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社会的行為の動機を理解し、その内面から人間と社会のあり方を考える。これが、近代社会学の祖とされ、社会科学全般に決定的影響を与えたマックス・ヴェーバーの学問の核心にあった。だが、奇妙なことに従来の議論では、彼自身のこの問題意識が見落とされている。本書では、ヴェーバー思想の根幹に「理解」を位置づけ、その業績全体を、理解社会学の確立に向かう壮大なプロジェクトとしてとらえなおす。主要著作を丹念に読み込み、それらを貫く論理を解き明かす画期的入門書。
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Posted by ブクログ
「ヴェーバー入門」とうたってはあるが、読み応えのある本書は、社会的行為の動機を理解し、その内面から人間と社会のあり方を考えるという理解社会学を中心にその射程をとらえようとする力作。第1章ではヴェーバーの動機理解を学問の方法としたヴェーバーの学問をドイツ歴史学派の方法批判から綿密に跡づける。第2章はそ...続きを読むの理解社会学の最初の実践例としての『プロ倫』が取り上げられる。 「理解社会学の方法に即して『プロ倫』をここまで丁寧に読んでくると、この著作が、資本主義という経済システムの歴史的起源を解明するものではなく、ましてや、近代という時代とその文化を一般的に擁護したり批判したりするものでもなく、ここに文字通り語られているように「職業理念を基盤とする合理的生活態度」をその淵源となった「キリスト教的禁欲の精神」から問うものだという、その真意が正確に理解できると思います」(p.123-4) 第3章はヴェーバーの読まれざる大作『経済と社会(宗教ゲマインシャフト)』をその構成の検討からはじめて読み解いていく。ここでは宗教倫理への定位の問題が、行為と秩序の関係を問うという課題と、『プロ倫』が対象としたプロテスタンティズムから視野を他の宗教まで広く拡張していくという2つの問題があることが展望される。 そして第4章は「世界宗教の経済倫理」を通じて比較宗教社会学へと展開していくさまを読み解いていく。キーワードは物象化。とくに儒教とピューリタニズムの比較から解析される、秩序形成の物質中心と人間中心という視角は重要であることが示される。現代の我々自身の課題へと繋がっていく。 「おわりに」では「人間と社会の脱一体化的理解」という社会認識の形が、現在の社会の組織形態にしたがって生活していても、それとは異なる未来を構想して行動を開始するという可能性を開くことが指摘される。 (注)では去年出された岩波新書(今野)、中公新書(野口)なども批判的に取り上げられているので、一読を。とくに今野本には「伝記論的転回」って書かれてるけど、自分のウェーバー像に都合の良い断片をつなぎ合わせて構成しているだけだと手厳しい。
近年は各社から新書のウェーバー入門が刊行されており、もっとも近いものでは今野元の『マックス・ヴェーバー―主体的人間の悲喜劇』(2020年、岩波新書)と野口雅弘『マックス・ウェーバー―近代と格闘した思想家』(2020年、中公新書)がありますが、この両著作はウェーバーの生涯をたどりながらその思想を紹介し...続きを読むている評伝です。それに対して本書は、ウェーバーの仕事の中核をなす「理解社会学」とはなんだったのかということを掘り下げ、その枠組みにしたがって主著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』や宗教社会学にかんする著作を見なおす試みがなされています。 ウェーバー独自の社会学方法論が提示された論文「ロッシャーとクニース」は、他の入門書でも言及されることがありますが、本書ではあらゆる現象が何かの実体から流れ出すように生起するという「流出論」の発想に対する批判という点に焦点を向け、「国民性」や「人格」をそのような意味での実体として措定する社会学の立場をウェーバーが乗り越えていったことを明らかにします。そのうえで、動機の理解とその動機から発した行為について循環的に理解を進めていくことがウェーバーの理解社会学の方法論をかたちづくっていると論じられます。 こうしたウェーバーの理解社会学についての解釈にもとづいて、著者は従来の「方法論的個人主義」の解釈にもとづく「近代主義者」としてのウェーバー像をしりぞけます。『プロ倫』の解釈においても、ピューリタンが資本主義の担い手になったという資本主義の起源についての考察だったのではなく、経済的に興隆しつつあった中産階級がピューリタニズムを受け入れたということを、資本主義的営利への動機と禁欲的な宗教倫理との相互促進的な関係に着目することで解き明かす試みだったという解釈が示されています。 本書がタイトルの示す通りの入門書であるかどうかはともかくとして、著者の解釈は刺激的であり、興味深く読みました。
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ヴェーバー入門 ――理解社会学の射程
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中野敏男
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