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オーストリア公使の勤務を終えた著者は、文部大臣、枢密顧問官、農商務大臣などを経て外務大臣となる。日本外交の黎明期ともいうべき時期に敏腕をふるい、第一次大戦後のパリ講和会議にのぞむ。近代日本のオーラル・ヒストリーの白眉。 〈巻末エッセイ〉小泉信三、中谷宇吉郎
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Posted by ブクログ
以下抜粋~ ・原は大事な問題については元老方面にも了解を得ておくことが政務の進行上便利であると考えたらしく、山県及びその代表ともいうべき寺内に対しては常に妥協的な態度を取っていた。 一方加藤(高明)はこの点についてむしろ正反対の態度を取り、元老がいつまでも政治に容喙して時の当局を悩ますのは不都合であ...続きを読むるとの信念から、政治向きには元老との接触を避けていた。 ・日本が世界の列強の一員として将来その文化的な使命を果たす上において、これまでの教育施設では到底不十分であることは明白で、外国では義務教育の年限が8、9年であるのに日本においてはその半分に過ぎず、しかも他国に比較して漢学の困難があり、当局としても従来これらの事情はよく解っていて、決して問題の解決を怠っていたわけではなかった。 そのような次第で明治40年3月に官報を以って義務年限を6年とし(従来4年)、続いて高等科を2年もしくは3年とした。 ・西園寺さんは子分を作らず、派手な政治家ではなくて、文事に趣味を持ち、在職中も時折当時著名な文士を招待してその会合を雨声会と称し、公は他の出席者とともに席画、俳句の寄せ書きなどをして興じておられた。 ・(パリ講和会議にて)米国はドイツの正当な主権者として厳密に憲法の根拠によって保証されたドイツの人民の代表以外のものとは商議を開くこと能わず、ドイツの軍政者、或は専制君主と商議するがごときは絶対に拒絶するところなりと明確に通牒したのである。 ・(パリ講和会議)特に目立ったのは、歴史上いつの世でも必ず問題となる、各地散在の不遇な少数民族である。吾々の宿題もこういう稀有の機会に解決して貰おう、治癒して貰おうとの念願で、わざわざパリまで押し掛けて来ている。 ・フランス人が理性に長じ、理論を好み、或はこれに拘泥する性癖は既に一般に認るところであるが、会議中にも、いかにもそれが適評であることを実感した。 フランス人は、質素、倹約、真面目で几帳面な民である。物事に徹底的で、いい加減なことは嫌いである。 フランス議会ほど小党派の多数に分かれている所はない。これもおのおのその理屈を固執して主張を曲げぬ性格の現れではないかなど考えさせられたが、会議中の見聞に徴し、ますますそういう平生の観察を強めたのである。 ・イギリス人は、概括的に評すれば、反対に几帳面ということは言えないようである。臨機応変の性質を多分に持合せている。 数百年来、議会政治、政党意識、その他異民族支配の経験等に依り、純理一点張りでは到底納まらないということを自覚して、自然折り合いを尊び、習い性となって、その国民性を大成したとも言えようか。
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