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2019年4月、天皇みずから議論を起こした生前退位が現実のものになる。戦後を生きた明仁天皇と美智子皇后は日本と皇室に何をもたらしたのか。英語圏の近代天皇制研究第一人者による、ハーバード大学での白熱講義を一冊に。エズラ・F・ヴォーゲルらとの対話も。
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Posted by ブクログ
気鋭のアメリカ人歴史家である著者の、「天皇と日本人」に関するハーバード大学での講義録。本書では、現代日本の天皇制を、イギリス、スペインなどの君主制とさまざまな共通性をもつ「象徴君主制」とみなして、グローバルな脈略、対比的な脈略において分析しつつ、平成の皇室の独自の特徴に着目し、明仁天皇の退位を歴史的...続きを読む文脈で検討したうえで、明仁天皇と美智子皇后の目標と象徴性を分析することに大きな焦点を当てている。その目標と象徴性は、著者によると次の5つであるという。 (1)戦後憲法学固有のさまざまな価値を含め、戦後体制を明確に指示してきたこと。 (2)社会の弱者に配慮し、地理的その他の要因により周辺でくらす人びとに手を差し伸べ、社会の周縁との距離を縮めるよう努力してきたこと。 (3)戦争の傷跡、さらに全般的に帝国の時代がもたらした深い傷跡をいやし、戦後を終結させようと努力してきたこと。 (4)日本が示すべき誇りを堂々と提示してきたこと。ただし、その誇りは、日本史の見方を含め、単純きわまるナショナリズムとは異なる国際協調主義に裏づけられやものであったこと。 (5)美智子皇后が際立った行動を示し、重要な役割を果たしてきたこと。 また、本書では、新しい天皇と皇后が新しい皇室のスタイルをつくっていくことへの期待にも触れている。 著者の指摘には肯くところが多く、著者もいうように、「日本にたいするアウトサイダー」による分析だからこそ、日本人が論じるよりもむしろ現代日本の天皇・皇室の本質に迫れているように感じた。 本書で紹介されている、皇太子時代の上皇陛下(明仁天皇)が語ったという「憲法上、ある意味では、皇族はロボットであっていいと思うが、ロボットであってもならないと思う。そこがむずかしい」という言葉が強く印象に残った。
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