「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」(川端康成)は英語で「The train came out of the long tunnel into the snow countory」(サイデンステッカー)。世界を表現する際の「視点」 の違い。英語は「神の視点」を得ることによって主語の誕生を準備したが、「虫の視点」を持つ日本語にはそれは必要なかった。英語の歴史を踏まえ両言語と文化の違いを考察。
第一章「神の視点」と「虫の視点」。川端康成の名著「雪国」の冒頭の文章「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」を英訳と比較して、日本語は虫の視点で見るが、英語は高みに上った神の視点でみる。この見方は面白かった。虫が進むように少しずつ景色が現れてくるのだ。英訳すると、その視点は失われ、The train came out of the long tunnel into the snow country.と景色は全てが一瞬にして見えてしまう。第二章「アメリカよ、どこへ行く」。第三章「英語を遡る」。第四章「日本語文法から世界を見る」。第五章「最近の主語必要論」。第二章以降は、ここには面白いのだが、日本語文法学界の様子を知らないので、ついて行きにくかった。