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1930年1月、日米英など五大海軍国によるロンドン海軍軍縮会議が始まろうとしている。随員を命じられた外務省情報部長・雑賀潤は、首席全権の若槻礼次郎らと日本を旅立った。だが、各国の利害が対立する外交交渉は難航の連続。その上、海軍軍令部は自らの主張に固執し、妥協案に対して拒絶の姿勢を崩さない。熾烈を極める状況の先に、雑賀は光明を見出せるか!?
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Posted by ブクログ
『人は上に昇れば昇るほど、濁ってゆかねばならんのだ――。』 『ロンドン狂瀾』の下巻の帯に書かれていたこの言葉にただならぬものを感じ、著者も作品の評判も満足に知らないまま購入しましたが、上巻を読み終えた段階では、その選択は大当たりでした。とにかく抜群の読み応え! 1930年、日米英など五大海軍国...続きを読むによるロンドンでの軍縮会議が間近に迫り、外務省の雑賀は軍縮会議への随員を命じられる。しかし会議の首席全権候補の筆頭である若槻は、困難が予想される会議で責任を負うことを拒否。雑賀は若槻の説得を始めるが…… 米英との軋轢を避けるとともに、軍縮による軍事費の削減は、不景気に沈む日本にとっては何よりも必要なもの。一方で日露戦争の勝利後、発言力を増す海軍関係者は軍縮に対し、日本の主張が認められないならば、軍縮の条約を結ばないこともやむなし、と徹底的な反抗を示す。 一方で米英は日本の財政事情を知っていて、最終的には軍縮の条約を結ばざるを得ないと考えているため強気に交渉を進めてくる。 海軍の顔を立てつつ、いかに妥協点を見出すが軍縮会議の大きなポイントとなってきます。 歴史的な記述が多いので、最初は少しとっつきにくさは感じましたが、当時の国内外の政治や海軍の状況を詳細に小説に組み込み、話を展開していく手腕はとても巧く感じました。相当取材を重ね資料を読み込んでいることが伝わってくるし、それによってより読み応えが増している。 歴史的記述だけでなく人間模様も読ませる。国益、国民を第一に考え粘り強く交渉に臨む雑賀や若槻。二人に信頼を寄せる浜口総理の決意など、彼らの気概や、矜持もともても熱い。 当時は今以上に政治家の命が狙われることの多かった時代。それでも自身の命の危険すらも顧みず、国のため国民のため行動し、そして決断する。そうした彼らの心理も読みごたえの一つ。一方の海軍側の動きも詳細に描かれていて、内容はより濃くなっていきます。 発言一つで交渉が不利になり、共に会議にやってきた海軍側の人間は若槻や雑賀に再三圧力をかける。そして国内の軍関係者も不穏な動きを見せるなど、軍縮会議は波乱万丈の展開が続きます。 上巻でロンドンでの軍縮会議は終わるものの次に待つのは、様々な反対派が待ち受ける国内での条約の批准をめぐる攻防。 下巻も読みごたえのある展開が期待できそう。
ロンドン海軍軍縮会議に臨む外交官、雑賀潤を主人公に当時の日本の政治の裏舞台を描いた作品。 条約締結賛成派の文官・政治家と対米7割は厳守!そうじゃなければ帰ってこい!という反対派の海軍将校たちとの攻防が、もどかしい。 米英との交渉よりも、国内の当時の政治家と軍人の動向を描いており、日本史の教科書でしか...続きを読む知らないロンドン海軍軍縮会議も、その背景にはこんなにドラマがあったのかと思うとやはり歴史は面白いなと改めて思う。 しかし、現実もこんな風に実際に外交に当たっている人たちは我々と違った考えでもって交渉しているのかもしれない。 若槻礼次郎と浜口雄幸がカッコよかった。 無事条約が批准されたが、その後の対米関係を思うと切ない。
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