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1927年、パリ。銀行家の父を亡くしたマドレーヌは、その莫大な遺産を相続する。しかし、その地位を狙う者は多かった。裏切りと詭計に遭いながらも、彼女は闘い生き抜こうとするが。ゴンクール賞受賞作『天国でまた会おう』三部作、一気読み必至の第二作登場!
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Posted by ブクログ
カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ)で一気に燃え上がった感のある作者ピエール・ルメートル。あちらは文春文庫。第一次大戦に纏わる物語を描いた『天国でまた会おう』は早川書房でハードカバーと文庫版の同時刊行。この作者特有の、とても奇妙な主人公の人生を描き、ゴンクール賞(フランスの芥川賞)・英国推理作...続きを読む家協会賞を受賞し、国内でも話題を読んだ(ルメートルはどの作品でも話題を呼んでしまうのだが)。本書は『天国でまた会おう』の続編ではあるが、一部登場人物が重なることと、時制が前作を引き継いでいることの二点だけであり、前作が未読であっても全く独立した小説として十分に楽しめる。単独でも、相応の推進力を蓄えた大変な力作である。 本書はヴェルーヴェン警部シリーズを思わせるクライム小説ではない。あくまで前作同様、歴史的事実を脚色して描いた1927年パリに始まる一族の壮大な物語であり、ドイツに台頭するナチズムの風に曝される時代でもある。壮大な一族の物語というだけで、退屈という不安に身を引きたくなるかもしれないが、全く心配には及ばない。作者のストーリーテリングの力が、最初のページから読者を物語の渦中にぐいぐいと引っぱり込んでくれるからだ。 スタートから騒動は始まる。一大企業帝国を築いた企業主の盛大な葬儀のなか、7歳の孫ポールが三階の窓から転落するという事故が大衆の面前で発生。落ちたポールは幌に跳ね返って、馬車に積まれた棺桶に頭部をぶつけて生死を彷徨う。この物語の主人公は、ポールの母マドレーヌ。眠り続ける状態から徐々に少しずつ機能を回復してゆく息子への介護。しかし彼は、いつしかオペラへの天才的理解力を見せ、世界や時代への感受性をも研ぎすましてゆく。オペラ歌手ソランジュ・ガリアートとの間に始まった二人の奇妙な親交は、ナチス・ドイツからの彼女への講演要請を巡って決裂してゆく。ポールの登場シーンは、ことごとく小説全体を照射する神の声のように、作品世界に超然たる異質な曲面を滑り込ませる。 さて物語の主人公は、最初から明確なのではなく、俯瞰的に進む。多くの人物のそれぞれが回してゆく物語の中で、ある人物による壮大な仕掛けが進み、唐突に巨大で恐ろしい罠が瞬時にして閉じられる。祖父の築いた一大帝国の事業の中で準備されてきた罠の壮大さに呆れ返る。しかし、これらは実際にあった歴史上のできごとをモデルにしている。金融と報道。見えざる力を使った巨大スケールの逆転劇が、実に周到に語られてきた前半部からの折り返し点なのである。 そしてマドレーヌの巻き返しは、そこからスタートする。全体を見ると、敗退と逆襲。二部構成と言ってよい物語で、その折り目ははっきりしており、ここを通過する頃には、読者の大半は本作の魅力にすっかり身を任せ、魔法のような展開に目くるめく状態となっているはずである。経済やマスコミや政治を材に取り、のっぴきならぬ闘いに巻き込まれてゆくマドレーヌ。その背景に迫るファシズムの嵐。動乱の時代に震えるポールの愛すべき感受性。二つの大戦に挟まれたこの時代、有象無象の人間たちの悲喜劇を見事なまでに描き、全体が大仕掛けのコンゲーム小説としても楽しめる本作。 ルメートルという作家が並でないのは、最初の話題作『この女アレックス』で十分おわかりのこととは思うが、ここまでスケールの大きな物語作家であるとは予想もしていなかったのではないだろうか。ルメートルは奇術師的な小手先のトリッキー作家などではなく、小説の王道をゆく正真正銘の天才的語り部なのである。 スケール感のあるこのシリーズは、三部構成だそうである。二部を終えた時点で、次作への期待感がさらに膨らんでゆくのを感じる。 本シリーズ第一作の『天国でまた会おう』は、その映画化作品がセザール賞(フランスのアカデミー賞)5部門受賞、本年3月1日より、3/15現在公開中である。
世間知らずな資産家に ハイエナやハゲワシが 如く群がる詐欺師たち。 資産管理を他人に任せ っぱなしにしてはダメ ねと。 気づけば全てを奪われ てた主人公マドレーヌ。 しかし彼女を愚鈍な女 と侮るなかれ。 この物語は獲物を詐取 された雌ライオンが、 ハイエナやハゲワシに 襲いかかる復讐譚なの...続きを読む です。
フランスの作家ピエール・ルメートルの長篇作品『炎の色〈上〉〈下〉(原題:Couleurs de l'incendie)』を読みました。 『傷だらけのカミーユ』、『わが母なるロージー』、『監禁面接』に続き、ピエール・ルメートルの作品です。 -----story------------- 〈...続きを読む上〉 1927年2月、パリ。 一大帝国を築いた実業家の葬儀が粛々と進んでいた。 しかし出棺のとき、思いがけない悲劇が起きる。 故人の孫、七歳のポールが三階の窓から落ちたのだ。 故人の長女マドレーヌは亡父の地位と財産を相続したものの、息子の看護に追われる日々を送る。 しかし、そのあいだに、彼女を陥れる陰謀が着々と進んでいた…。 ゴンクール賞および英国推理作家協会賞を受賞した『天国でまた会おう』待望の続篇登場! 〈下〉 奸計により、亡父が遺した資産も邸宅も失ったマドレーヌは、小さいアパルトマンで細々と暮らしていた。 一方、彼女を裏切った者たちは、それぞれ成功への道を歩んでいた。 そして、マドレーヌは復讐することを決意する―。 ヨーロッパでファシズムが台頭しつつある1930年代、新たな戦争の影がしのびよるパリでくりひろげられる、息もつかせぬ復讐譚。 『その女アレックス』著者による、『天国でまた会おう』三部作の第二巻。 ----------------------- 2018年(平成30年)に刊行された、災厄の子供たち三部作の第2作… 第一次世界大戦後のフランスを舞台に描いた文芸作品で、7年前に読んだ『天国でまた会おう』の続篇です。 1927年(昭和2年)2月、パリ… 一大帝国を築き上げた実業家マルセル・ペリクールが死んだ、、、 その長女マドレーヌ・ペリクールは、幼い一人息子ポールとともに、父の莫大な遺産を受け継いだ… しかし、事故に遭ったポールの看護に努める彼女は、自らを取り囲む悪意に気づかなかった―。 やがて裏切りと詭計により地位も資産も失った彼女は、復讐を決意する! ファシズムの足音が聞こえる第二次世界大戦前のパリを舞台に展開する息もつかせぬ群像劇。 信じていた仲間に裏切られ、どん底に陥れられたマドレーヌ・ペリクールの怒濤の復讐劇を描いた作品… 自分を裏切った者たちを罠に陥れ、淡々と復讐していく展開がリズムよく描かれていましたね、、、 騙されるマドレーヌの方にも問題はあったかなー と感じて、序盤は感情移入し難かったのですが… 仲間の裏切りも酷いですからねー 復讐劇が進んでいくうちに、いつの間にか気持ちがマドレーヌたち(息子のポール、看護師ヴラディ、協力者のデュプレ含む)にシンクロしていましたね。 どんでん返しはなく、悪役がわかりやすい勧善懲悪のエンターテイメント作品でしたね… 前作にも登場したデュプレの活躍や、車椅子の少年ポールと母国語しか喋れないポーランド人看護師ヴラディのユーモア溢れるやりとり等も印象的でした。 続篇も機会があれば、読んでみたいですね。
『天国でまた会おう』の続編だが、前作を読まずに本書を読んでも楽しめる。 天国でまた会おうでは第一次世界大戦直後の物語だった。本書は第二次世界大戦の足音が聞こえてくる1927年〜1933年が舞台でペリクール家の物語となっている。 7歳のペリクール家の子息が3階の窓から落ちるという悲劇的な場面から始まる...続きを読む。上巻の後半で真相がわかってくる。 フランス人の名前は、聞き慣れておらず、最初は名前を覚えるのに少々苦労した。 そんな苦労を乗り越えられたら、もう作者の世界にどっぷりハマってしまう。ここまできたら下巻一気読みに突入。
1927年ー1929年 1933年 所はパリ。実業家の頭首が亡くなり、残されたのは娘と孫。葬儀の日に孫に起きた起きた悲劇。二人を食い物にする輩がそこにもここにもいる中で協力者はいるのだろうか
上下一括感想下巻にて しかし、どいつもこいつも…… 嫌なやつがいっぱい! 読むのが嫌になる……。
前半だけだと、まだ全体の半分も理解できてなさそう。 まだまだマドレーヌ、ポール、アンドレ、シャルル、等々の秘密が下巻で出てきそう。
「天国でまた会おう」の続篇。 前作で登場した、顔に穴の開いてしまった兵士の家族、 銀行家の父の葬式から話が始まる。 孫息子が三階の窓から落ち、 一命をとりとめたが、歩けなくなってしまう。 銀行家の唯一の相続人である母マドレーヌは、 息子を看護するが…。 前作で、容姿にひかれて結婚した夫を、 詐欺...続きを読むを行ったと知り見捨てたマドレーヌ。 今回もろくでもない男を息子の家庭教師として招き入れたり、 長年勤めていた銀行の上級管理職員を手ひどく振ったり、 しかもその男に資産のことを任せっぱなしにしたりと、 ある意味、自業自得で財産を失う。 (下巻へ続く)
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