中井正文のレビュー一覧

  • アメリカ
    カフカの「孤独の3部作」最後の作品である。

    ドイツから追い出された純朴な青年が、アメリカを放浪するロマン小説。落ち着く先が見つかっても、不条理に追い出され続ける青年。しかし、それでも青年は希望を捨てなかった。

    青年が未知の土地を冒険する小説はいくらでもあるだろうが、この作品は異質だ。未完なのであ...続きを読む
  • アメリカ
    賢い美少年カールは、年増の召使を孕ませ親に追い出される。
    そこから彼は、不条理の道を歩み続ける。

    大国アメリカへ到着した船上でのやりとり、自分の大切なスーツケースを他人に預けたまま、他人の厄介事に首を出す。
    彼の自信は若さに由来するものだろうか。
    ごったがえす人の波、赤の他人の問題に巻き込まれ、こ...続きを読む
  • アメリカ
    話は両親によって本国から追い出されたカール・ロスマン氏の新天地アメリカ放浪記ですが、ロスマンはトラブルを起こして次々に新たな目的地を目指します。第一章の火夫が短篇集にも収録されていることから分る通り、それぞれの章が自己完結しているので、分量の割には長さを感じさせない構成になっています。未完のせいもあ...続きを読む
  • アメリカ
    フランツ・カフカは、127年前の1883年7月3日にオーストリア=ハンガリー帝国(現在のチェコ)のプラハに生まれて、86年前の1924年6月3日に40歳で亡くなった小説家。

    ところで、フランツ・ファノンじゃなかったフランツ・カフカって、どこかエリック・サティに似ているとお思いになりませんか?

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  • アメリカ
    カフカにしては軽妙でわかりやすい描写と明るい展開で物語が進んでいく

    他と毛色が違いすぎる感があるからはっきりと言い切れないがカフカがカフカの文章力を越えたような仕上がり


    筋に乗せられてわくわくしちゃうんだけど「オクラホマ劇場」の不穏な桃源郷的設定と、「ニーガー」という偽名で潜んでいた孤独に...続きを読む
  • アメリカ
    審判、城に続く、孤独三部作。
    審判や城では、手探りで何も見えない大きな機構や仕組みに取り残された、閉鎖空間に閉じ込められた叫びが感じられた。その一方で、このアメリカは、そういうところから離れてどこかのびのびとしているような気がする。
    どちらかと言えば、偶然に偶然が重なって、システムの中を漂流し続けな...続きを読む
  • アメリカ
    カフカを読むとどうにも気持ちが重暗くなってしまう。こういう不条理を客観的に読むにはそれなりの素質が必要な気がする。自分が経験しているような辛さがある。この作品は比較的明るいのだけど、そのぶん不条理な出来事の落差が激しい。
  • アメリカ
    喜劇的な要素をふんだんに含み、現実的なストーリーで、一見カフカっぽくない作品でした。
    しかし、無経験な十六歳の少年が、異国の地アメリカで戸惑い、つまづきながらも必死で生活を確立させようとする姿は、現代の混沌とした社会で自身を確立しなければならない私たちの苦悩と共鳴します。

    学生時代にこの作品を読む...続きを読む
  • アメリカ
    主人公は、訳あって単身アメリカに送られたカール・ロスマンというドイツ人少年。ロスマンが新天地アメリカで波乱万丈の人生を歩き始める物語である。カフカの長編のうちで最もストーリーらしいストーリーを展開する。とはいえ、紋切り型のサクセスストーリーでは勿論ない。ロスマンの新生活は、不合理だが支離滅裂でもない...続きを読む
  • アメリカ
    カタチやイレモノはカフカの「文法」そのものなのですが、色調が他の作品とはちょっと違う。比較的明るめじゃないかな。冒険小説的な。未完の三部作、これを最後に読んだのは良かったのかも。
    また、未完の著作とされていますが、私にはそうでもないように感じられました。こういう終わり方もアリだなあ。結論に重きを置く...続きを読む