「学級」がどのように成立してきたか、を教育以外の業界の事物とのアナロジーも含めつつ解説する一冊。
「学級」の原点を、モニトリアルシステム(助教法)にあるとし、それがイギリスの階級社会・宗教対立の狭間でどのように変遷していったのかを最初に解説する。
次に、日本に持ち込まれた教育制度が、日本の農村社会
...続きを読むになじむように変化し、今の(教員への)共感を無意識に強いる(ように教員をも強いられる)学級が成立してきた経緯を解説する。
最後に学級で起こる問題を、個々の問題(例えば、被害者/加害者の心の問題)としてとらえる見方には限界がある、とし、「学級」という仕組みそのものが引き起こす問題もある、という見方で諸問題に対処しなければならないのではないか、と提唱する。
イギリスで「学級」が成立した経緯に、宗教的教育とその諸団体の駆け引きが深く関わっていることを書いていることは興味深い。通り一遍の教育史・教育原理の書籍だと、政教分離を意識しなければならない性質上、その辺はあまり触れたがらない。しかし、そこが分かってこそ、さまざまな人物・システムの相関がわかりやすくなる点もある。また、「学級」をパックツアーのと相違によって解説しようとするなど、よく分かっているものとのアナロジー(類推)によってわかりやすく解説してくれる。
その辺も含め「興味はあるが基本知識がない」人には向いている本。一方で「無駄なく必要な知識のみを覚えたい」人には無駄の多い一冊とも言える。個人的には好きなスタイルの本だけど…たぶん、好みは分かれる一冊。
ちなみにあくまで「歴史」本。モニトリアルシステムについてはかなり詳しく解説してくれているものの、関連人物含めそこまで詳しくは書いてくれない。関連するテキストを脇に置いて読むと、いろいろとはかどる一冊かもしれない。
学校の諸問題に問題意識があって、なおかつ理屈抜きで「学校が好きだった」というのははばかられる人には勧められる一冊。自分自身がいかに「クラスメイト」としてボンクラだったのか、と再認識できた一冊でした。