とても面白い。
映画『チ・ン・ピ・ラ』の、「そろそろ俺らも先のこと考えなくちゃいけねえのかなあ」って考えたり考えなかったりするあたりの、今このとき版と言ってもいい感じの本。
ルックが上から数えたほうが早い人なのに、思うようにはなってない。
体験入店してすぐ辞めるくらいの胆力が有るから、競争そのもの
...続きを読むへの順応性も高いのに上手く行かなかったり上手く行ったりの一進一退。
なぜそうなるのか自分なりの答えは、
厳しい競争社会に身を置き、体験するにしても厳しい競争のある場所を覗きに行ってるからだろう。
ふつうに学生をして、会社に就職するのでも競争はあるけれど
水商売ほどのルックに対する厳しいジャッジはないし、コミュニケーション能力を問われ続けたりはしない。
学生だったらもっと自然に学内で恋愛があって極端なことは起きない。
筆者の身を置くところや、トライする業種がことさら厳しいのもあるし、筆者は競争を好んでいるのかもしれない。
配信者になっての苦労話も生々しいし面白い。
そして筆者より上手くやって毎月二十万以上も稼げたような人でも数ヶ月で辞めるほど過酷だったことも付記してる。
配信も水商売同様に感情労働がきつくてやっていくのは難しいらしい。
ハプバーの感想も正直さを感じる。
恋愛観やここ10年間くらいでの恋愛観の変化や、レズ風俗での(客として)体験からの変化。
AV撮影でのADで参加など、体験して筆者の考えに微震が入るところがとても興味深かった。
これをもとに小説にするとかなりの力作になるはず。
元カレや、彼氏ともなんとも言い難い関係の人や、友達のこと。
一つ一つを描いたら絶対面白い。
基本的に体験ルポだからか、事実を列挙してるところに本当は書きにくい心の揺れとか欲しかったけれど手に入らなかったものとか色々あったろうに、そこら辺が淡白。
筆者の同世代の女性の共感をよぶ小説のタネがここにある。
スペックが高くても上には上がいるし、スペックが低いと嘆いてしまう。
自分の気持ちをしっかり持って、コントロール出来ないとしんどいし、
何より運が無いとやっていけない。
運が自分に向くようにするには、日々の仕事や私的な出来事で、上手くいってるという実感の中で始めて幸せに転がり始めるのではないだろうか。
そういうことも考えさせる本でした。
派手さや奇を衒ってるように感じるところの先にある、人の気持ちを考えると
何とも言えない読後感があります。