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「あたしは、突然この世にあらわれた。そこは病院だった」。限りなく人間に近いが、性的に未分化で染色体が不安定な某。名前も記憶もお金もないため、医師の協力のもと、絵に親しむ女子高生、性欲旺盛な男子高生、生真面目な教職員と変化し、演じ分けていく。自信を得た某は病院を脱走、そして仲間に出会う――。愛と未来をめぐる破格の長編小説。
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Posted by ブクログ
「誰でもない者」という独特な設定なのに、なぜかすっと受け入れられた。一つ感じたのは、じゃあ私は空っぽではなくちゃんと私であれているのかなということ。もっと私自身と寄り添ってみよう。
ああ、川上弘美だ。 「神様」とか「蛇を踏む」とか、久しぶりに思い出した感じがあった。 たぶん、私たちはふだん「わたし」というものをそれほど意識して生きてはいない。 少なくとも私はそんなに「わたし」について考えることはしない(思春期の頃はもっと「わたし」について考えていたように思う)。 なぜなら「わ...続きを読むたし」について考えることはとっても面倒くさいことだからだ(この言い方が適当でなければ、非常に時間がかかるとかって言い換えてもいい)。 10代のころは時間だけはあったから「わたし」について考えても差し障りがなかったけれど、社会人になってしまったいま「わたし」について考えていたら、日々の生活に支障をきたすこと請け合いだ。だから私はふだん「わたし」ついて考えることはしない。 ではなぜ「わたし」について考えることはそんなに時間を必要とするのか? その答えは簡単だと思う。それは「わたし」というのがとても曖昧なものだからだろう。それは本書『某』で繰り返し書かれていることだ(そう私は解釈する)。 主人公(人じゃないらしいけれど)の〈わたし〉が「わたし」にたどり着くまでにいったい何年の歳月と、何人の「自分」と、何種類の〈変化〉を体験することが必要であったことか。 「わたし」とはそれくらい曖昧で、とてつもない広がりをもったものなのだということが、『某』を読んでいるとひしひしと伝わってくる。 私の中で川上弘美さんは曖昧なものをなんとか言語化していくという作家さんだ。そしてその曖昧なものの、一つの主要なテーマとして「わたし」があるように感じている。 初期の作品では〈無人称〉が一つのスタイルであったように思う。この『某』では人称がころころと変わっていく。そうした移ろいゆくもの、はっきりしないもののなかで、藁ほどでもよいので確かなものをつかみ取ろうとする作業。 そんな私の川上弘美さんのイメージを、より強く意識させるような作品、それがこの『某』だった。それが今回の感想。
限りなく人間に近いが、性的にも未分化で染色体も不安定で、不死の生命体。 彼らはいつだって、何にでもなれる。性別も年齢も職業も。何かになって、人間と一緒に生活する。 章が変わるごとに姿を変える某。 感情があること、考えること、誰かを愛すること、生活をすること、何かを楽しいと思うこと、人の気持ちを理解す...続きを読むるということ、自立するということ、子どもを産むということについて、家族というものの存在について。 某という存在は、人間の形を取った人間ではない存在であるが、人間と共に人間社会で生活していくので、人間が生きていく上で大切なことを、某はひとつひとつ、学んでゆく。 生きるって、生きていくって、こういうことだよな。 読みながらそう実感する。 毎日を当たり前のように過ごしていると、さらさらと抜け落ちていってしまう何か。 それらに、一つ一つ丁寧に向き合っていく感触があった。 そして、「生きること」を考えると同時に、「死」についても考えることになる。 P390「何にでもなれ、どこにでも存在できるということは、生きていないのと同じこと」でもあるからだ。 作中では、「死」について考える場面で「安楽死」に触れている部分がある。 解説P429「安楽死が合法化されると、それを選ぶ人はだんだんと減っていったらしい。いつでも死ねるなら今でなくてもいい」 死をのぞむ人って、少なからず存在する。さらに日本は自殺者が多いことで有名である。この国で安楽死が合法化されたとしたらどうなってしまうんだろう、安楽死が合法化されている国と同じ現象が起こるのだろうか、なんてことを考えた。 そして、三島由紀夫(奇しくも「死をのぞんだ人」である)が答えを出せなかった、「誰かを好きになること」と「性欲」がイコールなのか問題と、「一緒にいて落ち着く」イコール「好き」ってことなのか問題。 そういうことにぶち当たって、考える某。 わたしも一緒になって考える。 愛ってなんだ。 家族ってなんだ。 そして、『夏物語』に引き続き、またしても産む産まない問題にぶち当たる。 どうしてわたしは「子どもをほしくない」と思う自分を、欠陥品だと思って責めてしまうんだろう。 そして、倫理観を問われる、なぜと問われると大人が詰まる質問3連発。 ①なぜ人を殺してはいけないの? ②なぜ身内とセックスをしてはいけないの? ③なぜ学校へ行かないといけないの? 「生きていくためにはこうしないと」「こうするしかない」と思って、せかせかと生活しているうちに忘れ去られ、しかし答えが出せていない「なぜ」。つまり、この作品は、レビューの冒頭で書かせてもらった「毎日を当たり前のように過ごしていると、さらさらと抜け落ちていく何か」について、優しく問いかけてくれる作品なのである。 P179「『家族は、変わってゆくから、つかまえておくのは、難しい』。家族、という言葉の意味が、みんな違うのだなと、私は思った」 P205「優しい声は、優しい気持ちとは無関係に出すことができる。私はたしかに、何かに対して怒りを感じていたのだ。香川さんに対してではない。では、何に?」 P225「『うん、生きるのは、苦しいことなんだよ』」 P241「『愛してるって、どんな感じ?』『一緒に年とって…やがては死んでいってもいいような感じ…かなあ』」 P264「『体を使役することは、けっこう楽しかった。でも、体の表面と体の中のつながりが、うまくわかってないみたい、あたしいまだに』」 P347「生きることは、日々刻々と変わってゆくこと」 自分の中にある倫理観を揺さぶられ、掘り下げられた作品として、かなり印象に残った作品。 平野啓一郎さんの『空白を満たしなさい』を彷彿とさせる。真正面からではなく、少し違った角度から、「生きる」ということに向き合わせてくれる。 そして実は、川上弘美さん初読みでした…!
いつもながら設定が斬新でした。特に最終章の光と言う物語がいい。ひかりは曖昧に生きていたけれど、みのりを恋する事を選ぶ事で変化が出来なくり恋と言う感情を知り、曖昧な性格に彩りが生まれたところが好き。ひかりは恋をして自分らしく生きたんだと思う。
人間ではない人間の形をした生き物を通して見る人間は、滑稽って、不思議で、おもしろい。 「愛する」とは何かを考えさせられたし、そこに行き着いた某の成長や姿に心を打たれました。
ほかの誰でもない自分として存在するってどういうこと?とか、人を愛するってどういうこと?とか突き詰めて考えたくなる小説。ラストシーンに対する自分の解釈が固められずモヤモヤしているのは、まだその二つの問いに対する自分なりの考えを持ててないからなのかな?と思ったり。
何とも奇怪な話を考え付く才能はどこから生まれるのか、読みながら考えたが未だに結論が得られない.丹羽はるかが野田春眠になり、山中文夫、神谷マリ、ラモーナ、片山冬樹、ひかりと変身していくなかで、キャバクラで働いたり、カナダに移住したり、幼児になったり、なんだこりゃ! 蔵先生と水沢看護師が唯一まともな人と...続きを読む思ったが、芦田先生、津田さん、アルファ、シグマ、高橋さん、鈴木さん、等々ユニークな登場人物をチェックするのも大変だった.人間の生き方を上下左右に振り回しても、生き長らえられるのだと感じた.
読むと自分も某になった感じ。 突然物語の中にほっぽり出されて、 終わりも突然に迎える。 思えば中学や高校に入学する度、新しいコミュニティに入る度、「変化」をしてきたなぁと思う。 だから、彼らの気持ちがわからないわけでもない。 「成長」するようになるまで、物事に関して、良いも悪いも好き嫌いもなく...続きを読む、淡々と事が進んでいく。 でも、やっぱりわからない。共感できない部分もたくさん。ええそれどんな感じ?もっと教えてくれ!と思う。 アイデンティティ以外にも、家族とか、愛とか、生きるとか死ぬとか、たくさんたくさん考えたいワードが出てきた。 面白かった!
何者かに変化できる生命体が主人公。この設定が本当なのか、精神世界のものなのか、それとも本人が錯覚しているだけなのか。それを探りながら読み進めていくので、どんな展開になるんだろうと気になってページが進んだ。なかなかハマったってことだ。 何者にもなれる存在は、何者でもないということ。そんな中途半端な存在...続きを読むの彼らがアイデンティティを確立しようとする話にも思えたし、彼らを通して人間の人生や愛について考えさせる話でもあった。なかなか面白い手法。 意外と驚かされたのが人間社会の変化の描き方。なるほど、そんなミスリードもあるのか。人には勧めづらいが、印象には残った。
「多重人格」「サイコパス、ソシオパス」を題材にした小説は幾つか読んだが それらとは似て非なるモノ。 前半(と言っても9割がた)何が主題なのか分からないまま それでも小気味良い文体で読み進む。 最後になってやっと '他者との共感とは?' '他者を愛するとは?' ...続きを読む'何故 生きるのか?' が語られ(もちろん 結論は分からない) 切ない物語。
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某
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