なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

3,960円 (税込)

19pt

4.5

暴力をうけた人は、それを話すことができるだろうか。周囲の人はそれを聞くことができるだろうか。暴力は、日常の「こうであるはずだ」という約束を壊す。世界で生きていく前提が崩れてしまうのだ。だから、何が起こったのかを認識するのにとても時間がかかる。その話を聞いた人も、言われたことを即座に理解することはできない。けれども、暴力は世界中で蔓延し、ある日突然被害者になる人は増え続けている。世界への信頼を打ち砕かれた人が、ふたたび世界へと戻って来られるために、私たちは何ができるだろうか。著者エムケは戦地を取材し、さまざまな人と出会う。そこから、「語ること」「聞くこと」「聞いたことを伝えること」について考えていく。語ることを強いるのではなく、言葉にできないとするのでもなく、「それでもなお語る」ことを探ること。口ごもりながら、断片的に語るとき、そこには空白があり、謎があるかもしれない。だからこそ「それ」は言葉にできる。語りの首尾一貫性ではなく、聞く人が「それ」を聞けるかが、世界への信頼を取り戻す鍵となる。出会った人々の言葉とともに、旅するエムケの生活や思い出が、普遍的な考察へとつながっていく。温かく、深みのあるエッセイ。

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なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    強制収容所の生還者、捕虜、強姦、虐待など過酷な体験からのサバイバーが自らの体験を言葉にする大変さ、言葉の重さ、沈黙に触れている。話の文脈もバラバラだったり、言葉に詰まりながらの語りは当たり前で、彼らとそうした体験を持たない聴き手との断絶を意識しながら、彼らの傍らにいて切れ切れの言葉を聴いていく、聴き

    0
    2024年02月13日

    Posted by ブクログ

    それは言葉にできるからとカロリン・エムケは信じる。とても言葉にできない体験も、時間や聞く人への信頼などによって言葉になることもある。聞くこと、伝えることの大切さを説いて素晴らしい。他者の苦しみ、故郷などの体験から語られる文章にも感銘を受けた。彼女の弱者に向ける視線と本質を見極め言葉にする力にこれから

    0
    2021年01月27日

    Posted by ブクログ

    2019年?冊目。(最近レビュー執筆怠り数え忘れた...)

    『憎しみに抗って──不純なものへの賛歌』から注目していたジャーナリスト、カロリン・エムケの新刊(原書の出版は2013年で、『憎しみに抗って』よりも前)。

    年末年始、他に読みたい本がたくさんあるけれど、これは連休中にもう一度読み返さなけれ

    0
    2019年12月28日

    Posted by ブクログ

    ホロコーストやユーゴの集団強姦などの非人道的な暴行・扱いを受けた人間が、なぜ自分の身に起きた出来事を話せないのか。
    常軌を逸した出来事を経験したからこそ、それを首尾一貫して説明できることは難しい。被害者の供述が曖昧だったり支離滅裂だった時、決してそれはその被害者の記憶力や説明力が問題なのではなく、た

    0
    2023年02月13日

    Posted by ブクログ

    言語化することは、その治療的側面からとても深い意義がある。その人の内面の課題を解決するためには、内面を言語化するしか方法がないと私は思っている。
    カウンセリングにしろ、トラウマ治療にしろ、その基本は「傾聴」することだ。すべてそこから始まる。ナラティブセラピーしかり、メンタライジングしかり。発達の未熟

    0
    2022年07月23日

    Posted by ブクログ

     強制収容所での拷問、戦時中の集団強姦など、悲惨な体験をした被害者たちの話を聞いてきた著者。彼らが「それ」としか呼ぶことができない体験を言葉にしていくことの意義や、その過程で聞き手側に望まれる態度について論じるエッセイ集。後半は、故郷についてや、旅をすることについても語っている。

     印象に残った部

    0
    2020年01月03日

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