(注意)このレビューはネタバレを含んでいるかもです。ごめんなさい。
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本書はあちこちに知的なしかけがしてある。英語のアナグラムを説明している
...続きを読むあたりは、本職の英文学教授っぽいし、戦中に弾圧された「白神教」のカリスマ教祖「出門鬼三郎」=デーモン「鬼」三郎=大本教の出口王仁三郎というシャレや蛇神が地の(あるいは地に囚われた)神であるという設定もまた宗教学っぽい。それ以外にも、多佳子と英子の対決場面(というか多佳子の妄想かも知れない場面)での心理描写とかよいとおもた。
何といっても圧巻なのは、最後の数行である。読者は、ずっと主人公ギーの顔の後ろにいて、彼の心の独白までも全て知り尽くしていたはずなのに、最後の数行で、彼が狂気の闇へ落ちようとしているのに気づいて、はっと我に返るのである。いつのまにか感情移入していた対象が異形であることに気づいたときの恐怖、いや自らも異形の身に変化せんとしていたことに気づいたときの恐怖だろうか。ともかく読者自身が狂気に誘い込まれるところだったのだ。
探偵小説だと思い込んで読んでいたので、その意味ではかなり不満も残るのだが、それでもミステリアスな展開はうまい。あまりこういった小説は読まないので、評価基準が低すぎるのかもしれないが、ともかくおもしろかったかな。