して
非日常を体験し、自らとは異なる世界に
連れていってくれる。
一方で、この小説は
これまで表現できなかった
感情の機微を捉え、
「自分の想いを言葉にしてくれている」
という安心感...続きを読むPosted by ブクログ -
ジャケ買いしたと言っていた夫の積読が妙に気になり、本によばれて読みはじめました。
半歩くらい不思議な雰囲気が漂う世界。
回収されなく、正直残念な部分もありますが、
それをも感じさせない程の
美しい言葉たちが散りばめられています。
【細工箱の奥に隠した宝石を取り出すような】
思いをよせる相手のこ...続きを読むPosted by ブクログ -
切ない短編集。
人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあったー「やわらかな足で人魚は」
文章・言葉使いが好き。Posted by ブクログ -
“世界が壊れる”と言うとなんだかんだ大掛かりなことに聞こえるけど、実際は些細な行動や言動で簡単に自分の世界が壊れてしまったり、元々壊れていたりするんだな……って思ったよ。
ちなみに私は律子が好きですね。Posted by ブクログ -
"はじめまして"の香月夕花さんは、とても印象深かった。 この文章、好みです。
離婚・貧困・不登校・犯罪など、愛不在の悲しい子どもたち・大人たち。心やすらげる居場所がない。
そんな哀しみをまとった人々の物語。
でも、哀しいだけの物語ではない。温かさがある。
だが、物語は、憐れみなどいらないとばかり...続きを読むPosted by ブクログ