暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

1,925円 (税込)

9pt

広島の軍港・宇品に置かれた、陸軍船舶司令部。
船員や工員、軍属を含め30万人に及ぶ巨大な部隊で、1000隻以上の大型輸送船を有し、兵隊を戦地へ運ぶだけでなく、補給と兵站を一手に担い、「暁部隊」の名前で親しまれた。
宇品港を多数の船舶が埋め尽くしただけでなく、司令部の周辺には兵器を生産する工場や倉庫が林立し、鉄道の線路が引かれて日々物資が行きかった。いわば、日本軍の心臓部だったのである。
日清戦争時、陸軍運輸通信部として小所帯で発足した組織は、戦線の拡大に伴い膨張に膨張を重ね、「船舶の神」と言われた名司令官によってさらに強化された。
とくに昭和7年の第一次上海事変では鮮やかな上陸作戦を成功させ、「近代上陸戦の嚆矢」として世界的に注目された。
しかし太平洋戦争開戦の1年半前、宇品を率いた「船舶の神」は志なかばで退役を余儀なくされる。

昭和16年、日本軍の真珠湾攻撃によって始まった太平洋戦争は、広大な太平洋から南アジアまでを戦域とする「補給の戦争」となった。
膨大な量の船舶を建造し、大量の兵士や物資を続々と戦線に送り込んだアメリカ軍に対し、日本の参謀本部では輸送や兵站を一段下に見る風潮があった。
その象徴となったのが、ソロモン諸島・ガダルカナルの戦いである。
アメリカ軍は大量の兵員、物資を島に送り込む一方、ガダルカナルに向かう日本の輸送船に狙いを定め、的確に沈めた。
対する日本軍は、兵器はおろか満足に糧秣さえ届けることができず、取り残された兵士は極端な餓えに苦しみ、ガダルカナルは餓える島=「餓島」となった。

そして、昭和20年8月6日。
悲劇に見舞われた広島の街で、いちはやく罹災者救助に奔走したのは、補給を任務とする宇品の暁部隊だった――。
軍都・広島の軍港・宇品の50年を、3人の司令官の生きざまを軸に描き出す、圧巻のスケールと人間ドラマ。
多数の名作ノンフィクションを発表してきた著者渾身の新たなる傑作。

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暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2023年01月24日

    島国日本にとって、当時、外国を攻めるには当然ながら船で行くしかない。

    日清戦争、日露戦争など戦争にまつわる本を色々読んできて、兵站の重要性を認識していたつもりだが、その裏にたくさんの苦労があったことを知った。

    まさか、海軍でなく、陸軍が海上輸送を行なっていたとは、ほとんど認識が無かった。しかも、...続きを読む

    1

    Posted by ブクログ 2022年07月05日

    宇品、と聞いても全くピンとこなかったが、昔広島の宇品に陸軍の船舶輸送司令部があり、陸軍の各種派兵の海上輸送を担ったという。このことは、ヒロシマに原爆が落とされた理由のひとつになっている。

    本書は、「船舶の神」田尻中将の歩みとともに発展した陸軍船舶輸送について、膨大な史料をもとに構成された大変な労作...続きを読む

    1

    Posted by ブクログ 2022年02月02日

    広島市の宇品にあった陸軍船舶司令部を中心に、太平洋戦争における日本の船舶輸送について分析、研究した結果をまとめた本。研究が精緻で、歴代の陸軍船舶司令官に焦点を当て、精緻な研究がなされている。大戦直前まで司令官であった田尻昌次の自叙伝や回想録、大戦中を司令部で過ごした篠原優が纏めた始末記などを中心に、...続きを読む

    1

    Posted by ブクログ 2021年12月27日

     なぜ広島に原爆が落とされなければならなかったのか? この疑問を突き詰めことから著者の取材は始まった。

     かつて廣島は軍都だった。日清戦争を機に廣島に大本営が置かれた。それはよく知られた事実。

     大本営から少し南、宇品の港から「陸軍」の兵士が大陸に送り込まれた。日清戦争から日露戦争、シベリア出...続きを読む

    1

    Posted by ブクログ 2021年12月09日

    前半の主人公田尻氏の話だけでも良いじゃないかと思いながら読み進めて行ったが、後半のすごさ感動もさらにひとしおであった。
    本を読む側としては数時間だが、作者の費やした時間、そして読者の心に残る時間のなんと膨大なことか

    1

    Posted by ブクログ 2021年11月16日

    日露戦争から太平洋戦争終戦後までの船舶輸送、そして宇品の船舶司令部の歴史を調べ上げた渾身の一冊。やはり堀川恵子さんはその調査の緻密さ、文章力とも今の日本で最高のノンフィクションライターだ。日露戦争の成功体験から抜け出せぬまま、現実を直視することなく無謀な戦争に突き進んでいった過程がよくわかる。船員の...続きを読む

    1

    Posted by ブクログ 2021年09月18日

    あまり進んで読むようなジャンルではないが、堀川惠子さんという著者に惹かれて読んだ。素晴らしいノンフィクションに決まっていると。
    で、著者の何を読んだのか振り返って見ると、多分『裁かれた命』1冊だけのような気がする。その時にすごい!と思ったのだろう(それなら他の著作も読めばいいのに)。

    宇品という地...続きを読む

    1

    Posted by ブクログ 2023年12月26日

    数多の将兵を送り出した広島の宇品港
    日清戦争から昭和20年の終戦まで、およそ半世紀に渡って帝国陸軍の兵站の要を担っていた宇品に陸軍船舶輸送司令部があった。
    普段スポットライトが当たらない船舶輸送司令官の視点から歴史を紐解いていく本書は、これまでにない解像度だった。
    よく目がする「要約された歴史」では...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年07月14日

    凄い。

    最後のページの写真。
    読み終わる前に目に入って、なんの写真か分からなかったのだが…
    読み終わり、ページをめくったら、言葉をなくした。

    組織は狂う。
    俊英が集い、そこらの通りがかりが見ても、愚かしい隘路に、何故全力で突き進むのか。

    組織の狂った突進に、軋みに、不条理に轢き殺される多くの人...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年04月21日

    祖父は商社の船舶部にいて、戦時中は徴用されて終戦は横須賀で迎えたと亡くなったあとに親から聞いた。徴用されていたときになにをしたのかどこに行ったのか・・・兵站がお粗末だったとは知っていたけれど、ここまでお粗末だったとは思わなかった。もちろん、頑張ってる人や真面目にやってる人はいるんだけれど、それにして...続きを読む

    0

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