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児童養護施設で暮らす花は、夏を迎えて18歳になった。翌春には施設を出るきまりだが、将来への夢や希望が何ひとつない。花が8歳のとき、母親が無差別殺人の罪で逮捕・勾留されて以来、彼女の心には何物も入り込む余地がなくなっていたのだった。ある日、ボロボロのぬいぐるみを抱えた女の子・晴海が施設にやってくる。必死になってぬいぐるみを抱きしめている晴美の姿に、花はかつての自分を重ね合わせていた……。
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Posted by ブクログ
特別養子縁組、また親と暮らせない子供たちの集まって住む家。 読み進めていくうちに主人公の花がまっすぐに育ってよかったと思えた。タカ兄が言っていた家族って日々を重ねていくしかないっていう言葉がまさに。です。 生みの親より育ての親とも思うし、家族を振り返ったときに日々の積み重ねから家族ってできていくのか...続きを読むなと本当に思う。 いい言葉です。読めてよかった。
美しい小説体験だった。 一つひとつ選ばれた言葉はやさしく、丁寧に紡がれて、脆くも繊細で温かかった。 児童養護施設での1年で主人公や他の子供たち、そして大人たちも揉まれ、絶望しながら、一歩一歩進んでいく。確かな答えが出せなくても、それでもいい。静かな希望を感じた作品だった。
児童養護施設の子どもたちの話。 花は、願いが届きもしないと知っていながら、ずっと母親への恋慕と、母からの愛情というものを欲していた。十年間、ずっと。 それはまるで、外の世界を知っていながら、綺麗に管理された水槽の中でぐるぐると回るしかない金魚のように。 花以外の彼らも、ある程度ものごとがわかるよう...続きを読むに成長したとき、それでもその小さな体で、なぜ血の繋がった家族と一緒に暮らせないのか、真実を知る。いたいけに、受け止めようとする。 そしてそれでも、本心では「母親」を求めている。自分のことだけを見てくれる「本当の家族」を。 突如施設で暮らすこととなった晴海。 強気なみっちゃん。 ぴかぴかなものと空想が好きな麦と里美。 やんちゃ双子の武彦と智彦。 未熟児で生まれた2歳の源ちゃん。 みんながみんな、愛おしかった。 いたいけで、優しくて、だけどしっかりとそれぞれの芯をもっている。 「かわいそう」と思うことは、無関心で無責任だ。 みにくいアヒルの子、マッチ売りの少女、親指姫。 モチーフとして登場する絵本が、いいスパイスになっていた。どの章も素敵だった。 小川紗良さん。俳優であり映像作家である。 (正直、名前を聞いたことがある程度で、どんな俳優さんなのかは全く知らないまま読んだ。) 華やかな世界で活動しているイメージがあるのにとても繊細な小説で、この人自身にとても惹かれ、興味が湧いた。 しかも初の小説執筆らしい。すごく好みな文体だった。 今後も新刊があったらチェックしたい作家さんになった。
児童養護施設を舞台にした小説。 主人公の花は、今年で18歳になり、高校卒業後には施設を出なくてはならない。自分の将来に対する不安や、施設で暮らさなければならなかったこれまでの人生に対する複雑な想いが、施設の子ども達やタカ兄との触れ合を通じて描かれている。 児童養護施設で暮らす子ども達は様々な事情を...続きを読む抱えている。いわゆる普通の家庭で育った私には、彼、彼女達のことはわからないんだと思う。何というか…わかったつもりになっているだけで、本当にはわかってない。 血の繋がった家族でも現実には理想郷のようなものではない。それでも、"家族"というのは、彼等が渇望して止まないものだ。 彼等はこの小説をどう読むだろうか?ちゃんちゃら可笑しいわ!って思うかもしれない。 それでも、ドキュメンタリーとは違って、小説として、児童養護施設の子ども達を主人公にすることに意義があると思った。この小説を読むことで、少しでも周りの理解が深まるかもしれない。関心が高まるかもしれない。ドキュメンタリーは読まない人も、小説は読むかもしれない。しかも著者が話題の方ならば尚更だ。 児童養護施設で健やかに成長できるように、巣立った後に、独り立ちできるまでの精神的、経済的な支えが得られるように。一人でも多くの人が関心を持って、少しずつでも社会が変わっていってほしいと願う。 物語については、主人公が18歳にしては少し大人過ぎると感じたが、"かわいそう"を強調しすぎない話が好感をもてた。どこかの施設で本当にありそうな 話で、そこに様々な社会問題が見え隠れする感じがとてもいい。
時には呪縛にもなり得る家族と言う言葉。それでもやっぱり子供達にとっては、その家族は何にも変えられない大切な場所で。とは言え、親からの愛情を十分に受けられずとも、可哀想ではなかった。施設の仲間との衝突や葛藤の中で、人として大切な物を大事に育んでいる。希望に満ちた物語。 日々を重ねて、生きていこう。
児童養護施設に暮らす主人公が18歳になり、様々な事情で親と暮らせない子供たちとの関わりや成長を通して、目標を見つけ新たな生活に向かう。幸せになって欲しいなぁ、という余韻を残して終わる連作短編。1話目は児童虐待や無差別殺人など重い感じでしたが2話目以降は「みにくいアヒルの子」、「マッチ売りの少女」、「...続きを読む親指姫」など簡単な童話がモチーフにされて、考えさせられながらも成長が感じられる話でした。
小川糸さんの並びにあって間違えて借りた本。笑 小川紗良さんって全然知らなかったけど、俳優や監督もやっているとか。 意図していなかったのだけど、親と暮らせない子どもの話をまた読んでしまった。 主人公の花が、淡々と状況を受け入れ、でも割と前向きに家の人たちと関わって暮らしているから、そんなに悲壮感は感...続きを読むじない。胸が痛くなるようなエピソードは、いくつも散りばめられているのだけど。 迷いつつも前向きに生きていけそうな花の未来に、希望を感じる終わり方。
事情を抱えている子供が暮らす星の子の家。 親が病気になってしまった子、経済的な問題で家庭で暮らせなくなった子、身体や精神に深い傷を負った子。 花のお母さんが夏祭りで起こした事件は衝撃的だった。 小さい子を守りたいという願いをサンタさんは叶えてくれるといいなと思った。
小川紗良さん。俳優で、監督で、本書は同タイトルの長編初監督作のノベライズ(初小説)だそうだ。うーん、才能のある人は本当になにをやっても……。まあ、凡才のおっさんの嫉妬混じりのコメントはともかくとして(^^;)。 児童養護施設「星の子の家」で暮らす18歳の少女・花を主人公とした4作の連作短篇集だ。同じ...続きを読む境遇の子供たちと花の関係や、花の母親の過去など、重くなりがちな内容を不必要に暗くせずに描いていて好感がもてた。 残念ながら映画は観逃してしまったが、機会があればぜひ観てみたい。
児童養護施設で暮らす花は、夏を迎えて18歳になった。翌春には施設を出るきまりだが、将来のことや遠く離れた母親のことで葛藤を抱えている。 ――― (引用) ――― 家族とは、そんなに素晴らしいものだろうか。いつか読んだ本に、家族とは「自分から決して逃げない人」のことだと書いてあった。一度逃げら...続きを読むれてしまった私たちは、この先その「家族」というものを、一体どう信じれば良いというのだろう。 ――― (引用おわり) ――― そんなある日、ぬいぐるみを抱えた女の子・晴海が施設にやってくる。複雑な事情を抱えながらも日々を懸命に歩む晴海の姿に、花はかつての自分を重ね合わせていることを知る。 ――― (引用) ――― 「花、いい子でね」 いつになったら、私はあなたのいい子になれますか。いい子になれば、あなたはその手で私を撫で、優しく抱きとめてくれますか。 「いい子にしても、帰れないじゃん」 わかっている。晴海の言った通り、どんなにいい子になったって、帰れる場所もなければ迎えてくれる人もいない。あの人の言う「いい子」とは、解き方のない呪いなのだ。 そうとわかっていながらも、私はかつての世界の全てを手放すことができなかった。手放したくても、できなかった。あの人のいい子をやめてしまえば、私は誰の何になればよいのかわからない。あの人のいい子であること以外に、私は私自身を見出すことができなかった。その虚しさを自覚しながらも、もはやどうすることもできない。 私は心の奥底で、名もない金魚の奇跡を信じていた。信じなければ、今にも自分もろとも海の底へ引きずり込まれてしまいそうで怖かった。 「ママ、」 私は思わずあの人を呼んだ。 「ママ、」 届かぬ声が虚しく波音にかき消され、それでも私は呼び続けた。 「ママ!」 ずっと呼びたかったあの人の名を、ずっと呼んで欲しかった私の名を、今日、ここですべて流してしまおう。この世界の丸さに乗って、いつか優しさとなって返ってくる日を信じて待とう。私はその日まで、どんな荒波が押し寄せても、恐ろしい強風が吹いても、「おかえり」と言えるようにこの世界で生きていよう。 私たちに起きた事実は変えられないけれど、真実は自分次第だと、いつかタカ兄が言っていた。事実をどう受け取るか、それを抱えてどう生きるか、答えは出なくてもその道のりが自分なりの真実になると。 ――― (引用おわり) ―――
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