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ソクラテス哲学の根本を伝える重要な対話篇、初の文庫版で新訳が登場! 『アルキビアデス大』または『第一アルキビアデス』と称されてきた『アルキビアデス』は、一個人としての「この私」と捉えられる「自己」を認識すること、さらには「人間一般」を認識することを目指し、魂と徳の探究に乗り出す。短篇『クレイトポン』では、その魂と徳の探究への疑問が提示され、ソクラテス哲学の極限に向かって対話が進行していく。
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Posted by ブクログ 2022年01月05日
昔、所属していたモデル事務所にとてもお世話になった1つ年上の先輩がいた。その頃のモデルはほとんどがお金持ちの子女が暇潰しにやっているような感じで、またそういう人間特有のガッつかないギラギラしてない雰囲気がないと売れない、という業界の不文律のようなものもあったように思う。でもその先輩は逆に仕事にもお金...続きを読むにも苦労して売れたタイプで、そのせいか後輩にもとてもやさしかった。先輩の恋人の彼女にもたくさんお世話になった。今もとても感謝している。 ある時、そんな先輩にお店を持ちたいと相談されたことがあった。しかしファッションモデルという仕事は、仕事のある日が不規則なうえ拘束時間も長いので、副業やアルバイト的なものは到底出来ない。もちろん実家からの援助も無いし、業界の人間やその繋がりから助けてもらったりするのも嫌だと。そしてその夢のために男に身体を売る仕事をしようかと思っているんだけど、どう思う?と相談された。話を聞いた限りでは売り専のようなものではなく、店舗に所属はするものの今で言うパパ活みたいな感じだった。その後聞いたところによると、お客さんは一部上場企業の役員クラスなどのかなりの富裕層で、必ずしも性行為をするわけでもなく、ホテルのハウスレストランで食事をしておこずかいを貰うだけ…のような事もよくあったらしい。世の中いろんな人がいていろんなシノギがあるんだなと思った。でもそもそもモデルの世界というのは汚いおじさんにも妖怪じみたおばさんにも抱かれろと言われればそこに選択肢などはなく、むしろ夢を叶える事と望まない性行為を天秤に掛けられる人間などは足を踏み入れない世界だった。枕営業?なにそれマジで言ってんの?あの頃のモデルは昨今のゴシップを読むたびに一人残らず全員そう思っているだろう。これは主体の話だ。そういう意味では、心と身体は別のものとして認識されていた時代のこの本を読んで先輩の話を思い出したのはただの偶然ではないのかもしれない…と、もっともらしく前置きが長くなってしまったけど、この本のソクラテスがその先輩から聞かされていたデートクラブの客のおじさんそっくりなのでとにかく気持ち悪かったんです。しつこく完全否定した後に宥めすかす、自分が否定しているものを相手が認めている事実を受け入れない、知っている知らないでマウントを取ってくる、そのくせ挙句には君の事が好きなのは自分だけだと言い始める…若い男に執着しているおじさんは今も昔もこうなのか、そう思うとどんなに興味深い内容もおじさんの口説き文句にしか聞こえなかった。 哲学書読んでこんなことある?? ただ一つだけ印象的だったのが、過ちを犯さない人は自分が知らないことは自分では行わず専門的な知識のある誰か他人に任せる、過ちを犯す人間はそもそも自分が知らないという事にすら無自覚で、そして知らないことを知っていると思い込んでいるが故に過ちを犯す、というソクラテスの言葉。なるほどなと刺さった、確かにSNSなどで声高に権利と正義を叫んで暴れているアレの類いはたいていそうだなと。こちらもいつの時代も変わらないのだなと思った。 ちなみに先輩はおじさま達の相手をしながらかなりの資金を貯めて、とても立派なお店をオープンさせました。アルキビアデスはスパルタの王妃を寝取って暗殺されました。僕がこの本を知ったきっかけである、この文献をテーマにした主体の解釈学という講義をコレージュ・ド・フランスで行ったミシェル・フーコーは1984年にHIVで亡くなりました。 Survive。
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