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その犠牲者は、一〇〇〇万人──四〇〇年にわたり大西洋上で繰り広げられた奴隷貿易の全貌が、歴史家たちの国境を越えた協力によって明らかになってきた。この「移動する監獄」で、奴隷はいかなる境遇に置かれたのか。奴隷貿易と奴隷制に立ちむかったのはどんな人たちか。闇に閉ざされた船底から、近代をとらえなおす。
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Posted by ブクログ
とても、刺激的な本であらためてよ見直してみたい。奴隷といえばアメリカ、というイメージは、ポルトガルブラジルの規模のほうがおおきいことでまず覆された。また、奴隷船のなかでの扱いがなんとなく想像した以上にひどい(死亡率など)こと、それに対する反乱もかあったことなど、しることができた。アメージンググレース...続きを読むの作詞社会主義が土鈴船の船長経験があり、かれなどが働きかけていくなかで徐々に奴隷貿易が廃止されていくことがわかった。やはり、運動は力を持つことが学べたし、砂糖ボイコットなど、イギリスという国家の二面性もルーツとして知れた。奴隷制廃止後は移民が増えていくわけだが、おわりにで現代にも奴隷制が暗に行われているこどが示唆される。とても心苦しいことである。
奴隷の歴史には、 奴隷貿易の歴史と奴隷制の歴史がある。 奴隷貿易が世界から廃止されても、 奴隷制が即座に廃止されたわけではない。 また、大西洋奴隷貿易400年間の間のアフリカ人人身売買の前にも、古くから地中海社会に奴隷制度はあった。 ポルトガルが先陣を切って大西洋奴隷貿易を始め、1888年にブ...続きを読むラジルで奴隷制が廃止されるまでの400年間、アフリカの黒人奴隷達は家族と引き離され、捕獲され世界中に売りさばかれ、酷使された。 アメージンググレースという曲は、 元奴隷船の船長が自分の行為を深く後悔し懺悔して作った詩。 スピルバーグ監督は、奴隷叛乱から自由を勝ち取ったアミスタッド号事件を元に、アミスタッドという映画を撮っている。だがこれは非常に数少ない叛乱が成功した例。 フランス革命時の人権にも、奴隷はその中には入っていなかった。それの何が人権なのだろうか。 ハイチの奴隷は史上初、叛乱を起こし 黒人による国、ハイチが誕生した。 奴隷船にギチギチに詰め込まれた奴隷達の1割ほどが航路途中で死んだ。 奴隷牧場も登場し、奴隷を生み育て売りさばかれた。 これが、人間の一つの真実の歴史である。
高校の世界史の教科書で奴隷が船底っぱいに横たわった状態で運搬される絵を見て衝撃を受けた。 それがどこに所蔵されていた絵かは覚えていないが、本書第2章の扉絵でロンドンの国立海洋博物館所蔵の「奴隷船ブルックス号の構造図」がそれに近いのだろうと思っている。 本書では歴史家たちの協力によって新しい資料や、散...続きを読む逸していた資料がまとめられたことによって、より詳細な奴隷貿易についてがわかる。 驚いたのは、奴隷貿易の拠点港上位2位までがブラジルで、リヴァプールが第3位であることだ。 これまで大英帝国が最多の奴隷船貿易を行ったと考えられていたが、実はポルトガル船、ブラジル船が最も多いのだそうだ。(35~36頁) また、南アメリカの各文明を滅ぼしたのはコンキスタドーレス、スペイン人という知識があるせいか、スペイン人も多く奴隷貿易に関わっていたのだろうと思っていた。 しかし、実は16~18世紀にかけては直接関わることは多くなかったようだ。(40~41頁) 奴隷船の積荷は奴隷そのものであるが、それと同時に船員、その中でも下位の船員である、水夫について触れられているのも興味深い。 船長にとっては水夫も同様に邪魔なもので、用が済めば鞭打ちや食事を抜いたりして逃亡するように仕向けたり、打ち捨てられたり、過酷な扱いを受けていたという事実は衝撃的だ。(81~96頁) 奴隷制廃止となってからも、実は現代も奴隷売買は続いている。 奴隷売買というと歴史の話、現代とは関係ないと思いがちだが、実はユニセフによると西アフリカでは子供が一人15ドル程度で購入され、ココアやコーヒー農場で働かせられたり、女子は性奴隷となっているという。(228頁) 私だって安くて良いものがあれば買いたい。 ココアやコーヒーといったプランテーション作物は好んで消費する。 しかしそれが誰かの犠牲のもとで安くて美味しいのならば、それは道義的に正しいことではないだろう。 企業の責任が問われる時代になってきた。 私が飲み、食べ、着るものがどうやって作られているのか、そこを企業は明らかにした上で、適切な値段での取引を是とする社会が求められる。 そして私たちもそれを良しとできる意識の転換、選択が求められている。
奴隷船という蛮行が、特別の悪意ではなく、純粋に経済的合理性に基づいて行われていたことに、単なる残酷物語以上の恐怖を感じた。 現在そして将来的にも、経済的合理性によって、容易に、人間の生命や尊厳がたやすく損なわれることがあるのは間違いなく、警戒心をもって生きていくべきと思った。現代でも奴隷的な児童労働...続きを読むもあるし、先進国でもブラック企業事例などは枚挙に暇がない、
大型機械のない時代、奴隷は「ヒト」ではなく、「モノ」であった。大量の商品を生産するために必要なのは、土地や工場、原材料、そして奴隷だ。奴隷は主にアフリカで調達され、大農場や工場に輸送され、消費される。 そんな奴隷貿易を担ったのが大量の奴隷を運搬することに特化した奴隷船。奴隷たちは鎖で繋がれ、立つこ...続きを読むとのできない高さの天井とまともな通気ができない船底に毎日16時間寝かされる。与えられるのは1日2回の食事と体操の時間だけ。 奴隷の死亡率や奴隷以上に過酷な扱いをされた水夫、船を乗っ取った奴隷たちなど、本書は奴隷船をめぐる数々のエピソードを紹介し、さらに奴隷制度の発達と奴隷解放の歴史を説く。 奴隷解放といえば、リンカーン大統領が頭に浮かぶ。が、彼が登場する前にヨーロッパですでに奴隷制度に反対する運動が起こっていたようだ。人間は同じ人間を虐げることを嫌悪する。人類にとって、奴隷船とは思い出したくない存在かもしれない。
少し前にロビンソン・クルーソーが話題になっていて、関連本を探していてこの本に出合いました。 20年近く前だと思うけど、映画「アミスタット」を観て衝撃を受けた記憶がある。 あの映画も、奴隷船の真実を突き詰めたものだった。 本書では、400年にもわたる奴隷貿易の実態を明かし、だれが利益をあげていたのか、...続きを読むどんな人たちが奴隷船を動かしていたのか、多角的に考察している。 砂糖やコーヒーが、奴隷の労働力によって生産されてきた事実。 日本では、「奴隷」と言えば、中学校の社会科でアメリカ合衆国の南北戦争のことやリンカーンの演説を学習する際に奴隷貿易に触れるが、実際はアメリカ合衆国だけでなく南北アメリカ大陸の広い範囲に奴隷は送り込まれている。キューバなどでの奴隷の叛乱や自由を獲得するまでの歴史、奴隷貿易の禁止や奴隷制度そのものを禁止することを目指して活動した人々のこと…。非常に興味深く勉強になる内容でした。 アメージンググレースを作詞したのは、奴隷貿易船の船長だった人(ジョン・ニュートン)だそうです。船を降りて、牧師になってから作った歌なのだとか。 最後に、奴隷は現代にも存在するのだという章があり、私たちの日々の便利な生活の陰に、犠牲になっている子供や、弱い立場の人たちがいるのだという現実に、目をつむってはいけないと思った。
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奴隷船の世界史
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布留川正博
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