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電子タバコ、昆虫食、医療用ヒル、エピジェネティクス……科学理論からイノベーションまで、いったん消え去りながら「考え直され」脚光を浴びるものは多い。求めるものはすでにあったのだ。サイエンスからビジネスまで応用できる、現代人に必須の考え方のヒント
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Posted by ブクログ
電子タバコ、昆虫食、医療用ヒル、エピジェネティクス(獲得形質の遺伝)……科学理論からイノベーションまで、いったん消え去りながら「考え直され」脚光を浴びるものは多い。求めるものはすでにあったのだ。サイエンスからビジネスまで応用できる、現代人に必須の考え方のヒント・・ という宣伝文句通り、「答えは過去に...続きを読むある」というテーマに沿って多岐にわたる分野での歴史的変遷を考察した思考実験の書です。結構な分量であるにもかかわらず、図表類を一切使っていないので、読書意欲を最後まで継続させるのがむつかしかったが、処々に出現する金言や問題提起にどきりとさせられる。 例えば、 アイデアについて、「ある事柄が新しいうちは、それは真実ではないといわれ、後にそれが真実だとわかると、それは重要ではないといわれ、やがてその重要性が否定できなくなると、ともかくそれは新しいことではないといわれる」(P22) エピジェネティクスとは、例えば、ストレスにさらされた母マウスの子孫は母親のストレス因子も遺伝されるという後成的遺伝のことをいうが、この理論と「適者生存の法則」との関りや、人間の場合には後成心的ストレスはポジティブな環境があれば分子レベルの宿命から逃れられるという話(P63)もいい。 出版バイアス(P199)とは、雑誌で発表される論文は(特定の人に)望まれた結果に沿うモノだけで、好ましい結果でない論文は無視されるという事象で、権威ある雑誌で発表された論文だからと安心はできないし、日本でも「報道しない自由」などと開き直ったメディアの存在を忘れてはいけません。 政治家の現状分析については、「政府は自国の裕福な圧力団体の利害に縛られて、海外の債券市場の投資家たちの奴隷になり、専門職化した政治家には、普通の職業人生を送ったこともなく、自分の権力を永続させることにしか関心がない。再選のために支援者のご機嫌をとらなくてはならないので、地球温暖化対策のような本当に必要な政策は後回しにされ、社会にとって最善の行動を実行するインセンティブや長期的視点が希薄」(P295)なため彼らのおいしい既得権をいかに縮小させるかも民主制度再生へのヒントかもしれません。 本書の各章には詩的でぶっ飛んだ(私には)タイトルが冠されていますが、12章「善悪の彼岸」は必読です。 この章で扱われるのは、優生学(筆者は積極的優生学と消極的優生学にわけて論じます)、子供を持つ権利(スウェーデンでは犬を飼うのにライセンスが必要なように、悲惨な子殺しが起きないように人間にもという思考実験や現実には中国の一人っ子政策などは変形した政府ライセンスだし、そもそも産む権利は万人に保障されるべきだという議論)(P325)など刺激的な話題が展開されています。 エピローグでは、人類が核兵器を発明したことを喜ぶ時がくるかもしれない(P361)という刺激的な1文があり、その心は、地球を滅亡させる小惑星の衝突を避けるために、小惑星の上空で起爆させれば速度や方向を変えることができ、まさに救世主となりえるからだという。要は、使う目的によるということですが、今なお核兵器が増産され続けている世界情勢だからこそ、人類の叡智が試されているわけです。 扱う領域の広さと読み応えのある内容、知的刺激を求める読者には、ぜひ一読をお勧めします。
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