深沢七郎のレビュー一覧

  • みちのくの人形たち

    どこか小島信夫の作品に近いエネルギーを感じた。
    悪文とも言えるバラバラな文章に独特の引力があり魅力的。
    土着の気味悪さや暗さで統一感ある作品集、とても好み。
    表題作と『秘儀』は名作。
  • 言わなければよかったのに日記
    多分、最初に読んだのは中学生の頃だと思う。
    きょう、奈良の「ふうせんかずら」で発見して嬉しくなったので、即決で入手した。

    冒頭の正宗白鳥先生との思い出が、とにかく面白い。
    名前が白鳥だけど庭に池がないとか、同時代に活躍中の作家について「その人は今生きている人ですか」と尋ねて先生に教わったりといろい...続きを読む
  • 書かなければよかったのに日記
    また中公文庫で深沢七郎の本が出たから買った。こうやって出てくるものをどんどん買っていくと重複も多く、この随筆集の巻頭「流浪の手記」は結構まえに読んだちくま文庫『深沢七郎コレクション 転』にも入っていた。
     しかし読み終えてからやっと気づいたのだった。深沢七郎の随筆は完全に「話体」であり、読んでいる最...続きを読む
  • 笛吹川
    戦国時代、山梨県甲府の近くに流れる笛吹川の川沿いに住み、武田家に仕えた百姓の話。時代小説は町民やお役人、武士を描いてるモノばかり読んできた中で、この小説は昔の貧しい百姓の暮らしぶり、人の生き死にが淡々と描かれていると思う。死生観も大きく変わったような気がする。昔々人の死は自然の一部であった頃のお話し...続きを読む
  • 庶民烈伝
    すぐれた小説の条件とは何だろう。
    まず、「機械仕掛けの神」を作品に仕掛けるようではダメだ、と言ってみよう。
    その神は、いろんなことを解決したり先送りしてしまったりするのだが、
    所詮、作者の作った機械による仕掛けにすぎないのだ。
    これに対して、深沢七郎の小説は、「神が仕掛けられた機械」そのものである。...続きを読む
  • 深沢七郎コレクション 流
    深沢七郎のちくま文庫場版アンソロジー、この巻は小説集。先日の中公文庫と「みちのくの人形たち」だけが重複している。
    民俗学的なようでいて民俗学でない、虚構の土着性がおもしろい「東北の神武たち」など。
    すこぶる長い「千秋楽」が印象的だった。
    役者の弟子である青年が、初めて舞台に立つことになったと思ったら...続きを読む
  • 深沢七郎コレクション 転
    深沢七郎コレクション 転 (ちく 深沢七郎の文章にはものすごいオーラというか、魂というか、とにかくものすごいものがうごめいていると思った。むしろそのうごめいているものがそのまま文章になって跳ねたり跳んだりぐったりしたりしているような・・・。サラッとした「うまい文章」とは真逆の性質だと思った。この本は...続きを読む
  • 笛吹川
    全体としては淡々としているのに、ぐんぐん読み進んでしまう異様な面白さが凄い!最後のほうの、映像が目に浮かぶような迫力も、物凄い!解説が町田康ですが、思い返せば町田康の『告白』などは、この作品(というか深沢七郎)へのオマージュ(というか影響)のようにも思えてきます。『笛吹川』、素晴らしく面白くて物凄く...続きを読む
  • 笛吹川
    待望の文庫化。しかも解説は町田康。私の祖母は甲州弁のネイティブスピーカーだったのだが、それを聞いて育ったおかげでこの本の語りにすんなりと入っていけた。祖母には全く感謝することろがなかったが、その点だけは感謝したい。
  • 作家と犬
    犬も猫も好きだけどちょっとだけ犬に軍配が上がるかつて犬と暮らしていた私ですので、どのエッセイも愉しく、胸に沁みました。

    好きな作家さんも多く、以前に読んだことがある文にまた出会えて嬉しい。

    このシリーズは他にも猫、珈琲、酒、おやつ…とまだまだあるようなので少しずつ読みたいな。

    以下好きなエッセ...続きを読む
  • 庶民烈伝

    んー、面白い。
    別に唸る様な仕掛けも美しい表現も綺麗な締まりないが、表題通りの、当時の“庶民”の苛烈な生活がつらつらと描かれている。
    序章の、“庶民”の定義を巡った作者と知人とのちょっとおバカっぽい掛け合いも、気が利いていて良い滑走路になっていた。
  • 笛吹川

    分かりづらく凄いものを読んでしまった感。
    表題の笛吹川に沿って、武将と農民の六代に渡る盛衰を淡々と見せられてしまう。
    町田康氏の「どうにもならない」というあとがき題が印象的。読後は呆然。
  • 笛吹川
    戦国武田氏の支配する甲州が舞台である。この作品はいわゆる戦国物と違い、農民が主人公で、戦乱の中で虫けらのごとく殺されて行ったある一族六代の物語だ。兵農分離が進んでいない甲州では農民が戦に出ており、主家との確執もあって、半蔵の一家では殺された者も多い。しかし、物語の終焉には武田家の滅亡とともに取り立て...続きを読む
  • 作家と犬
    昭和の文豪や現代の人気作家による、犬をめぐる、エッセイ、詩、漫画など48編。さすがに稀代の作家たち。どれも読ませる名文ばかり。
  • 笛吹川
    最後の数十ページの怒涛のような、しかし妙に静かな一族の死に様に圧倒される。
    作品全体を通して誰も彼も死んでいき、特にその悲哀も語られないままなので、このまま終わるのかしらと思っていたら、息子たちの「先祖代々お屋形様にお世話になったのに」発言である。ゾッとした。なんと人間は矛盾した生き物であることか。...続きを読む
  • 笛吹川
    このころの農民の命の重さが悲しい。親方様に従うのが悲しい。はらはらしながらよんだ。
    お爺が粗相をして殺されたシーンが辛かった。足を怪我して手当じゃなく。汚したとして殺された。 
    最後まで褒美なんて貰えるはずもないものをきたいしてて。辛い。

    すきなのはおけい。おけいがこどもが生まれない理由を責められ...続きを読む
  • P+D BOOKS 人間滅亡の唄
    深沢七郎のエッセイ集。思いを迸らせるわけでもなく、斜に構えるでもなく、自然と出てきたという趣の言葉が並ぶが、その言葉が不思議で奇妙な味を持っている。「屁は生理作用で胎内に発生して放出されるもので、人間が生まれることも屁と同じように生理作用で母親の胎内に発生して放出されるのだと思う。私は一九一四年一月...続きを読む
  • 笛吹川
    何かの書評で読んで興味を持って購入したのですが、想像以上にのめり込んで一気に読めました。 ただし、文庫で1,400円は高い・・・
  • 笛吹川
    戦国時代を舞台にした小説といえば、通常は戦国大名やその家臣の活躍を描いた歴史小説が挙げられるであろう。本作もまた武田信玄軍の一員を主人公にしているのだが、しかしその身分は武士ではなく、みずから軍に加わった農民である。これだけでもめずらしい設定であるといえるが、しかし本作の特異な点を挙げるとすれば、そ...続きを読む
  • 笛吹川
    甲斐の武田三代の時代が舞台。例えれば川が海へ流れ入るごとくに、戦で無為に命を奪われ続ける反復。戦にかかわる理由は個々にあれ、好むも呪うも等し並みにどうしようもなく巻き込まれる人間を、おそろしく無慈悲に描く。