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【第13回開高健ノンフィクション賞受賞作】日中戦争の最中、満州国に設置された最高学府・建国大学。「五族協和」を実践すべく、日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシアから集められた若者たちは6年間、寝食を共にしながら国家運営の基礎を学んだ。そして敗戦。祖国へと散った彼らは帝国主義の協力者として弾圧を受けながらも、国境を越えて友情を育み続けた。スーパーエリートたちの知られざる戦後。
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Posted by ブクログ
三浦英之の5冊目。満州建国大学の卒業生を追ったノンフィクション。取材力がすごい。 「五族協和」を掲げる国策大学の、その実侵略的狙いの中で、一人一人の学生たちがどう学びどう生きたのか、たいへん興味深く読んだ。 戦争は人間を引き裂く。
敗戦と、関東軍打ち立てたものの満州国が運営する理想主義的な国際教育の方式が戦後レジームに馴染まない理由で、韓国を除く日本・中国・ロシア・台湾(・モンゴル)などの国では歴史のブラックホールに吸い込まれたような満州建国大学の史実を、もう少しのタイミングで完全に歴史の闇に葬り去られると言うところで掘り下げ...続きを読むていった三浦さんの胆力に感銘を受けた。 石原莞爾や辻政信のなどの政治思想についても、もっと知りたいと思った。これらの戦後レジームに馴染まなかった思想の中に、アジアの世紀と言われる21世紀に輝く原石が見つかると感じる。
日本が満州国を設立した際、将来の満州国の運営を担う人材を育成するために満州建国大学が設立されました。学費、生活費は支給され、日本だけではなく、朝鮮人、中国人、モンゴル人、白系ロシア人と満州の関わる広範な地域から選りすぐられたエリートが在籍した当時の日本としては稀有な国際教育機関でした。定員150名程...続きを読む度に対し応募は2万人を超えていたという数字が、いかに優秀な人材を集めていたかを物語ります。 建国大学では「民族協和」の理念のもと、20数名の小グループに全ての出身国の学生が振り分けられ、当時の日本の施策を批判することも自由という、完全な言論の自由の保障のもと、国際感覚を養う教育が行われていました。 これほどの規模と先進的な教育機関でありながら、その存在はほとんど知られてきませんでした。敗戦後、日本人学生は日本の満州における傀儡国家運営を担う教育を受けたとして戦犯として扱われる危険性から口をつぐみ、朝鮮人や中国人の学生は日本の政策に一時加担したという疑いをもたれることは自分だけでなく家族までも危険に晒す可能性があり、在籍したことを隠し通すケースが多かったからです。 著者はあるきっかけから建国大学の存在を知り、数少ない在籍者への取材を試みます。日本国内だけではなく、中国、台湾、韓国、モンゴル、カザフスタンに在住する建国大学の元学生のインタビューに成功します。 本書にも記載がありますが、満州など日本国外にいた日本人の場合8月15日をどこで迎えたかがその後の人生の大きな分岐点となっています。本書で紹介されている日本人元学生さんも中国国民党に捉えられ、そのまま中国共産党との戦闘要員として駆り出されたり、ソ連軍に捉えられた人はシベリア抑留を経験されたケースもありました。 中国、台湾などでは元学生は「日本帝国主義への協力者」とみなされ当時の政府から厳しく弾圧されたりしたケースが多いのですが、韓国では建国大学に在学したスーパーエリートを国家の中枢に組み込もうとしました。その結果、韓国の首相にまで上り詰めた卒業生も本書に登場します。 このような大学が存在したことは、私も本書を読むまで全く知りませんでしたし、その卒業生の敗戦後の人生の振れ幅の大きさも想像以上でした。当時の日本の国策と結びついたエリート養成機関に関する取材だけに、当事者の口の重さもあり、困難な取材であったことは本書からも伝わってきます。ただ、卒業生の多くが非常に高齢であり、「今、話しておかなければ永遠に記録が失われれる」という気持ちと「今取材しておかなければ永遠に取材機会が失われる」という著者の熱意が結びついた、昭和史、近代史の今まで知られてこなかった一面を知ることができるノンフィクションだと思います。2015年開高健ノンフィクション賞受賞作です。
すごかった。 私は世界史とくに近代史についてあまり多く知識がなかったので、この本を読んで色々なことが知れてよかった。 色々な建国大学の卒業生の戦後を見て、時代の流れと国々の思惑に圧倒された。
日中戦争が激しさを増している時期に満州に設立された国策大学の卒業生を取材したもの。あの石原莞爾が発起人、辻政信が設立責任者とくれば、自ずとイメージができてしまうが、実態は全く異なるもの。「五族協和・大東亜共栄圏」の実現とその将来を担うエリートを要請する大学で、日本人、朝鮮人、中国人、モンゴル人、ロシ...続きを読むア人を対象に、授業は各国語、国籍を混ぜた寮生活、そしてこの時期には信じられないことに学校の中では言論の自由が保障され、共産主義の著書も自由に読めたという。中国侵攻や傀儡国家の設立を避難する中国人の激しい追及に、日本人学生がたじたじとなる場面や、ロシアの南下政策を警戒するモンゴル人との激論が、毎晩のようにあったという。一方で、終戦後、当局に拘束された中国人卒業生に、多数の差し入れを行なった日本人がいるなど、強い連帯感を長年にわたって維持している。グローバル人材の育成とか多様性を身につけようという活動が、もしかすると最も活発で実践的だったのが戦時下の満州とは、なんとも皮肉なこと。終戦後何十年にわたって続いていた「同窓会」も、2010年をもって終結となり、卒業生の年齢等を考えると、この画期的かつ不幸な運命に翻弄された大学でどんなことが起こっていたのかを知る機会は全く失われることとなった。とても貴重な一冊。
どんどん読み進めた。このような作品を前にいい加減な感想は書けないと思う。 満州建国大学の存在など全く知らなかった。 三浦さんが布施祐仁さんとお書きになった「日報隠蔽」に感銘を受け、トークショーまで行って、サインいただいて、この本の前に「五色の虹」という本も出されてるのだと知り。。。 ギリギリ間に合っ...続きを読むた感じがすごいと思う。戦後悲惨な経験をされた方々、よく長生きしてくださった、という感じだ。お亡くなりになってしまったら、お話は2度と聞けない。何も話せないまま、お亡くなりになった人の方が圧倒的に多いのだが。 建国大学卒業生のそれぞれの戦後。 と、それを取材なさり、一冊の本にされた記者さん。 どちらも違う意味ですごくて言葉にならない。 あとがきを読んで、本として出版されるまでも大変な苦労があったと知る。 トークショーの時、「本として残したかった」とおっしゃった(「日報隠蔽」のことだけど)。この形で、誰でもが手に取れる形で完成したことは本当に良かったと思う。
ページをめくる手が止まらなかった。キルギスに抑留記念館を建てる計画があるから取材しないかという誘いから始まる長い旅。日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの建国大学生がたどったそれぞれの戦後。収容所に入れられても、良い人生だと言える強さ、いつかロシアと対峙したときロシア語が必要になるのではと、新潟で農家...続きを読むをしながら勉強部屋をロシア語教材で埋めつくす老人。彼は、最後は65年ぶりの同期生との再会のため、ロシア語を飛行機の中でも寝ずにおさらいする。150人の定員に対して2万人の応募があった試験から選ばれた彼らは、平和な時代だったら、どれだけ活躍できた人たちなんだろう。
ノンフィクションで泣けるぐらい涙腺が緩んでたという衝撃の事実。 ま、それはさておき「満洲建国大学」、お恥ずかしながら不勉強で初耳だったのです。それなりにあの辺のものは読んだはずなのに、いかに上っ面を舐めてるだけか思い知らされる。同い年の朝日の記者さんの一作。ノンフィクションとしての完成度はさておき、...続きを読む知らなければならない話を世に出した功績は大きいかと。開高健ノンフィクション賞受賞作品の文庫化。
朝日新聞の記者である三浦英之氏が、かつて満州の最高学府として実在した建国大学と、その卒業生たちの戦後を取材した作品。 建国大学は1938年に石原莞爾らの起案により、満州国のリーダー育成を目的として設立される。五族協和のスローガンのもと、アジア各国から優秀な生徒が学費免除で集められ、学内では当時とし...続きを読むては珍しく言論の自由が許されており、社会主義の研究なども行われていたそうだ。 この建国大学の存在があまり知られてこなかった理由としては、終戦と同時に学校に関する資料がほとんど焼却されてしまった事、そして卒業生の多くが、日本帝国主義の協力者として母国から迫害を受けた事が大きい。三浦氏が取材で中国を訪れた際にも、実際に当局から妨害を受けており、いまだに特定の話題はタブー視されているらしい。 本作の取材を開始した時点で、卒業生はみな80代半ばを過ぎており、このタイミングがまさに最後のチャンスだったのだと思う。戦場や収容所で絶望しそうになった時、大学で学んだ教養が悲しみの淵から救い出し、目の前の道を示してくれた、という卒業生の言葉がとても印象的だった。
この大学の方針は、もちろん当時の政治的な思惑もあったにせよ、若者たちからすればいいものだと思った。 言葉も文化も異なる人と共に過ごし、お互いの言語を学んで腹を割って話し、意見が違っても受け入れる。 何かを聞いて不快に感じる人を生まないために言論封殺するよりも余程建設的。これこそ多様性のあり方じゃない...続きを読むかと思う。今の時代こそ、日本にこういう理念を持った学校があってもいんじゃないかな。五族協和をそうだけど、学生に主体的に考えさせる教育とか必要だと思うなぁ。
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五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後
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