思いもよらず、良かった。というと、大変失礼だが、作者のことを全く知らず、たまたま手に取った作品。
築地と思われる魚河岸で生きる人々の様々な人生模様を、短編の連作として描いた作品。短編として一つ一つは独立しているが、全体としてのまとまりがある。ところどころの伏線も上手いし、前話で登場した人物の別の一面
...続きを読むが他の短編で覗けるという味わい深いつくり。
鰹節商店の二階で人目を忍ぶように生きる男が、毎朝の早朝の散歩でマグロ中卸問屋のフクちゃんと知り合いになる馴れ初めは微笑ましく秀逸。
完成度の高い作品。直木賞受賞にも、深く頷く。