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はるか縄文の昔から,日本にはさまざまな音楽が培われてきました.素朴な鈴や石の笛に始まり,仏教音楽の伝来,雅楽・能楽・歌舞伎・文楽の誕生と変化,文明開化による西洋音楽の導入,そして現代邦楽――.政治や宗教とも深く結びついた音楽の歴史をたどれば,日本の歴史の流れも見えてきます.コンパクトで濃厚な決定版!
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Posted by ブクログ
『ものがたり西洋音楽史』と対をなすものとして企画され、日本音楽の歴史を分かりやすく解説した新書。「ジュニア新書」なので中高生でも読めるけれど、あまり日本音楽について体系的に勉強するという機会は、一般にはない気がするので、むしろ日本音楽を勉強してみようという大人にちょうどよい新書だと思う。 以下は...続きを読む面白かった部分のメモ。まず「日本で思想としての儒教が近代まで影響を与えたのに対して、儒教の儀礼はあまり実践されなかった」(p.11)というのは、確かに儒教って思想史でしか勉強しなかったから、気づかなかった。舞があるらしい。あと歴史のお勉強と言えば、「日本最古の声楽曲の楽譜集」(p.26)は、『琴歌譜』というものだとか、初めて印刷された楽譜は1472年の『文明四年声明集』(p.51)という真言声明の木版で印刷されたもの、とか「最古」、「初めて」みたいなものをチェックしてしまう。中世は踊り念仏、とか有名だけど、「音節に合わせて、頭を左・右・正面と下げ、それを繰り返します。もし間違えたら、隣の人とぶつかります。」(p.54)という、「浄土真宗大谷派で伝承されている『坂東曲』」(同)というのがあるらしい。どんなんだろう。と思ったらyoutubeにたくさん出ていた。すごい迫力。中世と言えば能楽だけど、能にはフシの謡い方に「ツヨ吟」と「ヨワ吟」というのがあって、その中の「ツヨ吟」では、「下音と下ノ中音、そして、中音と上音は、演奏者には意識されても、聴こえる音高としては同じになっています。」(p.82)ということらしく、これなんか五線譜では表せない典型だなと思った。他にも、「三味線音楽は西洋の平均律に基づいていませんので、半音や全音の幅が変化することがあります。例えば、魏太夫節では特定の半音の幅をわずかに広げたりせばめたりすることが、表現手段になっています。」(p.115)、そしてさらに「基準の音高は、ほとんどの曲では決められていません。」(p.115)という点で、三味線音楽も五線譜では無理な音楽、ということになる。あとは民族音楽学的な視点が新鮮だった。「アイヌ音楽での声の使い方、例えば、裏声を混ぜる歌い方、吸う息と吐く息の組み合わせ、あるいは、声帯の振動を伴わずに出す無声音とその振動を伴って出す有声音との組み合わせなども、北方民族に共通する点です。」(p.102)だそうだ。近世になって、「中世末期に危機的な状況にあった宮廷の雅楽」(p.103)が幕府の助成のおかげで復活した、という話も面白い。シーボルトの時代は「ヨーロッパ人による日本音楽のピアノ編曲」(p.143)というのがあったらしく、これも面白そう。どんな曲になっているんだろう?近代になって、国威発揚のための神道教育で、「天長節の歌も紀元節の歌も、音楽としては神道とは無関係な西洋風の歌でした。長調の四拍子で作曲されたもので、のちには、ピアノやヴァイオリンなどの西洋楽器で伴奏されました。つまり、西洋音楽が神道教育に使われたのです。」(p.150)という、なんでそんな西洋音楽をすぐに受け入れられるようになったんだろう?という不思議。「西洋音楽である軍楽と、神道の代表である天皇との結びつきは、不思議に見えるかもしれません。しかし、近代の天皇は、陸軍と海軍の統率者でもあったのです。そのため、雅楽を用いてきた神道の皇室葬儀にも、軍楽隊の演奏を加えることが当然とされたのです。(略)第二次大戦中に、尺八奏者が行進しながら演奏したのは軍楽隊の影響です。」(p.156-7)ということらしい。ちなみに天皇の葬儀で演奏されたという《哀の極》、日本の旋律が海外に知られたという《かっぽれ》というのはどういう曲なのか、聞いてみたい。あと似た話で、戦争中の政策は、「不思議なことに、日本音楽ではなく、西洋音楽を促進しました。日本精神を強調しながらも、学校の行進で使う音楽も、ラジオの臨時ニュースで流される音楽も、西洋の楽器編成による西洋音楽か、西洋音楽をもとにした日本の作品だったからです。(略)日本精神や大和魂を叫びながら、音楽に関しては、このように西洋音楽を促進した近代末期の状況が、第二次世界大戦後の日本で西洋音楽が盛んになるのを準備した」(p.184)というのは、皮肉な感じ。次に、音楽の変化には二種類あるという話で、「一つはある音楽様式が、異なる音楽、とりわけ異なる文化の音楽に接触することで生まれる変化です。これを文化触変と呼びます。もう一つは、一つの音楽様式の中で、音楽家の創意工夫によって起こす変化です。それを内発的変化と呼びます。」(pp.165-6)というのは分かりやすい。あとは現代の話で、「英語による英語能」(p.199)ってどんなんだろ?英語落語とかあるけど。最後に、柴田南雄という作曲家の《熊野へ参らむと》という曲は聞いてみたい。「声を含む邦楽に関心をもった西洋音楽畑の作曲家」(p.210)ということで、「琴の動きも音程も新しいものですが、歌のパートにも多様な表現を要求して、声も現代邦楽の重要な要素になりうることを示した。」(同)ということだ。 古代から現代までの日本音楽史の教科書になるような新書。(22/08)
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