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江戸中期、驚くべき町人学者が大坂にいた――。醬油屋に生まれ、独自の立場で儒教や仏教を学ぶ。主著『出定後語』では、世界に先駆けて仏教経典を実証的に解読。その成立過程や思想構造を論じ、結果を導いた「大乗非仏説論」は、それまでの仏教体系を根底から揺さぶり、本居宣長らが絶賛するなど、日本思想史に大きな爪痕を残した。生涯独立不羈を貫き、三十一歳で夭折した“知られざる天才”に、僧侶にして宗教学者の著者が迫る。
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Posted by ブクログ
お経はお釈迦様が言った事が書いてある、そんなの誰もが常識と思っていた時代に、 なぜ彼は疑問に思ったのか? 天才の発想、そこが知りたいですね
かつて司馬遼太郎さんが、山片蟠桃と並んでその合理的精神を賞賛した富永仲基。とはいえ、『出定後語』という著書は受験知識で知っていても、その中身までは知らない人がほとんどでは? かくいう私もその一人。本書は、そんな知られざる天才・富永仲基の思想がコンパクトにまとめられたお得な一冊だ。 誤解を恐れずに仲...続きを読む基の考えをまとめるならば、ある思想や主張はどんどん上書き保存されていくというもの。そして、時代や場所が変われば語られ方も変わっていくというもの。そこから導き出されたのが、大乗仏教は釈迦が唱えたものではないとする、有名な大乗非仏説である。 これは現代の歴史学はじめ人文系学問に通じる研究姿勢である。このような進歩的な考えを、ネットもない時代の、しかも20代そこそこの若者が持ち得ていたことは、もう驚き以外の何物でもない。 仲基の早熟な天才性に圧倒される。面白い。仏典に関する知事がまるでない浅学な身で欲を言えば、一覧表示などの図表があるとありがたかった。
専門的過ぎるところがあって正直よく理解できなかった。 それなりの知識があるのならばそれなりに楽しめたかも。 そんな思いがよぎった一冊。
現代的な文献批判の方法を駆使して、仏典の歴史的な形成を解明した富永仲基の思想を解説している本です。 著者は浄土真宗の僧侶ですが、仏教の研究者として近代以降の「大乗非仏説論」などの歴史的研究の諸成果に通じており、それに匹敵するような合理的な仏典解釈にいち早く取り組んだ「天才」として仲基を位置づけてい...続きを読むます。ただし、仲基を時代から隔絶した「天才」と位置づけることに対しては、宮川康子が著書『富永仲基と懐徳堂―思想史の前哨』(1998年、ぺりかん社)のなかで批判しており、慎重であるべきなのではないかという気がします。仲基の思想の独創性とされるものは、日本の近世における儒学や仏教のありかたの特殊性によって可能になっているという側面もかならず存在しているはずであり、本書はそうした思想史的な文脈に対してあまりにも無頓着であるようにも感じられます。 とはいえ、仲基の学問・思想について、手にとりやすい新書の形式で解説がおこなわれており、また『出定後語』のテクストから仲基のことばの紹介がなされている本書は、読者が仲基の思索にじっさいに触れることができるという意味でも、その意義は大きいのではないかと思います。
大乗非仏説だけの知識で読んでも、十分に天才っぷりが伝わってくる。つーか、筆者が心酔していることが伝わってくる。と、同時に「加上」という考え方の理解が深まる。とても読みやすいとは言い難い文体だが、ありあまって勉強になったので、読んでよかった。
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天才 富永仲基―独創の町人学者―(新潮新書)
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